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国内石油化学が再編に向けて動き出した:石油化学市場レポ

2024.06.10

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この記事では…

「減った需要はどこへ」と問うた、2024年の始まり。そして今、いよいよ国内石油化学メーカーが再編に向けて動き出した。

(執筆:柳本浩希/石油化学コンサルタント)


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⁠ナフサクラッカーのマージンが縮小してはや2年が経過し、以前の記事「2023年は苦境だった国内石化業界、 減った需要はどこへ?:石油化学市場レポ」で取り上げた通り、「生産の合理化は免れないものと想定」されていました。あれから4カ月が経ち、国内の需要は低迷した状況が続いていますが、早くも石化メーカーが合理化に向けてプレスリリースを発表しました。
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⁠2024年3月27日、出光興産と三井化学は2027年度を目途に千葉地区のナフサクラッカーについて三井化学側の装置へ統合に向けた協議を開始することを明らかにしました。両社は千葉地区で敷地が隣り合っているだけでなく、ポリオレフィンについて合弁でプライムポリマー社を運営しており、上流のナフサクラッカーにおいてもさらなる合理化を追求すべく企図したとうかがえます。
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⁠続いて同年5月8日には三菱ケミカル、旭化成そして三井化学が西日本のナフサクラッカーの運営について、カーボンニュートラルの面から協業していくことを明らかにしました。具体的な装置の統廃合といった点には言及しませんでしたが、東日本にも拠点を持つ三菱ケミカルや三井化学がわざわざ「西日本で」と限定している点は、やはりなんらかの生産能力最適化を図る意図をのぞかせます。三社共通のリリース文には「西日本に拠点を有する3社が地区を超えて連携することにより、エチレン製造設備、さらには各社の保有する石油化学製品のグリーン化をより迅速かつ効率的に進めようとするもの」と明記されました。
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⁠プレスリリースが実際に出たのは上記2件ですが、その他のナフサクラッカーを持つ企業の2025年の事業計画には、生産装置の合理化に向けた検討が明記されています。例えば、住友化学は国内石化事業の再構築を急ぐ姿勢を経営戦略説明会の中で明確にしており(図1)、足元では千葉地区を中心にナフサクラッカーやポリオレフィンの連携や統合に向けた協議が進行しているものと想定されます。同社は石化事業を管轄するエッセンシャル&グリーンマテリアルズ部門のコア事業について、「大型投資が必要な石油化学事業から技術ライセンス主体のソリューション事業へ」変革する旨打ち出しており、かなり思い切った転換を表明しています。
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図1 住友化学における国内石化事業の再構築について (出典:住友化学株式会社経営戦略説明会(2024年4月30日)資料44ページより抜粋)


⁠再編や合理化を急いでいるのは石油会社よりも石化会社と言えます。石油会社は石油製品の採算が良好に推移していることもあり、石化事業の赤字は石油と石化事業全体で十分吸収できていることから、設備をそのまま廃棄してしまうことについてはそれほど積極姿勢を示していません(共同で合理化を図る程度であれば前向きですが、事業そのものから撤退するインテンシブは低いという印象を受けます)。石油会社にとってはガソリンや灯油、軽油、ジェット燃料、重油などの採算が良いことから、副産物であるナフサやプロピレンなどを有効利用してくれる石化装置の存在がないと、コンビナートの運営が困難になるわけです。
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⁠今後の展開ですが、以下の表1に示した日本のナフサクラッカーの能力一覧から分かることは、千葉地区の集積が顕著ということです。基本的にはナフサクラッカーは千葉地区が今後の再編の渦となっていくことが想定されます。ポリオレフィンなど誘導品装置においては、千葉地区だけではなく西日本も巻き込んだ統合が出てきそうです。
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表1:日本のナフサクラッカーの能力一覧


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⁠一方、これまで石化再編後はアジアの石化相場が好転し、好景気に見舞われることがあり、想定外に国内の需給がバランスタイトとなることがありました。もちろん生産装置を停止したからこその「効用」といえるのですが、それだけではなく、周期的なマーケットの需給変化や原料である原油やナフサ相場の値位置の変化といった点によって、採算状況が変化したことも要因となりました。原油相場は足元でやや高値となっていますが、OPECプラスの減産体制に亀裂が入るようなことがあれば、再び急落することもあり得ます。リーマンショック後やシェール革命後、コロナショック後において、国産ナフサ価格にリンクした国内の石化製品価格は一時的に世界最安値となり、汎用グレードも含めて石化会社の供給が追い付かないほどに需要が回復し、国内需給はひっ迫した時期もありました。
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⁠需要家としては昨今のサプライヤーの採算悪化を背景に、国内の合成樹脂の供給能力低下とグレード統一リスクを抱えることになりますが、それ以上に、今後の石化の将来像とロードマップがないことに不安を覚えているといった生々しい声も聞こえてきます。再編や合理化による短期的な収益改善と株主還元はごもっともではありますが、もう少し目線を引いたうえで、カーボンニュートラルも交えながら、石化事業に対する新たな付加価値の創造に向けた取り組みについても今後は期待したいところです。

⁠⁠柳本 浩希(やなぎもと・ひろき)

⁠1985年生まれ。大学卒業後、総合化学メーカーに就職し、石化コンビナートの現場、ナフサの調達、合成樹脂の営業を経験。その後、ナフサ取引の仲介や情報誌の編集責任を務め、2026年5月に炭化水素リサーチ株式会社を創業(https://hc-r.co.jp/)。ナフサと石油化学業界必携のNaphtha Portalを立ち上げる。