POM樹脂のISO略語はPOM。ポリアセタールと呼ばれている。化学名はポリオキシメチレン(Polyoxymethylene)という熱可塑性樹脂の1つで、エンジニアリングプラスチックに分類される。
POMにはホモポリマーとコポリマーがあり、1959年にデュポン社(米国)がホモポリマー「デルリン」、1962年にセラニーズ社(米国)がコポリマー「セルコン」の生産を開始。
POM樹脂とは:PlaBase プラスチック事典
2023.05.10
POMとは…
(執筆:本間精一/本間技術士事務所)

特徴
①耐摩擦摩耗性が優れています。
②無給油でも潤滑性を保持できます。
③耐疲労性が優れています。
④耐油性や耐溶剤性が優れています。
⑤強度・弾性率が高いです。
⑥比較的寸法安定性が優れています。
POMはアセタール結合で結びついているのでポリアセタールと呼ばれています。化学名はポリオキシメチレン(Polyoxymethylene)ですので、ISO略語はPOMです。またポリホルムアルデヒドと呼ぶこともあります。
POMにはホモポリマーとコポリマーがあります。1959年にデュポン社(米国)がホモポリマー「デルリン」、1962年にセラニーズ社(米国)がコポリマー「セルコン」の生産を開始しました。その後、日本でも輸入販売または国産技術による生産が開始されています。
ホモポリマーはホルムアルデヒドという化学原料(モノマー)から作られます。一方、コポリマーは主原料であるホルムアルデヒドに他の原料(コモノマー)を加えて作られます。ホモポリマーとコポリマーの一般的特性比較を表1に示します。ホモポリマーは結晶化度が高いので、強度・弾性率、結晶融点などは比較的高いです。一方、コポリマーは結晶化度が低いですがホモポリマーより熱分解しにくいため成形時の熱分解性、熱劣化性、温水劣化性などが優れています。

表1 ホモポリマーPOMとコモノマーPOMの定性的比較
POMの共通的特徴は次の通りです。
①耐摩擦摩耗性が優れています。
②無給油でも潤滑性を保持できます。この特性を自己潤滑性と言います。
③耐疲労性が優れています。
④強度、弾性率が高く、耐クリープ特性も優れています。
⑤結晶性プラスチックですが、吸水率が比較的低く、結晶化しやすいため寸法安定性が優れています。
⑥耐溶剤性や耐油性が優れています。
これらの優れた特徴を生かして、次の用途に使用されています。
- 自動車用途:ドアインナハンドル、オートドアーロック、シフトレ バー、コンビネーションスイッチ、ガソリンタンクポンプモジュール
- 電機・電子用途:AV機器の駆動部品、DVD-ROM機器の歯車やプーリ、扇風機ネックピース、洗濯機攪拌用プロペラ
- 事務機器用途:プリンタ部品、複写機の送りギア、FDDコレット
- 機械用途:輸送機器のローラー、減速機構、チェーン、時計部品
- 日用品用途:玩具ギア、ファスナー、バックル
POMの用途例と利用している特徴を表2に示します。

表2 POMの用途例と利用している特徴
例えば、歯車では以前は鉄、銅合金などの金属材料が使用されていました。金属歯車は重いので回転に要する動力が大きいこと、定期的に給油しなければならないこと、加工工数がかかるなどの課題がありました。これに対しPOMは耐摩擦摩耗、耐疲労性など歯車に必要な物性を有しており、しかも自己潤滑性であるため無給油で使用することができます。また、射出成形することで生産性も向上する利点があります。
しかし、金属歯車は機械加工で製作するため高精度の歯車が得られますが、POM歯車の場合、一般的な射出成形では精度が良くないという課題がありました。そのため、精密制御の射出成形機、製品・金型設計、歯車精度の計測などの精密成形技術を開発することによって高精度歯車を射出成形することが可能になり、事務機器、自動車などの歯車として広く使用されるようになりました。
PlaBase プラスチック事典
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数

