成形品に発生する筋状のマーク「ウェルドライン」と強度への影響について解説する。
強度低下に影響する要因は何か――ウェルドライン:プラスチックの強度(26)
2022.08.08
この記事では…
(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
ウェルドライン(WL)は型内で溶融樹脂が合流するところに発生する筋状のマークである。図1にその1例を示す。

図1:ウェルドライン(2点ゲートの例)
WLは外観上で問題になることがあるが、WLに垂直に引張力が作用するとWL部から破壊するので強度設計においても注意すべきである。WL部の強度はWLのない部分の約50~60%である。特に、衝撃強度、クリープ破壊強度、疲労強度などの低下が顕著である。
WL部の強度が低い理由は次の通りである。
① WL部表面にはV溝状のくぼみが発生し、これが応力集中源になる。
② WL部では特有の分子配列になるため強度が低い。
③ 溶融樹脂の流動先端は冷えながら合流し、かつ先端には溶融樹脂由来のガス分が封じ込められやすいので、溶着強度が低くなる。
WLのタイプには、図2に示す対向流WL、並走流WL、偏流WLがある。

図2:ウェルドラインのタイプ
対向流WL(a)は両サイドから合流し、そのまま流動停止して形成されるWLである。このタイプのWL強度は低い。
並走流WL(b)は2点のゲートから流入した溶融樹脂が合流したのち、流動先端に向かって並走して流動するタイプである。並走流WL(c)はキャビティ中に流動障害個所がある場合は、これを迂回しながら流れて合流し、その後に並走して流動するものである。これらの並走流タイプは、ある長さまではWLが発生し、その後は消失する。並走流WLの強度低下は比較的小さい。
偏流WL(d)は肉厚の厚い部分が先に流れて、中央部の薄肉個所が最後に充填するため、最終的に充填する薄肉部にWLが発生するタイプである。このタイプのWL強度は対向流タイプと同様に低い。
従って、WL強度は次の順になる。
並走流WL>対向流WL≒偏流WL
強度を考慮したWLの設計では、次の対策がある。
①最大応力が発生する個所(危険断面)にWLが発生しないように設計する。そのためには、ゲート位置の選定や肉厚分布の設計を適切に行って危険断面にWLが発生しないようにしなければならない。
②WLの発生が避けられない場合は並走流WLになるようにゲート位置を選定する。図3に設計例を示す。(a)のゲート位置では対向流WLになるが、(b)のゲート位置では並走流WLになる。
③WL部のガス逃げをよくするため、金型のWL発生位置にはガスベント(注1)を設ける。

図3:ゲート位置とウェルドラインのタイプ
(次回へ続く)
執筆者注
注1:ガス逃げを良くするため、金型の合わせ面に設ける隙間のことである。ただし、溶融樹脂が流れ込まない程度の隙間に設計する必要がある。
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数
