プラスチックの物理性質のうち、吸水率および吸水特性について解説する。
プラスチックの物理性質(2)―吸水率および吸水特性:プラスチック材料の基礎知識(19)
2022.09.26
この記事では…
(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
プラスチックはポリマーが集まったものである。ポリマーの間には微小な空隙あるので、水分は空隙に浸透しやすい。ポリマー間に水分が浸透することで吸水する。温度が高くなるほどポリマーの熱運動が活発になり空隙は大きくなるので吸水しやすくなる。ただし、プラスチックの吸水性は空隙の大きさだけではなく、水分との親和性も関係する。例えば、ポリアミド(PA)は親和性がよいので吸水しやすいが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などは親和性がよくないので吸水しにくい。
プラスチックの吸水率の測定法については、日本産業規格「JISK7209:2000 プラスチック-吸水率の求め方」で規定されている。同規格の吸水処理には次の4つの方法がある。
- A法:23℃水中、24hr浸漬
- B法:沸騰水中、30min浸漬
- C法:浸漬中に溶出した水性物質を測定する場合に適用
- D法:23℃、50%RH中で24hr放置
C法は溶出水性物質を測定する方法であるので、一般のプラスチックの吸水率測定にはA法、B法、D法が用いられる。
吸水率は、所定の手順で吸水前試料の質量と吸水後試料の質量を測定し、次式で計算する。

A法、B法、D法によって吸水率は異なるので、同じ方法で測定した吸水率を横比較する必要がある。
各種プラスチックについてA法(23℃水中、24hr浸漬)で測定した吸水率を表1に示す。同表のようにPA6の吸水率は高いが、PEやPPなどの吸水率は低いことが分かる。

表1:プラスチックの吸水率(23℃水中、24hr浸漬)
プラスチックの吸水率は、規格に基づいた方法(A、B、D法)で測定した値であるので、材料選定の一次目安として参考にするのがよい。23℃水中に浸漬したときの浸漬時間と吸水率の関係を図1に示す。

図1:23℃水中浸漬の吸水曲線
浸漬時間とともに吸水率は増加し、やがて吸水平衡に達する。平衡に達した時の吸水率が飽和吸水率である。図のように水中浸漬24hr後においても吸水率は増加して飽和吸水率に達する。実際のプラスチック製品は水中または湿度中で長時間使用されるので、規格に基づく吸水率(23℃水中24hr浸漬)だけではなく、飽和吸水率を含めて実用の可否を判断する必要がある。また、水温や環境湿度が高くなると飽和吸水率は高くなることに注意しなければならない。
プラスチックが吸水すると次の物性変化が起きる。
①寸法膨張する。
②絶縁破壊電圧が低下し、誘電率・誘電正接は高くなる。
③PAは吸水しやすいので吸水率が高くなると弾性率・弾性率は低下するが、衝撃強度は高くなる。
ただし、吸水は物理的現象であるので乾燥すれば吸水率は低くなる。
(次回へ続く)
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数
