プラスチック部品の製作や試作を依頼するにあたって基本的な事項について解説する連載。第1回は、プラスチック部品を作りたい時に考えなくてはいけないことを説明します。
プラスチック部品を作りたい時に確認すべきこと:ゼロから始めるプラスチック部品の試作・製作(1)
2024.05.27
この記事では…
(執筆:小林由美/facet,監修:泉 規靖/金森産業 PlaQuick)
はじめに~多様化したものづくりの現場に必要な基礎知識~
今から10年くらい前――2010年代の中ごろくらい、ものづくりスタートアップの急増や、3Dプリンターブーム到来などにより、さまざまな人がものづくりにかかわるようになりました。今や、筐体(ケース類)などの部品作りにかかわる人は、加工技術者や機械設計者だけではなく、電気や制御系設計者やソフトウェア開発者、(意匠系の)デザイナー、企画職など、バックグラウンドが多様になってきています。
そういうわけで、この連載では機械加工や製図の知識がなくても、なるべく読みやすいレベルで、プラスチック部品の製作や試作を依頼するにあたって基本的な事項について解説していきたいと思います。
本職である加工技術者や機械設計者の方にとっては「知っていて当たり前」な技術にはなってしまいますが、もし身の回りでプラスチック部品の用意について困っている方がいる場合、その際のご説明の際にはこの連載が少しの手助けになれば幸いと考えています(もちろん、「いまさら聞けない」という方もどうぞ)。

センサー搭載のスマートシューズ「ORPHE TRACK」のプロジェクトマネジャーの宮田さんは、もともと運動靴の開発をしていた方。部品作りにかかわる人のバックグラウンドが多様化している例の1つ。:「人々の日常に寄り添うスマートシューズ「ORPHE」の開発(前編)」より
プラスチック部品を作りたいときに考えたいこと
プラスチックの部品を作る方法は、射出成形や切削加工、注型(ちゅうけい)、3Dプリンターなどいろいろあります。しかし、そうした方法を考える以前に、きちんと整理しなければならない情報があります。
プラスチック部品を作る目的は、誰でも何かしらあると思いますが、例えば以下のような内容が想定されます(以下に限りません)。
- 展示会で、企画中の製品のイメージを見せたい
- 形や、立体になった際の色映え・色味を確認したい(「デザインモック」など)
- 想定している動きや勘合を確認したい
- 極力、市場に出るものに近いものを作って評価をしたい
- 工場の作業で使用する治工具を製作したい
- 製品として売りたい
- 金属部品を軽量化などの理由でプラスチックに置き換えたい
1や2の場合、紙や発泡スチロールを使って自分で作るのではなくて、「水や油がかかるかもしれない」「長期間使いたい」「触り心地を確認したい」といった理由から、あえてプラスチックで作りたい理由があると思います。
5と6は「製品(最終製品もしくは完成品など)」と表現され、「試作」は1~5のことで、要するに5や6に至るまでの検討過程ということになります。5の治工具の場合は、作ってすぐ現場で使用したりもしますが、いろいろな形を作ってあれこれ試したいというような場合は試作ということになります。
6の場合は、1点だけの場合もあれば、数万個の場合もあります。1点や少数の場合は、例えば「市場にない製品を、どこよりもいち早く市場に出し、その反響を見て改良していきたい(プロダクトアウト)」などが理由として考えられます。
7は、1~6と視点は少し異なりますが、プラスチックで製品を製作したい理由について考える際の着目点になります。

首掛け型ウェアラブルデバイス「THINKLET」に取り付けられた脱落防止のネックバンド(6の例)。市場に出た後に追加になった部品。:製造業DX推進のカギは、作業者にもAIにも優しいウェアラブルデバイス(後編)より

