プラスチックの耐寒性の指標となる脆化温度と衝撃強度の温度特性について解説する。
プラスチックの耐熱性(3)__耐寒性:プラスチック材料の基礎知識(23)
2024.05.22
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(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
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プラスチックは温度が低くなると強度や弾性率は高くなるが、脆くなる性質がある。脆くなる温度(脆化温度※)が低いほど耐寒性は優れていることになる。耐寒性を評価する試験法には、JISK7216に規定された脆化温度試験法がある。
※編集部注:脆化温度(ぜいかおんど)
図1に脆化温度の試験装置と試験片の取り付け方を示す。

図1 脆化温度の測定装置および打撃ハンマーと試験片の取り付け方(出典:JIS K7216)
同図のように低温槽中で試験片をつかみ具に取り付けて、打撃ハンマーで衝撃を与えて破壊した試験片の数を測定する。試験片は1条件で10本以上を用いる。雰囲気温度を段階的に下げて破壊数を測定し、破壊率が50%になる温度を脆化温度とする。
この試験法による脆化温度の測定例を表に示す。

表 脆化温度とガラス転移温度
同表にはガラス転移温度 1)も示しているが、脆化温度との相関性は認められない。実際には脆化温度まで使用できるわけではなく、耐寒性を相対的に比較するデータとして用いられている。耐寒性が優れているプラスチックにはポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)などがあり、いずれも脆化温度は-100℃以下の値である。
実用的な耐寒性は衝撃強度の温度特性を指標にすることが多い。図2に衝撃強度の温度特性概念図を示す。

図2 衝撃強度の温度特性
高温側の(A)温度領域では高い値を示す。
(B)温度領域では高い値と低い値がばらついて発生する。
(C)温度領域では低い値になっている。
実用的には衝撃強度の温度特性において、(A)温度領域では衝撃強度が高くてばらつきも少ないので、(A)温度領域の下限温度を目安にするのが一般的である。
例えば、PCのアイゾット衝撃値の温度特性では(A)温度領域の下限温度は-30℃前後である。PCは耐寒衝撃性の良さを活かして、降雪地の明かり取り透明屋根材にPCシートが使用されている(図3)2)。

図3 降雪地の明り取り透明屋根材2)
(PCシート使用)
(次回につづく)
【執筆者注、参考文献など】
1)プラスチックの熱運動(ミクロブラウン運動)が停止する温度
2)三菱ガス化学 「ユーピロンガラス」カタログ、p.13
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数
