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「スミカスーパーLCP」とは?――5G機器設計に欠かせない液晶ポリマー:PR

2022.10.24

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大手総合化学メーカーの住友化学は、1979年に国内で初めて液晶ポリマー(以下、LCP)の商業化に成功。現在ではLCP市場の世界シェアの3割を占め、特にコネクタ分野においては超高流動LCPの開発ならび市場投入によって高シェアとなっている(図1)。近年では、電気・ハイブリッド自動車など新規システムに搭載される部品への新規用途開発に取り組み、業界屈指の製品開発力を誇る。

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図1:世界のLCP市場のシェアについて

住友化学が販売・開発している「スミカスーパーLCP」は、スーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)の一種で、優れた耐熱性と成形加工性を備えた液晶性全芳香族ポリエステル(Thermotropic Liquid Crystalline Polyester)である(図2)。

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図2:主要なエンジニアリングプラスチックとLCPの位置づけ
⁠(出所:住友化学)

住友化学では商業化開始以来、自社でLCP樹脂からコンパウンドまでを開発・製造できる強みを活かし、標準グレードから高機能グレードまでの、さまざまな用途に細やかに対応できるラインアップを拡充しつづけている(図3)。

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図3:スミカスーパー LCPのラインアップの一例
⁠(出所:住友化学)

LCPは熱可塑性樹脂の一種であり、溶融状態において液晶性となる(分子鎖が剛直状で規則正しく並び、高分子物質に特有な分子の絡み合いが非常に少ない)ことが特徴である(図4)。

スミカスーパー LCP は、射出成形などによるせん断力により、容易に分子鎖が流動方向に配向し、流動抵抗が少なく高流動性を示す(図5)。

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図4:LCPの特性(出所:住友化学)

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図5:(左)LCPの試験片破断面と(右)構造(出所:住友化学)

また、熔融時の構造が冷却され固化するまで維持されるため、樹脂の体積変化(収縮)が少なく、成形品は発達したスキン層により高強度になる。さらにLCPは高耐熱性を備えることから、SMT(表面実装技術)はんだ実装に対応し、リフロー炉における高温処理にも耐え得る性質も大きな利点であり、電気特性にも優れていることから、コネクタやリレーなど電子部品では重宝する性質を数多く備えている。

スミカスーパー LCPは、このような優れた耐熱性と機械強度、電気特性を併せ持つ上、射出成形によって小型な製品を成形可能で、寸法精度にも優れるといった特色を有することから、ノートパソコンやスマートフォン、自動車、航空機、事務機器、医療機器などの電子部品に多用され、さまざまな分野で活躍している(図6)。今もその需要は拡大中である。

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図6:スミカスーパー LCPの用途(出所:住友化学)

第5世代通信(5G)機器向けに適したスミカスーパー LCP

最近、スミカスーパー LCPの引き合いが特に急増している分野として、住友化学 機能樹脂事業部 エンジニアリングプラスチックス部 サブリーダーの原節幸氏は、「第5世代通信(5G)機器向け」を挙げる。

LCPは射出成形で薄く微細な製品が作りやすいだけでなく、フィルム状にも加工できることから、5G機器の内部接続のコネクタや、アンテナ内部の電子部品のハウジングなどの成形品、FPC(フレキシブルプリント配線板)用のベースフィルムにも適した材料であるという。

5Gの高周波通信で使用されるミリ波帯は、直進性が高く、かつ電波が減衰しやすい。広範囲のエリアで多くのユーザーに安定した電波を届けるには不利な特性である。電波の減衰を抑制するには、コネクタやアンテナに使用する材料を低誘電化し、材料に吸収されてしまう電波を極力抑えることが有効である。

「材料の誘電率の値は、材料の化学構造だけでなく、吸水性にも左右される。もともとの材料の誘電率が低くても、吸水してしまえば誘電率は高くなってしまう。スミカスーパー LCPは吸水性が低く、湿度の高い環境下でも低誘電率を維持できることが利点だ。さらに今後使用される周波数が変わったり、高温環境下で使用されるとしても、スミカスーパー LCPは化学構造の安定性により誘電率と誘電正接の周波数依存性が小さいため、電気特性は変化することはない」(原氏)

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図7:LCPの特長と誘電特性(出所:住友化学)

スミカスーパー LCPでは、特に低誘電率、低誘電正接に優れたグレードとして「スミカスーパー SR1205L」、低誘電率に優れたグレードとして「スミカスーパー E6205L」を製品化しており、世界市場に流通するLCPの中でも極めて低い誘電率を誇る(図8)。

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図8:低誘電LCPグレードの誘電特性(出所:住友化学)

