プラスチックの引張や曲げなどの強度と温度の関係について解説する。
プラスチックの耐熱性(2)――温度と強度:プラスチック材料の基礎知識(22)
2023.02.13
この記事では…
(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
今回は、プラスチックにおける引張、曲げなどの強度と温度の関係について述べる。
一般的にプラスチック(熱可塑性)は温度が高くなると強度は低くなる。高温で使用する場合には、高温においても高い強度を保持できるプラスチックを選択しなければならない。
プラスチックは鎖状の長い分子(ポリマー)が集まったものである。ポリマ―間で引き合う結合力(ファンデルワールス結合力)によって強度が生まれる。温度上昇につれてポリマーの熱運動が活発になり、ポリマ―間隔が広がるために結合力が弱くなり、強度は低くなる。
プラスチックの強度は温度上昇につれて直線的に低下するわけではなく、熱運動が急に活発になる転移温度までは緩やかに低下し、その温度を超えると強度は急に低下する性質がある。熱運動が急に活発になる温度が転移温度である。プラスチックの転移温度にはガラス転移温度と結晶融点がある。
ガラス転移温度(Tg)はポリマーの相互位置は変化しないが、幹になる分子鎖(主鎖)の熱運動(ミクロブラウン運動)が急に活発になる温度である。この温度を超えると強度が大きく低下する。結晶融点(Tm)は結晶相が融解する温度である。結晶が融解すると強度が急激に低下する。
非晶性プラスチックと結晶性プラスチック概念図および温度と強度の関係を図1と図2に示す。

図1 非晶性プラスチックと結晶性プラスチックの概念図

図2 温度と強度の概念図
非晶性プラスチックは非晶相からなっているので、温度が上昇するにつれて徐々に強度は低下するが、Tgを超えると急に低下する。従って、Tgが高いプラスチックほど高温まで高い強度を保持することになる。
結晶性プラスチックは結晶相と非晶相からなっているので、非晶相のTgと結晶相のTmが存在する。温度上昇につれてTgまでは緩やかに強度低下するが、Tgを超えると非晶相の熱運動が急に活発になるので強度は大きく低下するが、結晶相が存在するためTmまではある程度の強度を保持している。Tmを超えると強度は急激に低下する。従って、結晶性プラスチックはTmが高いプラスチックほど高温まで高い強度を保持することになる。
表1に非晶性プラスチックと結晶性プラスチックのTgとTmの例を示す。

表1 各種プラスチックのガラス転移温度および結晶融点
非晶性プラスチックではTgが高いほど高温まで強度を保持できる。結晶性プラスチックではTmが高いほど高い温度まで高い強度を保持できる。
TgやTmを高めるための考え方は次の通りである。まず非晶性プラスチックについては、剛直な分子鎖やかさ張った分子鎖を導入すると熱運動が抑制されるのでTgは高くなる。その結果高温まで高い強度を保持できることになる。
結晶性プラスチックについては、高温まで高い強度を保持するには、次の2つの条件が関係する。
① 結晶化を容易にするため柔軟な分子鎖または規則的配列の分子鎖を有すること
② 非晶相の熱運動を抑制するため剛直な分子鎖やかさ張った分子鎖を有すること
結晶性プラスチックでは①または①と②が両立するように分子設計することが必要である。
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数
