ポリマーアロイの概要と作り方について解説する。
ポリマーアロイの作り方:プラスチック材料の基礎知識(16)
2022.08.22
この記事では…
(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
一般的にはポリマーアロイは2種以上のポリマーをブレンド(溶融混錬)したプラスチックとされているが、学問的には高分子多成分系プラスチックと定義されている。2種以上のポリマーをブレンドしただけではなく、共重合ポリマー(注1)を含めるが故に高分子多成分系プラスチックと定義されと思われる。例えば、代表的なポリマーアロイであるABS樹脂はアクリロニトリル(Acrylonitrile)とスチレン(Styrene)を共重合したAS樹脂にブタジエンゴム(Butadiene)をブレンドした材料である。
ポリマーアロイの作り方
2種のポリマーをブレンドする場合を例にてポリマーアロイの作り方を表1に示す。
表1:ポリマーアロイの作り方

混ざりやすいポリマー同士は単純にブレンドすればよい。例としてはポリスチレンにブタジエンゴムをブレンドしたハイ・インパクト・ポリスチレン(PS-HI)、上述のABS樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)にPS-HIをブレンドした変性PPE、ポリカーボネート(PC)にABS樹脂をブレンドしたPC/ABSなどがある。
混ざりにくいポリマー同士をブレンドするときには混ざりやすくするように特殊な方法でブレンドしなければならない。混ざりやすくすることを「相溶化」と称している。洗濯するときに油汚れを落としやすくするときの洗剤(界面活性剤)の役割と類似している。
混ざりにくいポリマー同士をブレンドするときは表1に示す2つの方法がある。
①ポリマーAに相溶化成分を化学的に結合させたのち、ポリマーBとブレンドする。
②ポリマーAとポリマーBに相溶化剤を一緒にブレンドする。
ポリマーアロイの製造法
ポリマーアロイは通常のコンパウンディング装置で製造される。図1は相溶化剤を用いたポリマーアロイの製造法の1例である。ブレンド成分を予備混合したのち、押出機で溶融混錬して成形材料(ペレット)を製造する。コンパウンディングするときに押出機内でポリマーAに相溶化成分を化学反応させながらポリマーBと溶融混錬する方法もある。このような方法を反応押出(リアクティブ・プロセッシング)と称している。

図1:ポリマ―アロイの製造工程(相溶化剤を用いる例)
ポリマーアロイの利点
新しいポリマーを重合反応によって製造する方法に比較すると、次の利点がある。
①ブレンドするだけで顧客からの要望に応じた性能の材料を作ることができる。
②重合プラントを建設する必要がなく、コンパウンディング設備だけで短期間で材料開発できる。
③開発費用が比較的少なくて、材料開発できる。
ポリマーアロイの注意点
次の注意点がある。
①混ざり方(モルフォロジーという)によって物性が変化する。
②ポリマーの組み合わせによってはウェルドラインの強度が低下することがある。
③ポリマーアロイに適した成形条件(予備乾燥、成形温度)に設定する必要がある。
(次回へ続く)
執筆者注
注1:主モノマーに他モノマーを加えて重合したポリマー
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数