以下の図9は、低誘電、低誘電正接グレードSR1205Lと、従来グレードE6808LHF Z(>LCP-GF+MD 40<)の誘電率および誘電正接の比較を示している。誘電正接は誘電体内の電気エネルギー損失度合いを示す。いずれの特性も、温度や周波数の変化に大きく依存しないことを表している。

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図9:スミカスーパー LCPと従来のプラスチックにおける
⁠誘電正接の変化(出所:住友化学)

「スミカスーパー LCPは、低誘電率のLCP樹脂をベースに、充填材をコンパウンドすることで機能性を付与し、5G機器に必要な誘電率と誘電正接の安定性だけでなく、優れた耐熱性や機械強度を有するグレードである」(原氏)。

5G機器において、誘電率の低さは重要であるものの「とにかく低い値に追い込めばよいものではない」と原氏は述べる。「5G機器においてもインピーダンスマッチングは当然必要であり、製品の仕様や筐体サイズ、扱う信号の種類によって適した誘電率は少しずつ異なる。」住友化学では、誘電体における電気エネルギー損失だけではなく、反射損失にも着目し、誘電率のバリエーションの拡充も進めている(図10)。

「オリジナル製品に対しては、形状や製品サイズ、ピン数変更などで対応し、派生機種や流用機種などを設計する際には、誘電率の異なる同一グレードを利用し続けるなどの運用ができる」と原氏は説明する。

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図10:高速伝送の課題、反射損失について(出所:住友化学)

このようなインピーダンスマッチングは、これまでであれば5G関連機器設計にかかわる顧客側が工夫をこらしてきた。住友化学では、顧客の製品設計に合った誘電率のLCPグレードを選定できるよう、同一シリーズ内に多種類の誘電率のグレード拡充に力を入れている。

住友化学は、低誘電率グレードであるE6205LとSR1205Lの誘電正接をさらに改良し、誘電率のバリエーションを拡大した「SZ6920シリーズ」および「SR1920シリーズ」を開発した(図11)。両製品は、2023年中に上市する予定だ。

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図11:新グレード「SZ6920シリーズ」と「SR1920シリーズ」の
⁠立ち位置(出所:住友化学)

【誘電率制御シリーズ】
⁠SZ6920(誘電率バリエーション:RP25, RP30, RP40, RP50)

誘電率を2.5、3.0、 4.0、5.0と制御。コネクタの設計に応じ、インピーダンス整合のために適切な誘電率のグレードが選択可能である。

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図12:SZ6920の誘電特性(1)(出所:住友化学)

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図13:SZ6920の誘電特性(2)(出所:住友化学)

【誘電率制御&低誘電正接シリーズ】
⁠SR1920(誘電率バリエーション:RP25, RP30, RP40, RP50)

SZ6920シリーズ同等の誘電率制御を備える「SR1920」シリーズは、低誘電正接が特色。誘電特性に優れた骨格を持つLCPを採用し、LCPコンパウンド材料の中でも最高レベルの低誘電正接を達成している。

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図14:SR1920の誘電特性(1)(出所:住友化学)

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図15:SR1920の誘電特性(2)(出所:住友化学)

ますます高まるLCPのニーズに対応すべく、生産能力の増強を計画

スミカスーパー LCPは、今回紹介した5G機器関連の他、電気自動車(EV)においても需要が拡大している。

今後ますます需要が高まっていくことが予想されるスミカスーパー LCPであるが、世界中で樹脂の供給が不安定になっており、需要ひっ迫が喫緊の課題である。住友化学でもその状況を解消すべく、生産能力の増強を進めている最中だ。「LCPについては、2023年夏季以降に生産設備の増設を計画している」と原氏。

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図16:住友化学 愛媛工場(愛媛県新居浜市)(出所:住友化学)

これまでスミカスーパーLCPは、住友化学 愛媛工場(愛媛県新居浜市)と、同社子会社である田岡化学工業 播磨工場(兵庫県加古郡)で生産されてきたが、さらに愛媛工場にLCP生産プラントを2023年夏までに増設する計画だ。増設後の生産能力は、グループ全体で現行比の約3割増を見込んでいる。

今回紹介したスミカスーパー LCPについては、材料特性などを特設Webサイトで詳しく紹介しているので、併せてご覧いただきたい。
⁠⁠>>スミカスーパー LCP

住友化学が取り扱うスーパーエンプラについても、以下のWebサイトで確認できる。
⁠>>住友化学 エンジニアリングプラスチックス部

スミカスーパーのPDFカタログはこちらから。
⁠>>スミカスーパーLCP、PDFカタログ

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PlaBase編集部
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