機械製図の実務を行う上で基本となることを解説。今回は、「補助投影図」について解説します。
三面図だけだと伝えきれない時の「補助投影図」:機械製図道場(入門編4)
2023.11.20
今回の記事は…
(執筆:土橋 美博/3D CAD推進者)
前回は、JIS製図における2D図面の「図形の表し方」において、加工方法を意識した図面や図面配置のバランスについて解説しました。
これまで解説してきた三面図による表現だけでは、どうしても必要な情報が伝えられないことがあります。
この伝え切れない情報を表現する際に用いる手段の1つが、補助投影図です。
今回からは、「補助投影図」や「部分投影図」、「局部投影図」などを使用した図形の表し方について解説していきます。
5.補助投影図
補助投影図については、「JIS B 0001:2019 機械製図 Technical drawings for mechanical engineering」により規定されています。
※皆さんもぜひ、JISを見ることをお勧めします 。
10.1.7 補助投影図(※JIS B0001:2019より抜粋/編集)
斜面部がある対象物で、その斜面の実形を表す必要がある場合には、次によって補助投影図で表す。
a)対象物の斜面の実形を図示する必要がある場合には、その斜面に対向する位置に補助投影図として表す。
この場合、必要な部分だけを部分投影図または局部投影図で描いてもよい。
b)紙面の関係などで、補助投影図を斜面に対向する位置に配置できない場合には、矢示法を用いて示し、その旨を矢印およびラテン文字の大文字で示す。
それでは、このJISに記載されている内容について、3D図(図1)と部品図と2D部品図(図2)を用いて説明します。

図1 3D 部品図で表した部品形状

図2 2D 部品図で表した部品形状
3D 部品図で表されたような形状の時、図2のように右側面図となる投影図に対し、赤色の枠線で囲んだ斜面を含む投影図では、4カ所あるネジ穴が縮んで楕円(だえん)形状に投影されるため、このような楕円の形状が正しくないとはいえません。また、3D CADにおいて、3D 部品図から2D 部品図を自動的に作成した場合も、図2のような2D 図面に自動変換されます。
このような楕円の形状では、ネジ穴としての認識がしにくくなります。このような場合には「その斜面に対向する位置に補助投影図として表す」とのJISに規定があります。その際、斜面に平行な投影面を設定するのですが、この投影面のことを「補助投影面」と呼び、実際に投影された図(投影図)のことを「補助投影図」といいます。補助投影図では、図3のように「斜面の実形状を実線で表す」ことを目的にしています。

図3 補助投影図によりネジ穴面を表す(良い例)
その際、補助投影図で表す部分の向こう側の図形を、隠れ線や実線で表す必要はありません。
図4のように、隠れ線や実線を詳細に記してしまうと、縮む部分や不必要な線が表示されてしまい、「見にくい=理解しにくい」図面になります。

図4 見にくい補助投影図の例
別の例も示します。図5では、これまでの例よりも非斜面部(ネジ穴が2つある方)が長い対象物としました。

図5 補助投影図の向こう側に見える図形を実線で描いた例
斜面から見ると、その向こう側にも形が見える形状です。図5のように、補助投影図の向こう側に見える図形を実線で描き入れてた場合、見にくい図面になっていることが分かります。
そこで、図6のように分かりやすい投影図にすることが必要です。

図6 図5を分かりやすい投影図にした例
全てを描くことがていねいな図面であるように思われがちですが、「見にくい=理解しにくい」図面を作ってしまう可能性があります。そうならないように、補助投影図の目的をよく考えて図面を描く必要があります。
次回は、部分投影図について解説します。
土橋 美博(どばし・よしひろ)
3D CAD推進者。1964年生まれ。25年間、半導体組み立て関連装置企業でメカ設計・営業・3D CAD推進に従事。2014年にフラットパネルディスプレイ製造装置を主に開発設計製造を行う企業に入社。これまでの3次元CADの経験を活かした現場発信のデジタルプロセスエンジニアリング推進活動を行いながら、CAEも担当。長野県南信工科短期大学校で非常勤講師として機械設計製図の教育も行っている。

