プラスチックの擦り傷の付きにくさを耐擦傷性と呼ぶが、統一された規格はない。
この記事では、耐擦傷性の評価方法を解説する。
表面硬さ(2)――耐擦傷性:プラスチック材料の基礎知識(26)
2024.07.31
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(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
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擦り傷の付きにくさを「耐擦傷性」と表現する。自動車、家電製品、事務用機器、携帯端末などのプラスチック外装部品では、耐擦傷性が良いことが求められる。擦り傷が付くと商品価値が低下し、透明品では透視性が失われるためである。
押し込み硬さ(ロックウェル硬さ、デュロメータ硬さ、バーコル硬さ)は硬さを表すが、耐擦傷性の指標にはならない。耐擦傷性は使い方によって傷の付き方が異なるので統一された規格がないのが現状である。
例えば、次の使い方で擦り傷が付くことがある。
① 自動車などにおけるワイパーの摺動(しょうどう)やサイドウィンドの開閉時に付く傷(摩耗傷)
② 雑巾やハンカチなどで拭いたときに付く傷(すり傷)
③ 砂塵などが当たって付く傷(打痕傷)
④ 鋭利なもので表面を引っかいたときに付く傷(引っかき傷)
そのため、表1に示すようにそれぞれ傷の付き方に近い試験法として、テーバー摩耗試験(注①)、スチールウール試験(注②)、落砂試験(注③)、引っかき硬度試験(鉛筆法)(注④)などで耐擦傷性を評価する方法が取られている。
試験前後の表面反射率や表面粗さの変化や表面傷の官能検査などで評価する。透明プラスチックでは全光線透過率低下や霞度(ヘイズ)(注⑤)増加で評価する。ただし、引っかき試験(鉛筆法)は鉛筆硬度で評価する。

表1 耐擦傷性の評価試験法
ポリカーボネート(PC)の耐擦傷性評価例について述べる。
PCは自動車のヘッドランプレンズや一部の窓ガラスに使用されているが、耐擦傷性が良くないという問題点がある。そのため、熱硬化性塗料のコーティング処理が行われている。表2はPC(透明品)およびコーティング品について各種耐擦傷性試験をしたときの霞度増加を相対比較した結果である(鉛筆硬度のみ硬度評価)(引用①)。

表2 PCの各種耐擦傷性試験による霞度増加
未コートPCは傷が付きやすいことが分かる。コーティング処理PCについてはテーバー摩耗やスチールウールのような硬いもので擦る試験では、以下の順で傷が付きにくいことが分かる。
ウレタン系塗膜<アクリル系塗膜<シリコーン系塗膜
一方、砂塵などが当たって付く打痕傷は、下記の順で傷が付きにくい結果になっている。
アクリル系塗膜<シリコーン系塗膜<ウレタン系塗膜
ウレタン系塗膜は打痕傷が付いても弾性回復することによると推定される。鉛筆硬さは基材の硬さを反映するので、塗膜の耐擦傷性を正確に評価できないようである。
注釈
- 注① 摩耗ホイールを回転させながら一定荷重をかけ、試料も回転させて摩耗を調べる試験
- 注② スチールウールに一定荷重をかけ、試料を擦って傷付きを調べる試験
- 注③試料を斜め45°にセットし、カーボランダム粉を一定の高さから落下させて傷付きを調べる試験
- 注④ 鉛筆芯に一定の荷重をかけ試料表面を引っかいて、傷が付かない最大鉛筆硬さを調べる試験
- 注⑤ 霞度(ヘイズ)=曇り度とも。散乱光線透過率÷全光線透過率であり、透視性を表す指標である。
引用文献
- 引用① 島岡悟郎「機能材料 1984年7月号」、P.30~39
(次回につづく)
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数
