機械製図の実務を行う上で基本となることを解説。今回は、寸法(サイズ)の記入の方法などについて解説します。
「寸法」と「サイズ」の違いとは:機械製図道場(入門編9)
2024.05.08

今回の記事は…
(執筆:土橋 美博/スワニー CIO、3D CAD推進者)
これまで、JIS製図における基本的な知識として、三面図から始まって、補助投影図と断面図、図形の描き方について解説してきました。今回は、寸法(サイズ)の記入の方法について解説します。
>>前回「まだまだいろいろ断面図」
「寸法」と「サイズ」、何が違うのか
サイズを入れることにより、2D図面は図形を表すだけではなく、大きさの定義を持つことができます。この大きさの定義を持つこともまた、図面の一義性を示す大切な要素となります。多くの設計者の皆様は「寸法」という用語はなじみ深いものですが、「サイズ」という呼び方にはなじみがないかたもいるかもしれません。
(※JIS B 0420-1:2016より抜粋/編集)
製品の幾何特性仕様(GPS)-寸法の公差表示方式-第1部:長さに関わるサイズ
Geometrical product specifications(GPS)-Dimensional tolerancing-
Part 1:Linear sizes
「JIS B 0420-1」は2016年に制定されたものです。ここには適用範囲として、次のように記載されています。
この規格は“円筒”および“相対する平行二平面”の2つのサイズ形体の長さに関わるサイズに対する標準指定演算子ならびに特別指定演算子について規定する。また、これらの長さに関わるサイズのための指定条件およびその図示方法について規定する。
JISの製図に関する規格は古いものが多く、例えばJIS B0001 機械製図 Technical drawings for mechanical engineeringの制定は1958年に制定、2019年に最新改正されています。
ISO(国際標準化機構( InternationalOrganization for Standardization))などの国際規格が制定・改正されている中で、日本のJIS規格と国際規格への乖離(かいり)を防ぐ意味から、GPSの基本的な国際規格で2010年制定のISO14405-1 Geometrical product
specifications(GPS) — Dimensional tolerancing —Part 1:Linear sizesをJIS対応する上で呼び方もまた変わるようになった背景があります。
(※JIS B 0001:2019より抜粋)
3 用語及び定義 この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS Z8114によるほか,次による。
注記 長さに関わる[長さの単位(mm)をもつ]“寸法”には,“サイズ”及び“距離”の
2種類がある。この規格で使う前者の“サイズ”とは,サイズ形体の大きさ,すなわち,
円・円筒の直径,相対する平行二平面の幅などのことであり,サイズ公差による規制が可能である。
後者の“距離”には,例えば,穴の中心間距離,段差の距離などがあり,幾何公差による規制が可能
寸法線の扱い方
それでは、これらの寸法を入れる上で必要な寸法線について解説します。
JIS B 0001:2019には次のように記載されています。
11 寸法記入方法(※JIS B 0001:2019 機械製図より抜粋/編集)
11.1 一般事項
一般事項は、次による。
a)対象物の機能、製作、組み立てなどを考えて、図面に必要不可欠な寸法を明瞭に指示する
b)対象物の大きさ、姿勢および位置を最も明確に表すために必要で十分な寸法を記入する
c)寸法は、寸法線、寸法補助線≫、寸法補助記号などを用いて、寸法数値によって示す
d)寸法は、なるべく主投影図に集中して指示する
e)図面には、特に明示しない限り、その図面に図示した対象物の仕上がり寸法を示す
f)寸法は、なるべく計算して求める必要がないように記入する
g)加工または組み立ての際に、基準とする形体がある場合には、その形体を基にして寸法を記入する
h)寸法は、なるべく工程ごとに配列を分けて記入する
i)関連する寸法は、なるべく1カ所にまとめて記入する
j)寸法は、重複記入を避ける。ただし、一品多葉図で、重複寸法を記入した方が図の理解を容易にする場合には、寸法の重複記入をしてもよい
k)円弧の部分の寸法は、円弧が180度までは半径で表し、それを超える場合には直径で表す。ただし、円弧が180度以内であっても、機能上または加工上、特に直径の寸法を必要とするものに対しては、直径の寸法を記入する
l)機能上(互換性を含む)必要な寸法には、JIS Z 8318によって寸法の許容限界または許容限界サイズ(JIS B 0401-1参照)を指示する。ただし、理論的に正確な寸法および参考寸法を除く。なお、寸法の許容限界または許容限界サイズの指示がない場合には、個々に規定する普通公差を適用する。その場合、適用する規格番号および等級記号または数値を表題欄の中またはその付近に一括指示する
m)寸法のうち、理論的に正確な寸法については寸法数値を長方形の枠で囲み、参考寸法については寸法数値にかっこを付ける。なお、参考寸法は、検証の対象としない
三面図について解説した「主投影図(正面図)」についても項目d)に記述があります。JIS製図を理解する上でも、このような規定について再度確認することは重要です。
3D CADによる設計を行う場合、このような内容を意識しなくても設計はできますが、3D上で設計情報を表現する「3DAモデル(3D Annotated Model)」を作製する場合、寸法記入の方法について再認識しておくことはJISに準拠する上で、必要です。
用語解説
3DAモデル:3D CADを用いて作成した3次元の形状モデルに、構造特性(寸法、注記、数量など)を加えたモデルのことを「3DAモデル」と呼びます。
JISには「寸法補助線」「寸法線」「寸法値」の規定が記述されていますが、以下、筆者の解釈を交えながらできるだけ分かりやすく解説します。
寸法補助線の記入
寸法は、寸法補助線を用いて寸法線を記入します。そして、この寸法線の上側に寸法数値を指示します。なお、寸法補助線を引き出すことで図が紛らわしくなる場合には、この限りではありません。

