溶着や機械加工において加工面が融解した際の残留ひずみを熱ひずみと言う。今回は熱ひずみについて説明する。
残留ひずみはなぜ発生するか(3)――溶着や機械加工で発生する熱ひずみについて:プラスチックの強度(32)
2024.07.01
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(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
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熱ひずみは、溶着や機械加工において加工面が局部的に溶融すると、溶融層の熱収縮が非溶融層によって拘束されることで生じる残留ひずみである。プラスチックは線膨張係数が大きいので、溶融層が固化したのち室温まで冷却する時の熱収縮が大きい。
2次加工による溶着法には溶接、熱板溶着、高周波溶着、超音波溶着、回転摩擦溶着、振動溶着、レーザー溶着などがある。これらの溶着では、図1のように溶着面に熱または機械的エネルギーを与えて接触面付近のみを選択的に溶融させたのち、圧着して溶着する方法である。

図1 溶着加工の概念図
溶融層は固化したのち、室温まで冷却するにつれて熱収縮する。しかし非溶融層は熱収縮しないので熱収縮差によって熱ひずみが生じる。
熱収縮差は次式で表される。
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従って、式(1)から熱ひずみ ε は次式となる。
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熱ひずみによる残留応力(初期応力)は次式で表される。
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溶着による残留応力はストレスクラック 1)を発生させるほどの大きな値ではないが、溶着面からはみ出した樹脂に鋭角コーナがあると応力集中してクラックが発生することがある。溶着面が過度に溶融しないように加熱条件を調整するとともに、加圧力を適切に設定して溶融樹脂のはみ出しを少なくすることが必要である。
機械加工にはゲート仕上げ、切削加工、穴開け、切断、バフかけなどがある。切削加工の例を図2に示す。

図2 切削加工の概念図
加工条件が不適なときにはせん断熱や摩擦熱によって加工面が溶融温度まで上昇することがある。その場合には、式(2)に示したように溶融層と非溶融層の熱収縮差によって熱ひずみが生じる。表1に熱ひずみの発生原因と対策を示す。

表1 熱ひずみの発生原因と対策
機械加工による熱ひずみ(残留応力)はストレスクラックを発生させるほど大きな値ではないが、応力集中個所があるとストレスクラックが発生する。また、非晶性プラスチックでは、油類などが付着するとケミカルクラック 2)が発生することがある。表2にクラック発生事例と原因と対策を示す。(次回につづく)

表2 機械加工によるクラック発生事例
執筆者注
1) 成形品に一定のひずみを与えて時間が経過するとクラックが発生する現象である。
2) 応力と薬液の共同作用でクラックが発生する現象である。非晶性プラスチックに多く見られる。
(次回へつづく)
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数
