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プラスチックの耐熱性(4)――熱劣化:プラスチック材料の基礎知識(24)

2024.06.19

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この記事では…

熱分解によってプラスチックの物性が低下する現象である熱劣化について説明する。

(執筆:本間精一/本間技術士事務所)

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熱と大気中の酸素の影響で熱分解が進行して物性が低下することを熱劣化という。

プラスチック製品を高温で長い年月使用し続けていると、もろくなり簡単に割れることがある。この原因は熱劣化によるものである。分子構造によって差はあるが、熱劣化すると、変色しつつ強度、特に衝撃強度が大きく低下する。荷重たわみ温度*が高いプラスチックが、熱劣化温度も高くなるとは限らないことに留意すべきである。

発熱源を内蔵する電気製品にプラスックを使用する場合には5~10年以上の熱劣化寿命が要求されるが、実用試験によって寿命時間を求めることは時間がかかるので現実的には困難である。熱劣化寿命はアレニウス(Arrhenius)プロットと呼ばれる方法で予測する。熱劣化によって物性値がある値まで低下する時間と絶対温度(摂氏温度+273℃)の間には次の関係がある。

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(1)

 ln:自然対数  tB:物性値がある値に達するまでの時間  A‘:定数
⁠ Ea:材料の活性化エネルギー  R:気体定数  T:絶対温度

式(1)から物性値がある値まで低下する時間tB(対数)と絶対温度の逆数(1/T)の間に正の勾配の直線関係があることが分かる。この関係を利用して、高温の短時間加速劣化試験から実用温度条件における寿命時間を予測できる。例えば、初期物性値が50%低下する半減時間を測定して、次の手順で熱劣化寿命を予測する。

① 高温の4熱処理温度(T1、T2、T3、T4)で加速熱劣化試験を行い、図1のようにそれぞれの処理温度における半減時間(t1、t2、t3、t4)を求める。

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図1 熱処理時間と物性値低下


⁠② 図2に示すように縦軸に半減時間tB(対数)を、横軸に処理温度の逆数(1/T)をグラフにプロットして実験線を決める。

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図2 アレニウスプロットによる熱劣化寿命予測


⁠③ 実験線を直線外挿して、初期物性値の半減時間を寿命時間としたときの上限実用温度を求める。


⁠米国の認証機関であるUL LLC(Underwriters Laboratories Limited Liability Company)は電気製品、部品および材料の安全規格の制定や認証試験を行っている。UL746Bでは上述の寿命予測法で相対温度指数(RTI:Relative Thermal Index)を求める試験法が規定されている。樹脂メーカーは自社材料についてULに申請してRTIを取得している。その場合、次の方法でRTIを求めている。

① コントロール材料(既認定材料)と試験材料について高温加速劣化試験を行う。図3に示すように、コントロール材料のRTIから試験材料のRTIを求める。

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図3 ULのRTIの求め方


⁠② コントロール材料がないときは、図2に示した直線外挿法によって10万時間に対応する温度をRTIとしている。

我が国の電気用品安全法の別表第11では「絶縁物の使用温度の上限値」を示している。プラスチック(有機材料)の上限値を表に示す。この上限値は各種プラスチックのRTIを基に作成した値である。電気製品の使用温度に対し、同表に示された上限値から適切なプラスチックを選定することができる。

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表 絶縁物(プラスチック)の使用温度の上限値(抜粋)


執筆者注*高温下における短時間、荷重下における指定たわみを示す温度をもとにした耐熱温度


⁠(次回につづく)


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本間 精一(ほんま・せいいち)

三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数