プラスチックの耐熱性を評価するための荷重たわみ温度について解説する。
プラスチックの耐熱性(1)――荷重たわみ温度:プラスチック材料の基礎知識(21)
2022.11.30
この記事では…
(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
プラスチックは温度が高くなると次第に軟らかくなり変形しやすくなる。プラスチックの変形性を表す材料特性値が弾性率である。弾性率が高いほど変形しにくいので、高温まで高い弾性率を保っているプラスチックほど耐熱性が優れていることになる。このような耐熱性を評価する試験法が荷重たわみ温度である。荷重たわみ温度をDTUL(Temperature of Deflection Under Load)と略す。DTULの試験法はJIS K7191に規定されている。
図1(a)に示すように熱媒中で、曲げ試験片(長さ80mm、幅10mm、厚さ4mm)を両端支持(支点間距離60mm)の治具にセットして支点間の中央に集中荷重を加えた状態で、熱媒温度を室温から120℃/hの速度で昇温する。

図1:荷重たわみ温度測定装置と最大曲げ応力
熱媒温度が高くなると試験片の温度も上昇するので曲げ弾性率が低下する。その結果、試験片中央部のたわみが大きくなる。同規格では中央部のたわみが0.34mm(試験厚み4.0mmの場合)に達するときの熱媒温度をDTULとしている。また、図1(b)に示すように、曲げ試験片の中央部に荷重Fを加えると、試験片下面に最大曲げ応力σmaxが発生する。同規格では、荷重Fによって発生する最大曲げ応力σmaxとして0.45MPa と1.80MPaの2応力で測定した値を表示することになっている(注)。
上述の方法で測定されたDTULから次のことが分かる。
①DTULが高いプラスチックは、高温まで高い曲げ弾性率を保持している。
②0.45MPaと1.80MPaのDTULの差は、応力(荷重)の影響の大きさを表している。
以上のように、DTULは使用温度の上限値を示す値ではなく、耐熱性のよいプラスチックを選定するための1次目安として活用すべきである。
各種プラスチックのDTULを表1に示す。

表1:プラスチックのDTUL
非晶性プラスチックであるポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(mPPE)、ポリスルホン(PSU)などは、0.45MPaのDTULより1.80MPaのDTULの方が7℃~15℃程度低い値になっている。また、ガラス繊維で強化すると曲げ弾性率が高くなるので、10℃~20℃程度高い値(1.80MPa)になっている。一方、結晶性プラスチックであるポリアミド6(PA6)、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)については、0.45MPaのDTULより1.80MPaのDTULの方が60~150℃程度低い値になっている。このように結晶性プラスチックのDTULの低下が大きい理由は、温度上昇に伴って曲げ弾性率の低下が大きいことに起因していると推定される。一方、ガラス繊維で強化すると、補強効果によって曲げ弾性率が高くなるので、非強化品に比較してDTULは60℃~150℃(1.80MPa)程度高い値になっている。そのため、結晶性プラスチックでは、繊維強化することによってDTULを高めている。
執筆者注:
注1:図(b)に示すように、試験片下面に発生する最大曲げ応力と荷重の関係は次式で示される。

F:荷重(N) δ:たわみ(mm) b:試験片幅(mm) h:試験片厚み(mm)
L:支点間距離(mm) σmax:曲げ試験片下面に発生する最大曲げ応力(MPa)
上式から分かるように、最大曲げ応力σmaxの値が同じでも、試験片形状(幅b、厚みh、支点間距離L)によって荷重の値は異なるので、0.45MPaと1.80MPaの2応力で測定したDTULを表すことになっている。
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数
