LCPは液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer)のISO略語であり、液晶とは結晶のような性質と液体のような性質を持っている物質。溶融状態において液晶性を示すポリマーである。
LCP(液晶ポリマー)とは:PlaBase プラスチック事典
2023.03.06
LCPとは…
(執筆:本間精一/本間技術士事務所)

特徴
① 耐熱性が優れています。
② 強度・弾性率が高いです。
③ 燃えにくいです。
④ 射出成形時の薄肉流動性が優れています。
⑤ 成形収縮率や線膨張係数が小さいです。
LCPは液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer)のISO略語です。液晶とは結晶のような性質と液体のような性質を持っている物質です。溶融状態において液晶性を示すポリマーが液晶ポリマーです。分子鎖に共通的にエステル結合を有するので液晶ポリエステルと呼ぶこともあります。一般的に、プラスチックの名称は分子構造に由来して名付けられていますが、LCPは溶融状態で液晶性を示すポリマーの総称です。
液晶ポリマーの概念図を図1に示します。

図1 成形過程における液晶分子鎖の配向概念図
溶融状態では液晶分子鎖はばらばらな方向に向いています。せん断力や延伸力を加えると、液晶分子鎖は力の方向に引き伸ばされた状態になります。この状態を配向と言います。液晶分子鎖の配向に垂直方向の強度は低いですが、平行方向の強度は著しく高くなります。このように平行方向の強度が高くなることを自己補強効果と言います。
LCPにはいろいろな分子構造のものがありますが、耐熱性によってタイプIとタイプIIに分類されています。荷重たわみ温度(1.80MPa)はタイプIでは300℃以上であり、ディップはんだにも耐える耐熱性を有しています。タイプIIの荷重たわみ温度は250℃~270℃ですが、最近ではタイプIIでも鉛フリーはんだに耐える耐熱性(約280℃)を有する1.5型タイプIIも開発されています。
自己補強効果によって強度・弾性率が高くなります。特に成形品の肉厚が薄くなるほどこの傾向は顕著になります。ただし、平行と垂直方向で強度、弾性率に異方性が生じることに注意すべきです。
LCPは難燃性(燃えにくい)です。UL94の燃焼ランクは厚み0.4mm~1.0mmで高い難燃性能を有しています。
溶融粘度は型内で流れるときの流動抵抗の大きさを表します。溶融粘度が小さいほど流動性はよくなります。LCPは溶融状態では液晶分子鎖がばらばらな方向に向いるので溶融粘度は大きいですが、射出時にせん断力が加わると液晶分子鎖が流動方向に配向するので、見かけ上溶融粘度は小さくなります。図2にせん断速度と溶融粘度の関係を示します。

図2 せん断速度と溶融粘度の関係
LCPは溶融粘度のせん断速度依存性が大きく、高せん断速度では溶融粘度は著しく小さくなることが分かります。言い換えれば、射出速度が遅いと流れにくいですが、速くすると著しく流れやすくなる性質があります。従って、高速射出すると薄肉成形品でも容易に成形できることになります。
LCPは溶融状態から固化するときの比容積(単位質量当たりの容積)変化が少ないので成形収縮率は小さいです。また、線膨張係数も小さいです。ただし、射出成形品では流れ方向と垂直方向で成形収縮率や線膨張係数に異方性があることに注意すべきす。
LCPの用途について、電子・電気分野では、狭ピッチコネクター、リレー部品、コイルボビン、ソケット類、スピーカコーンや振動板などが、事務機器・精密機器分野ではインクジェットプリンターのノズル、複写機の分離爪、光ピックアップ部品などがあります。その他では耐熱食器、スポーツ部品などにも使用されています。
表1にLCPの用途例と利用している特徴を示します。
表1 LCPの用途例と利用している特徴

例えば、狭ピッチコネクターの肉厚は0.2~0.4mm程度ですが、高射出速度(高せん断速度)で成形することで容易に成形できます。
PlaBase プラスチック事典
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数

