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成形工程における強度低下要因(1)――成形時の熱分解はどのように起きるか:プラスチックの強度(28)

2022.10.31

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この記事では…

インラインスクリュー式射出成形機による射出成形の手順を例に、成形品の強度低下となる要因となる「熱分解」について解説する。

(執筆:本間精一/本間技術士事務所)

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射出成形で最も多く使用されているインラインスクリュー式射出成形機(注1)を例に説明する。図1に示すように、可塑化(注2)と射出の成形動作は次の通りである。

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図1 インラインスクリュ式射出成形機の可塑化と射出動作

①シリンダ温度をそれぞれのプラスチックに適した成形温度に設定する。

②シリンダに巻かれたヒーターからの熱とスクリュー回転によって、成形材料(ペレット)は可塑化されて先端に送られる。先端に溶融樹脂が蓄積されるにつれてスクリューは後退する。

③スクリュー先端に蓄積される溶融樹脂量が設定値(計量値)に達するとスクリュー回転を停止し、次サイクル(注3)で射出するまで待機する(図1(a))。

④金型を閉じて型締圧をかけた後、射出圧をかけて型内に射出する(図1(b))。

射出成形における熱分解要因には成形温度、滞留時間、空気(酸素)がある。

成形温度は温度範囲で示される。例を次に示す。

  • ABS樹脂:    180℃~270℃
  • ポリカーボネート:240℃~320℃
  • ポリアセタール:  175℃~210℃
  • ポリアミド6:   230℃~290℃

下限の成形温度は成形可能な温度である。上限の成形温度を超えると熱分解する危険性がある。この範囲で成形に適した成形温度に設定する。ただし、成形温度は樹脂温度と異なることに注意しなければならない。スクリューで可塑化するときにせん断熱が発生するので、樹脂温度は成形温度より10~20℃高くなるのが一般的である。スクリュー回転が速いと樹脂温度はさらに高くなるので熱分解しやすくなる。

滞留時間はシリンダ内で樹脂が溶融してからノズルから射出されるまでの時間である。通常の成形では滞留時間は15~20min以内であるが、サイクル時間が長い場合、成形品総質量(ショット質量)に対し射出成形機の容量が大き過ぎる場合、シリンダ内に局部的な滞留部がある場合には熱滞留時間が長くなる。

空気(酸素)は成形材料(ペレット)間の空隙に存在しているので、可塑化するときに樹脂に溶存した酸素が熱分解を促進する。

射出成形における熱分解の要因と進行を図2に示す。

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図2 熱分解による強度低下(概念図)

シリンダ内で熱分解すると分解物が生成し分解ガスも発生する。その結果、色相変化、銀条、気泡(バブル)などの成形不良が発生する。さらに分解が進行すると分子量が低下して強度が低くなる。特に、衝撃強度、クリープ破壊強度、疲労強度などの低下が顕著である。成形不良が発生すると成形温度を低くする、サイクル時間を短くするなどの対策を取るので、強度低下に至るケースは比較的少ない。しかし、成形不良を判別しにくい濃色着色品では熱分解して強度低下することがあるので、注意しなければならない。

執筆者注:

注1:スクリューで可塑化して、スクリューで射出する動作を同軸で行うのでインラインスクリュー式射出成形機という。

注2:成形材料を加熱して溶融させることをいう。

注3:型を閉じて型締圧をかけて成形し、型締圧を解放し型開きして成形品を取り出すまでが1サイクルである。1サイクルに要する時間がサイクル時間である。

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本間 精一(ほんま・せいいち)

三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数