成形工程で形成される微細構造である「高次構造」と強度の関連について解説する。
高次構造は強度にどのように影響するか:プラスチックの強度(27)
2022.09.07
この記事では…
(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
プラスチックの分子構造を1次構造、成形工程で形成される微細構造を2次構造または高次構造という。図1に示すように、射出成形工程で形成される高次構造には結晶化、分子配向、液晶配向、繊維配向がある。プラスチック製品の強度は高次構造によっても変化することに注意すべきである。

図1:射出成形における高次構造形成
[結晶化]
同図(a)に示すように結晶性プラスチックは溶融状態では非晶状態であるが、型内において冷却する過程で結晶が生成する。結晶生成のし易さは分子構造や添加剤(結晶核剤:注1)によって決まるが、結晶化度(注2)は成形条件が影響する。金型温度が高いほど結晶化度は高くなる。
結晶化度が高いほど強度・弾性率は高くなる。結晶化度が低いと強度・弾性率は低くなるが、衝撃強度は高くなる。ただし、結晶化度が低い成形品は成形後に結晶化が進み寸法変化や変形が起こりやすくなるので注意しなければならない。
[分子配向]
ポリマーは溶融状態では丸まった形態(ランダムコイル)をとる性質がある。同図(b)に示すように射出・保圧過程でせん断力を受けると流動方向に引き延ばされた状態になる。この状態を分子配向という。型内で冷却されると分子配向した状態で固化する。
製品肉厚が薄くなるほど分子配向しやすくなる傾向がある。また、成形条件では成形温度が低く、保圧が高いほど分子配向しやすくなる。
分子配向した成形品は配向に平行方向の強度は高く、垂直方向の強度は低くなる傾向がある。
[液晶配向]
液晶ポリマー(注3)は溶融状態では液晶分子鎖がランダム状態に分散している。同図(c)に示すように射出・保圧過程でせん断力を受けると液晶分子鎖は流動方向に配向する。製品肉厚が薄くなるほど液晶配向は顕著になる。
液晶配向した成形品は配向に平行方向の強度は高くなるが、垂直方向の強度は低くなる。
[繊維配向]
短繊維強化材料(注4)の成形では溶融状態では繊維はランダムに分散している。同図(d)に示すように射出・保圧過程でせん断力を受けると繊維は流動方向に配向する。製品肉厚が薄いほど繊維配向しやすくなる。
繊維配向した成形品は配向に平行方向の強度は高くなるが、垂直方向の強度は低くなる。
(次回へ続く)
執筆者注:
注1:結晶構造の制御や結晶化を促進するための添加剤
注2:結晶相の体積比率を結晶化度という
注3:液晶は液体のような流動性と結晶のような性質を有する物質である。液晶性を示す分子鎖を有するポリマーが液晶ポリマーである
注4:繊維束を短くカットした繊維強化材(チョップド・ストランド)をプラスチックに充填した繊維強化材料
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数
