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残留ひずみはなぜ発生するか②――金具インサートによる残留ひずみ:プラスチックの強度(31)

2024.06.12

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この記事は…

金具インサート成形時の残留ひずみについて解説する。

(執筆:本間精一/本間技術士事務所)


プラスチックは強度が低いので成形品を部分的に補強するために金具をインサートして成形する方法がとられる。金具をインサートして成形すると冷却するときの樹脂の収縮力によって金具が固定される。


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表 プラスチックと金属の線膨張係数


表のようにプラスチックの線膨張係数は金属(銅、鉄)の約3~5倍大きい。そのため、型内で冷却するときの熱収縮は金具よりプラスチックの方が大きいので収縮力が生まれる。

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図1 インサート金具の有無と収縮


図1に示すように、型内で冷却するときに金具がなければ寸法L0(0は下付き文字)まで収縮するが、金具があるため金具寸法L1(1は下付き文字)までしか収縮できないとする。その結果、次式の残留ひずみが発生する。

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式1

残留応力は(残留ひずみ×弾性率)であるので、残留ひずみが同じでも弾性率が大きいプラスチックでは残留応力は大きくなる。また、応力緩和特性 1)によっても変化する。

金具周囲に発生する残留ひずみを実際に測定してみると、ストレスクラック 2)を発生させるほど大きな値ではないが、次の場合にはクラックによる割れトラブルが発生するので注意しなければならない。

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図2 角柱状インサートのコーナアールと応力集中


金具周囲に鋭角のコーナーがあると応力集中するため大きな残留ひずみが発生するので、金具のコーナーにはR(アール:丸める)を付ける必要がある。図2(a)に示す角柱状金具をインサートすると鋭角コーナに応力集中するためクラックが発生しやすい。図(b)に示すように金具コーナに丸みをつけるとクラックの発生を防止できる。

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図3 ウェルドラインを避けた設計

金具周囲にウェルドラインが発生すると、残留応力の影響でウェルド部からクラックが発生することがある。この場合、成形品形状を設計変更することによって対策することができる。たとえば、図3(a)では金具周りにウェルドラインが発生する。同図(b)のような形状に変更するとウェルドラインが発生しなくなるので、クラックの発生を防止できる。

インサートによる残留応力が小さくても、金具に油類が付着しているとケミカルクラック 3)が発生することがある。非晶性プラスチック(PS、ABS、PMMA、PCなど)では、金具を加工するときに使用した切削油が付着したまま成形すると、インサートによる残留応力と切削油によってケミカルクラックが発生する。金具に付着した切削油は洗浄除去した後に使用しなければならない。

編集部注:

  • 1)成形品に一定のひずみを与える場合、直後に発生した応力(初期応力)が時間経過すると一定の値まで減少する性質である。
  • 2)成形品に一定のひずみを与えて時間が経過するとクラックが発生する現象である。
  • 3)溶剤、油類、可塑剤などの化学物質と応力の影響でクラックが発生する現象である。

(次回へ続く)

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本間 精一(ほんま・せいいち)

三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数