モバイル型ロボット端末「ロボホン」の試作品(4の例)。「いかにも試験機のようなものではなく、まるで最終製品のようなクオリティであることだ」:「一般的なプロジェクトとはちょっと違う? “高橋流”のプロトタイプを使ったイメージ共有:ロボットクリエイター高橋智隆氏 インタビュー【後編】」より
プラスチック部品を作ってもらうために
プラスチック部品を、加工現場に手配するにあたり、最低限考えなくてはいけないことは以下です。
- どういう目的があって、どういう機能を持たせるものなのか
- どういう形や寸法で作るか
- どんな材料で作るか
- いくつ欲しいのか
- いつまでにほしいか
1は、部品そのものの目的や機能についてであり、そもそもこれが固まっていなければ、2以降が決まりません。
2については、プラスチックの部品を作るにあたり、形状や寸法が決まっていなければ作りようがないため、その情報を何らかしら用意する必要があります。ほとんどの場合、部品の形状を線画で書き、複数の方向から見た図を入れながら寸法を描く「図面(部品図)」を用意します。併せて、3Dの立体デジタルデータ(3Dデータ)も作成する場合もあります。3D CADを用いて、3Dデータで設計した後で図面が作られるケースも多いです。
現状では、部品加工をする場合、まずは寸法や形状などが正確に示された図面があれば3Dデータは必要ではありません。しかしここ数年は、3Dプリンター主体の加工サービスも登場し、3Dデータのみで部品製作をすることが主流になってきています。
目的が明確であれば、「どんな材料で作るか」どうかも、ある程度要件が見えてきます。もちろん「ポリカボネート(PC)で作ろう」など材料をこちらから具体的に指示するということもありますが、「透明色がいい」「ある程度の高温に耐えてほしい」「柔らかくて伸びる素材がいい」「雨風にさらされても大丈夫」「なるべく安い方がいい」「バイオ素材がいい」など、まずは材料に求める要件をいろいろ考えるということになります。
必要な要件さえ明確にしておけば、具体的にはどんなプラスチックを選ぶべきかどうかは、材料について詳しくなければ、材料メーカーの営業担当や技術担当、加工技術者など、詳しい人からアドバイスをもらえばよいのです。
一方、あまり良くないのは、「用途は知らないけど、見た目そっくりな部品で、その材料を採用していた」といった理由です。自分自身があまり材料に詳しくないのだとしても、「どうしてその材料が使われていたのか」をちゃんと意識するべきです。
「いくつ欲しいのか」については、とりあえず1つあれば済むのか、壊れた時用に備えが必要なのか、取りつく場所が複数あるのかといった「必要な数」という視点の他、「2週間以内で作れるだけ作ってほしい」といった期間に縛られる都合や、「10万円以内でおさえたい」など予算の都合を加味する場合もあり得ます。実際に制作個数をどうしたらいいかは、ある程度、加工担当側と相談しながら決めることもできます。
最後に「いつまでにほしいか」です。製作期間は、採用する製作方法の他、自社内で所有する機械で作るのか(自分が作るのか、他の担当が作るのかも)、外部企業に依頼するのかで大きく変わってきます。時に「なるはや(なるべく早めに)」と言ってしまう場合がありますが、「いつまで欲しいのか」がはっきり決まっていた方が、加工側がものづくりの工法を決めやすく、スムーズに製作が進みやすいです。
納期は、発注側からの「いつまでにあれば目的を達成できるか」を考慮した上、受注側の生産能力やキャパシティーによって決定されます。それが、見積もり回答の一部にもなりますが、そもそも「使用する材料」や「必要な個数」などが決まっていなければ、受注側も見積もり回答がきちんとできないということになってしまいます。
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次回以降は、これらを踏まえて、用意すべき情報やデータについて解説します。

【編集部からのお知らせ】
金森産業「PlaQuick」が「次世代 3Dプリンタ展 [東京] 2024」出展
会期中は、サステナブルに対応したプラスチック材料での試作品や過去に製作しました試作品のサンプルを中心に展示いたします。PlaQuickの特徴である『短納期』『安価』『量産と同じ材料』を実現した成形品を是非ともこの機会に手に取ってご体感ください。
【次世代 3Dプリンタ展 [東京] 2024】
・日時:2024年6月19日(水)~ 21日(金)10:00〜17:00
・会場:東京ビッグサイト 小間番号:東2ホール E12-42
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執筆者プロフィール

小林 由美(こばやし・ゆみ)
ライター、編集者。町工場でのトレースや設計補助、メーカーでの設計製造現場での実務を経験。後、大手メディアの編集記者として約12年間、技術解説記事の企画や執筆の他、広告企画および制作、イベント企画など、幅広く携わる。2020年5月に個人事業 facetとして独立。
監修者プロフィール

泉 規靖(いずみ・のりやす)
PlaQuick事業部/金森産業株式会社 東京営業所
1993年金森産業株式会社入社。30年間、試作の業界に携わりながらm3Dデータを活用したモノづくりサービス『PlaQuick』のブランディングに従事する。趣味のサッカー、スノーボードともに指導者の資格を所得して高校/大学サッカー、Jクラブ、海外クラブとの関係づくりも構築。富山県出身。
PlaQuickについて(金森産業)
試作から量産までプラスチック・樹脂の成形の課題をトータルサポート。簡易見積もりは入力後約30秒。図面はなくても大丈夫! 納期は最短5営業日とQuickなものづくりサービス。
URL:https://www.plaquick.com/
PlaQuick事業部/金森産業株式会社 東京営業所
1993年金森産業株式会社入社。30年間、試作の業界に携わりながらm3Dデータを活用したモノづくりサービス『PlaQuick』のブランディングに従事する。趣味のサッカー、スノーボードともに指導者の資格を所得して高校/大学サッカー、Jクラブ、海外クラブとの関係づくりも構築。富山県出身。