図1 通常の寸法線および寸法補助線の描き方

図2 寸法補助線を引き出すと図が紛らわしくなる場合の寸法線の描き方
寸法補助線は、指示する寸法の端に当たる図形上の点または線の中心を通り、寸法線に対して直角に、寸法線をわずかに越える位置まで延長して引きます。
寸法補助線と図形との間はわずかであれば離してもよいですが、一葉図(1つの部品または組立品1枚の製図用紙に描いた図面)または多葉図(1つの部品または組立品を2枚以上の製図用紙に描いた図面)の中で統一して描く必要があります。
寸法を指示する点または線の位置を明確にする場合、寸法線に対して直角に寸法補助線を描くとかえって分かりにくい図面となってしまいます。このような場には合、寸法線に対して適切な角度をもつ互いに平行な寸法補助線を引き、その角度は60度が適当だとされています。

図3 寸法線に対して適切な角度をもつ互いに平行な寸法補助線を引く
傾斜する2つの面の間に面取りやフィレット(R、アール。「ラウンド」という場合もある)を施した時、寸法の端の位置が不明瞭であれば、2つの面の交わる位置を面取りやフィレットを施す前の形状として細い実線で表し、その交点から寸法補助線を引き出します。なお交点を明確に示す必要がある場合には、それぞれの線を互いに交差させるか、交点に黒丸を付けるようにします。図4では寸法の端の位置が明確なため、黒丸は入れていません。

図4 傾斜する2つの面を細い実線寸法線で示した寸法補助線
次回は寸法線の記入方法について解説します。
土橋 美博(どばし・よしひろ)
3D CAD推進者。1964年生まれ。25年間、半導体組み立て関連装置企業でメカ設計・営業・3D CAD推進に従事。2014年にフラットパネルディスプレイ製造装置を主に開発設計製造を行う企業に入社。これまでの3次元CADの経験を活かした現場発信のデジタルプロセスエンジニアリング推進活動を行いながら、CAEも担当。長野県南信工科短期大学校で非常勤講師として機械設計製図の教育も行っている。

