機械製図の実務を行う上で基本となることを解説。今回は、JIS製図における2D図面における加工法の表現や図面配置について解説します。
機械設計者も加工方法の基本を押さえよう:機械製図道場(入門編 3)
2023.10.16
今回の記事は…
(執筆:土橋 美博/3D CAD推進者)
前回は、「正面図とは何か」と「明瞭性」について解説しました。今回も、「図形の表し方」における「加工方法の表現」と「図面の配置バランス」について解説します。
3.加工方法
部品図は、部品を加工・製作する人にとって重要な情報源(媒体)になります。そのため、設計者はその部品の加工方法についても理解しておく必要があります。
筆者自身は新入社員時代に簡単な機械加工を経験しています。加工方法を理解した図面を描くためには、設計者といえども、最低限、「フライス加工」「旋盤」「ボール盤」といった基本的な工作機械の知識が必要です。加工を知らない設計者であっては、加工を理解した図面を描けないばかりか、加工ができない形状でさえ描いてしまうことになります。設計者、特に新入社員向けに、機械加工実習ができることが理想的です。
図1のような加工では、フライス盤を使用します。

図1 フライス盤加工を意識した図面
ワークは水平方向の向きで固定され、その反対側上面より回転する刃物により切削されます。そのため、「加工面を上から見ているような図面」が好ましいといえます。この「加工面を上から見ているような図面」というのが、部品を加工・製作する人にとって重要な情報を示していることになります。
図2のような加工では、旋盤を使用します。といわれる工作機械で加工します。

図2 旋盤加工を意識した図面
旋盤は、旋盤のチャックに加工物の丸棒素材(材料)をセットして、丸棒素材を回転させます。回転している素材に対して「バイト」と呼ばれる刃物を当てることで切削していきます。一般的にチャックは左側、バイトは右側にあります。つまり、図面と加工状態を同じにするという意味では、バイトで加工される側を右に向けた図面が好ましいといえます。
このことを知らない設計者も少なくありません。
4. 図面の配置バランス
図面の配置バランスについて図3のモデルを参考に解説します。

図3 図面の配置バランス参考モデル
このモデルを三面図(正面図/平面図/側面図)として描くには図面上にどのような配置を作成すべきでしょうか。前回解説したように、製図では初めに「主投影図=正面図」を何にするかを決める必要があります。そして、その主投影図は、図面化するものの機能を示す代表的な面を選択します。
筆者は図4に示した矢印の向きを正面図の向きと考えます。

図4 正面の向き

図5 筆者の描いた図面 図面尺度1/1
図3のように描くと見やすい図面だと筆者は考えます。では、“あえて”別の面を正面図とした図面を示してみましょう。図5と、以下の図6を見比べてみてください。

図6 正面図を変更した例(1)図面尺度1/1
図5と図6は同じ図面枠(A3)を使用していますが、図5の方が、主投影図(正面図)といして図面化するものの機能を示す代表的な面を選択できているだけではなく、図面枠内への三面図のおさまりが良いといえます。
図面の配置バランスについて図3のモデルを参考に解説します。

図7 正面図は同じものの尺度を変更した例(2)図面尺度 1/2
図7は同じ図面枠(A3)を使用していますが、尺度を1/2としています。この場合、図面に余白ばかりがある図面になってしまいます。また、実物と同じ大きさで描く「現尺」の方が“大きさ感”を理解しやすいものとなることから、図5のような図面を描くべきです。
図面の一義性では、部品を加工・製作する人が理解しやすい図面であり、また、見やすい図面であることが重要であるといえます。(次回に続く)
土橋 美博(どばし・よしひろ)
3D CAD推進者。1964年生まれ。25年間、半導体組み立て関連装置企業でメカ設計・営業・3D CAD推進に従事。2014年にフラットパネルディスプレイ製造装置を主に開発設計製造を行う企業に入社。これまでの3次元CADの経験を活かした現場発信のデジタルプロセスエンジニアリング推進活動を行いながら、CAEも担当。長野県南信工科短期大学校で非常勤講師として機械設計製図の教育も行っている。

