成形不良などを防止するため、成形する前に材料を乾燥させる予備乾燥における注意点について、プラスチックの種類別に解説する。
成形工程における強度低下要因(2)――成形材料に含まれる水分の影響:プラスチックの強度(29)
2023.01.18
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(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
成形材料は押出機で溶融して粒状(ペレット)にされるので水分を含まない状態(絶乾状態)で製造されるが、成形するまでに時間が経つと大気中の湿気を吸水(吸湿)する。吸水した状態で成形すると成形不良や強度低下を起こすので、これらの不具合が起こらない吸水率まで乾燥する必要がある。このように成形する前に乾燥することを予備乾燥という。ただ、予備乾燥の必要性はプラスチックの種類によって異なることに留意すべきである。
まず、PEやPPは吸水しにくいので、通常は予備乾燥の必要はない。PVC、PS、ABS、PMMA、PA6、PA66、POM、mPPE、PPS、PSU、PEEK、PAI、PEIなど(以下、Aグループという)は、吸水した状態で成形すると水分が発泡するので銀条(シリバーストリーク)や気泡が発生するので、予備乾燥してから成形しなければなければならない。気泡が発生していると応力集中源になるため、強度低下することがある。
PC、PBT、PET、PARなど(以下、Bグループという)は、吸水した状態で成形すると成形不良(銀条、気泡)が発生すると同時に分子量も低下する。その結果強度も低下する。Bグループのプラスチックには共通的にエステル結合と呼ばれる分子鎖を有しているので、成形温度の下では水分によって分解(加水分解という)が起きる。加水分解の概念を図1に示す。

図1 予備乾燥不足による加水分解概念図
熱と水分によってエステル結合が加水分解し、分解ガスを発生しつつ分子切断が起きる。その結果、銀条、気泡などの成形不良が発生する。同時に分子量も低下するので強度も低下する。通常、予備乾燥が不十分であると成形品に銀条や気泡が発生する。銀条は成形過程で生じた水分や分解ガスが気泡になり、金型壁面でつぶれたとき発生する現象である(図2)。

図2 銀条不良
成形過程では分子量低下に先立って銀条や気泡が発生するので、予備乾燥条件を厳守することで、分子量の低下を防止できることが多い。ただ、軽微な成形不良を見落すと強度も低下すことがあるので注意しなければならない。
以上のように、Aグループに比較してBグループのプラスチックは予備乾燥が不十分であると加水分解するので予備乾燥条件には注意する必要がある。
次にBグループの予備乾燥条件について述べる。ここでは加水分解しない吸水率を限界吸水率と表現する。
成形材料の乾燥曲線および限界吸水率の概念を図3に示す。

図3 成形材料の乾燥曲線(概念図)
同図のように限界吸水率以下に乾燥するには、乾燥温度と乾燥時間が関係することが分かる。また、乾燥温度が高いほど乾燥速度が速く平衡吸水率は低くなるが、乾燥温度が高過ぎると軟化して材料同士が融着する。融着しない上限温度が最適乾燥温度である。限界吸水率まで乾燥するに要する時間は各プラスチックともほとんど同じである。代表的なBグループプラスチックの最適予備乾燥条件は表1に示す通りである。
表1 Bグループプラスチックの限界吸水率と予備乾燥条件

本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数
