ABS樹脂のISO略語はABS。しかしABSと表現するとプラスチックであるか分かりにくいので、我が国ではABS樹脂と表現することが多い。1954年にU.S.ラバ―社(米国)が最初に生産開始。
ABS樹脂とは:PlaBase プラスチック事典
2023.04.12
ABS樹脂とは…
(執筆:本間精一/本間技術士事務所)

特徴
①ポリマーアロイ材料です。
②耐衝撃性が優れています。
③寸法安定性が優れています。
④流動性が優れ、成形しやすいです。
⑤めっきが容易にできます。
ABS樹脂は1954年にU.S.ラバ―社(米国)が最初に生産開始しました。その後、いろいろな製法が開発され、我が国でも生産されています。
ABS樹脂のISO略語はABSです。ただ、ABSと表現するとプラスチックであるか分かりにくいので、我が国ではABS樹脂と表現することが多いです。
ABSはアクリロニトリル(AN:Acrylonitrile)、ブタジエン(BD:Butadiene)、スチレン(ST:Styrene)の頭文字をとって名づけられました。PE、PP、PVC、PSなどは同じ原料(モノマー)から作られたホモポリマー(単独重合体)ですが、ABS樹脂はポリマーアロイです。なお、ポリマーアロイは単純にプラスチック同士をブレンドするだけでなく、共重合を含めた高分子多成分系プラスチックとされています。
ABS樹脂はAN成分を多くすれば強度・弾性率が高くなり、ST成分を多くすれば流動性はよくなり、BD成分を多くすれば耐衝撃性が向上します。AN、BD、STの各成分比を調整することによって要求性能に合わせた材料を作れる利点があります。
ABS樹脂の一般的特徴は次の通りです。
①BD成分を含むため、耐衝撃性が優れています。
②ST成分を含むため、成形時の流動性が優れています。
③AN成分を含むため、強度・弾性率が高いです
④非晶性プラスチックに属し、吸水率が低いため寸法安定性が優れています。
⑤BDゴム粒子を含むためめっきが容易です。
これらの特徴を活かして次の用途に使用されています
自動車分野:インストルメントパネル、ラジエーターグリル、コンソールボックス、ランプカバー
電機・電子分野:エアコンハウジング、掃除機ハウジング、事務機器ハイジング
日用雑貨:文房具、玩具、アタッシュケース、便座、スポーツ用品
表にABS樹脂の用途例と利用している特徴を示します。ABS樹脂の特徴の1つにめっきが容易にできることがあります。家電製品の取手などにはABS樹脂めっき品が使用されています。

表 ABS樹脂の用途例と利用している特徴
ABS樹脂には粒子径が数ミクロンのBDゴム粒子が無数に分散しています。そのため、次の工程を経ることでめっきを容易に行えます。図にABS樹脂とめっき工程とめっき膜密着原理を示します。

図 ABS樹脂のめっき工程と膜密着原理
①化学薬品で表面層近傍に存在するBDゴム粒子を溶解させて除きます。この処理によって表面に微細な穴が形成されます。この工程をエッチングと言います。
②次に化学めっき処理を行います。この工程を無電解めっきと言います。
③無電解めっき層の上にクロム、ニッケルなどの金属めっき処理をします。この工程を電解めっきと言います。
このように、BDゴムが離脱した穴に金属めっきが入り込むためアンカー効果を発揮することでめっき膜の高い密着強度が得られます。
PlaBase プラスチック事典
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数

