PAIとはポリアミドイミドの略称で、耐熱性に優れ、高強度のスーパエンジニアリングプラスチックです。1972年に米国アモコ社が成形材料「トーロン」として生産・販売を開始。
PAI樹脂とは:PlaBase プラスチック事典
2023.10.18
PAIとは…
(執筆:本間精一/本間技術士事務所)

特徴
①PIに次ぐ耐熱性を有しています。
②機械的強度は広い温度範囲にわたって高い値を保持しています。非強化プラスチックの中では最も高い機械的強度を有しています。
③耐薬品性は優れています。
④難燃性です。
⑤自己潤滑性を有しており、耐摩擦摩耗性が優れています。
PAIは1972年に米国アモコ社が成形材料「トーロン」の生産・販売を開始しました。その後、2001年にソルベイスペッシャルティポリマーズに事業譲渡され、同社が「トーロン」を生産・販売しています。我が国では輸入販売されています。
ポリイミド(PI)は非熱可塑性ですが、PAIはアミド基を導入することで射出成形や押出成形性が可能です。ただ、分子量を高くすると実用物性は向上しますが成形が困難になります。そのため、成形可能な分子量に低く抑えた材料を作り、成形後に本来の物性を発揮するように加熱処理(アフターベーキング)を行って分子量を高めています。アフターベーキングでは分子間から水を離脱しながら徐々に反応が進むため、重合に長い時間がかかることに注意しなければなりません。
PAIは次の特徴があります。
①荷重たわみ温度(1.80MPa)は274℃であり、PIに次ぐ耐熱性を有しています。ULの
相対温度指数(RTI)は220℃(非衝撃)です。
②機械的強度は広い温度範囲にわたって高い値を保持しています。また、アフターベーキングを行うと引張強度は約190MPaに向上します。非強化プラスチックの中では最も高い値です。
③ほとんどの有機溶剤に溶解することはなく、耐薬品性は優れています。
④難燃性です。UL94では1.17mmでUL94V-0にランクされています。
⑤自己潤滑性を有しており、耐摩擦摩耗性が優れています。なお、自己潤滑性とは給油しないでも潤滑性を保てる性質のことです。
PAIは丸棒、厚板などの加工素材や成形材料として販売されています。
次の用途に使用されています。
精密機器用途:複写機の紙剥離爪、軸受け、歯車類、ワッシャー、ICソケットなど
自動車用途:スラストワッシャー、エンジン部品、トランスミッション部品など
機械用途:油圧器シール、ビストンリング、ボールベアリングリテーナー、ポンプ羽根、ローラー、カムなど
表にPAIの用途例と利用している特徴を示します。トロコイドポンプは外歯車と内歯車の間に油を取り込み、歯車を回転させることで移送する油用ポンプです。PAIは耐熱性、耐油性、耐摩擦摩耗性が優れていることから同ポンプ部品に使用されています。

表 PAIの用途例と利用している特長
PlaBase プラスチック事典
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数

