ガラス繊維によるプラスチックの強化について解説する。
プラスチックとガラス繊維:プラスチック材料の基礎知識(14)
2022.07.06
この記事では…
(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
ガラス繊維(GF)はプラスチックの強化に最も多く使用されている強化材である。ここではGF強化製品の強度に影響する諸要因について解説する。また、以下では引張強度、曲げ強度、クリープ破壊強度、疲労強度などを含めて強度と表現する。衝撃力に対する強度は衝撃強度と表現する。
理論的には、GF強化品の強度には繊維の強度、繊維の充填率、繊維とプラスチックの界面接着力、アスペクト比(繊維長さ/繊維径)、繊維の配列(繊維配向)などが関係する。
プラスチック(非強化品)の引張強度は0.06GPa~0.2GPaであるが、GFの引張強度は3.7~4.0GPaであるのでGFを充填すると強度は高くなる。また、プラスチックは温度が高くなると強度は低下するが、GFを充填すると温度上昇に伴う強度の低下は小さくなる。
GF強化に寄与するのは正確には体積充填率(vol%)であるが、成形材料のGF充填率は質量充填率(wt%)で表すのが一般的である。
質量充填率は次式で示される。
質量充填率(wt%)=(強化品中のGF質量÷強化品の質量)×100
質量充填率(以下充填率という)が高くなるほど強度は高くなる(図1)。

図1 GF充填率と強度
ただ、充填率が高くなるほど流動性が低下するため成形しにくくなり、スクリュや金型の摩耗も起こりやすくなる。そのため充填率は30wt%~40wt%程度あたりが上限である(ポリアミドは60wt%までは可能である)。
GFとプラスチックは接着性が低いので補強効果が得られない。補強効果を発揮させるには、GFとプラスチックの界面を接着させる必要がある。そのため、カップリング剤で表面処理したガラス繊維が使用されている。カップリング剤はGFに接着しやすい分子鎖とプラスチックに接着しやすい分子鎖を有しているので、GFとプラスチックの界面を強固に接着させることができる。
アスペクト比(繊維長さ÷繊維径)が大きくなるほど補強効果は大きくなる。GF繊維径は10μm~13μmである。短繊維強化成形材料(注1)を用いて射出成形すると、可塑化するときにスクリュ回転時のせん断力によってGFが破砕するので、成形品中には長さが約200μm~300μmのGFが多く分散している。従って、アスペクト比は15~30程度である。一般的にGF強化すると繊維末端が応力集中源になるため衝撃強度は低下するが、繊維長さが長くなると単位体積中に占めるGF末端数は少なくなるので、図2に示すようにアスペクト比が大きくなると衝撃強度が高くなる。そのため、高衝撃強度を求められる製品では長繊維強化成形材料(注2)が使用されている。

図2 アスペクトと強度
成形するときに流動方向によって繊維の向きが変化する特性がある。このような現象を繊維配向という。GF繊維の配向度によっても強度が変化する。繊維配向に関しては後の記事で解説する。
(次回へ続く)
執筆者注
注1:長さ0.5mm前後のGFを分散させた成形材料(ペレット)
注2:長さ10~15mmのGFを溶融被覆した成形材料(ロングペレット)
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数
