PPSはポリフェニレンスルフィド(Polyphenylene sulfide)のISO略語。1973年に米国のPhillips Petroleum社が生産を開始。ガラス繊維強化PPSはスーパーエンジニアリングプラスチックに分類される。
PPS樹脂とは:PlaBase プラスチック事典
2023.07.05
PPSとは…
(執筆:本間精一/本間技術士事務所)

特徴
①強度・弾性率が高いです。
②耐熱性が優れています。
③難燃性です。
③耐薬品性が優れています。
④吸水率が低く、寸法安定性が優れています。
⑤電気絶縁性が優れています。
PPSはポリフェニレンスルフィド(Polyphenylene sulfide)のISO略語です。ポリフェニレンサルファイドと表現することもあります。
PPSは、1973年にPhillips Petroleum社(米国)が生産開始しました。その後、我が国でも生産されています。PPSはジクロロベンゼンと硫化ナトリウムという化学原料から作られます。PPSは重合法によって架橋型、半架橋型、直鎖型の3種があり、それぞれの構造によって物性や成形性には若干の違いがありますが、PPSと総称されています。
PPSはガラス繊維や無機フィラーとの親和性が良く補強効果が大きいので、充填材を40wt%充填した強化材料が標準的に使用されています。非強化PPSとガラス繊維強化PPSの性能比較を表1に示します。この表から、ガラス繊維強化することで荷重たわみ温度や曲げ強度、曲げ弾性率が大幅に高くなることが分かります。スーパーエンジニアリングプラスチックに分類されています。

表1 非強化PPSとガラス繊維強化PPSの比較
PPSの特徴は次の通りです。
①広い温度範囲で強度、弾性率が高く、耐疲労性や耐クリープ性も優れています。
②ガラス繊維強化PPSの荷重たわみ温度(1.80MPa)は260℃で、連続使用温度は200~220℃と高いです。
③耐摩擦摩耗性が優れています。
④分子に硫黄(S)原子を含むため燃えにくく、高い難燃性能を有しています。
⑤吸水率は0.02%(23℃水中、24hr)であり、吸水寸法変化が小さいです。
⑥耐水性、耐有機溶剤性、耐油性などの耐薬品性が優れています。
⑥誘電正接、誘電率が小さいので絶縁特性が優れています。
このような優れた特性を活かして次の用途に使用されています。
- 電機・電子用途:コネクタ、パワーモジュール、光ピックアップ部品、各種シャーシ、ドライヤーグリル
- 自動車用途:ECUケースなどの電装部品、ウォーターポンプのインペラなどのエンジン周り部品など、ハイブリッド自動車や電気自動車のパワーモジュール、モーターなどの部品
- 機械用途:ケミカルポンプインペラ、ギアポンプ、バルブ類など
表2にPPSの用途例と利用している特徴を示します。たとえば、電気自動車のパワーコントロールユニットの冷却システムに使われるウォーターポンプのインペラにはPPSが使用されています。この用途では、強度・弾性率や耐摩擦摩耗性に加えて、寸法安定性、耐不凍液性、耐ヒートショック性などが求められます。

表2 PPSの用途例と利用している特徴
一方、直鎖型PPSはフィルムや繊維などに加工されて用途が広がっています。フィルムは電気絶縁性の良さを生かしてコンデンサーや電気絶縁材料、回路基板などに使用されています。繊維はモノフィラメント、マルチフィラメント、不織布などに加工されてフィルタやコンベアベルトなどに使用されています。
PlaBase プラスチック事典
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数

