PlaBase

3Dプリンターがあれば金型はいらないの?:ゼロから始めるプラスチック部品の試作・製作(3)

2024.09.02

Image

この記事では…

プラスチック部品の製作や試作を依頼するにあたって基本的な事項について解説する連載。第3回は、3Dプリンターと射出成形、切削加工について解説します。

(執筆:小林由美/facet,監修:泉 規靖/金森産業 PlaQuick)




⁠前回は、3Dデータや図面、部品表について、基本的なことについて解説しました。今回は、いよいよ「どうやって作るのか」――ものづくりの工法や選び方について解説します。

⁠「プラスチックの部品を作る」としたら、3Dプリンターを思い浮かべる方は多いと思います。それがどういうものであるのか、製造業にかかわりがなくても、おおよそ知っている方が多いのではと思います。この回では、3Dプリンターと射出成形、切削加工について説明します。

内容について:このシリーズは、部品加工や設計のことが分からない方向けに書いています。文系の学生さんなどでも解説の内容をイメージしていただけるよう、かなりかみ砕いた解説になっています。

3Dプリンターがあれば、金型いらないの?


⁠以前の3Dプリンターブームで、本当によく誤解されたのが、「3Dプリンターなら、スイッチポンで部品が出てくる」「金型工場が要らなくなるよね」ということでした。ものづくりを普段していない方を中心に、前回も紹介した「形状のデータをどう用意するのか」という視点がさっくり欠けている、あるいは3Dプリンターの加工機としての能力をずいぶんと過信しすぎてしまっていたことによります。「スイッチポン」は、あれから技術がかなり進化した今、一部分だけの機能についてなら本当ですが(しかし金型業界はそれとは別の理由で大変な状況になっています……)。

⁠ともかく3Dプリンターと、金型を用いた射出成形は違う方式の工法です。そのため加工機としての機能や能力が異なり、それぞれ得手不得手もあることには、技術が進化した今も変わりありません。


【3Dプリンター】
3Dプリンターは、ざっくり説明すれば、「材料を薄く積層していきながら形状を作る工法」です。熱溶解積層、光造形、粉末焼結など、さまざまな方式がありますが、考え方そのものは同じです。

⁠複数の薄い輪切りが縦に積み重なっていく様を想像してください。積みあがる過程で輪切りの形を少しずつ変化させながら、ところどころで凸凹となったような複雑な形状が作りやすいです。しかし「寸法精度を出す」という観点では不利で、特に層の部分はがたがたしやすそうというのは想像がつくかと思います。もちろん装置は安くなるほど、形の精密度が悪くなり、高価な装置ではなるべく表面がスムーズになるように制御したりします。



熱溶解積層式の3Dプリンターでの造形


⁠上の動画の方式は、熱溶解積層式で、数万~数十万円くらいの安価な価格帯で目立つ方式です(高価な機種にも熱溶解積層方式のものがあります)。動画を見ると分かると思いますが、積み上げ方向の表面がギザギザしているのが分かるかと思います。

⁠少しずつ積み上げるので、一般的に数時間程度以上の製作時間がかかります。作りたいものの高さがあり、要求する寸法精度が高くなるほど、時間がかかります(逆だと早くなります)。造形そのものが終わっても、「サポート」という造形のために作られる形状の除去など後処理が必要で、この時間も考慮しないといけません。

⁠しかし、3Dプリンターは後述する射出成形とは違い、訓練を受けた技術者でなくても扱えるため、自社で買えるのであれば、外部の加工工場に製作依頼を出す必要がなくなります。それであれば、数時間かかるのだとしても、工場にお願いするより「早く部品が作れる」といえます。

⁠3Dプリンターの材料は、ABSやPC、ナイロンなど、市場に広く流通するプラスチックの一部が使える機種があります。例えば、上の熱溶解積層式がそうです。しかしその選択肢は今も「豊富」とはお世辞にも言い難く、さらに高級な機種になるほど使用できるプラスチックが装置専用の材料になる(ABSと似た特性を持つ、その装置でしか使えないプラスチックなど)ことがよくあります。


【射出成形】
射出成形は、金型という型に、熱して溶けた樹脂を入れてから、金型を閉じて冷やした後に、部品を取り出すという工法です。チョコレートを作るのとだいたい同じ考え方です。


Image

射出成形の工程(「さまざまなプラスチックの成形方法」より)



⁠金型は、チョコレートを作る型のような「型そのもの」だけではなく、型を機械が自動で開け閉めするための機構も含まれる「機械」の一種です。

⁠射出成形は、専門の訓練を受けた技術者でないとできません。また金型の製作には材料費と合わせて設計や製作の手間がかかり、費用は高価になります。しかし一度作ってしまった後は、それで生産数する部品の単価としては非常に安くなります。1つの金型でいくつも部品が作れるようにすることも可能です。

⁠射出成形は、世の中にある熱で溶けるプラスチックなら大体対応する工法です(もちろん実際にうまく成形するには種類に応じて条件の調整が必要です)。そしてとても精密な部品が作れます。それは金属を削って金型を作る(切削加工で作る)からです。

⁠また、容易に想像は付くかと思いますが、型の壁が斜めになっていないと、部品が取り出しづらくなります。なので、設計する形状も、抜くときにつっかからない形状にします。「絶対に斜めにしたくない!」という場合には、金型の動きを複雑にする機構を入れるなどいろいろな技術で対処します。当然、その分で製作費用が高くなります。ちなみに3Dプリンターで作る場合は、上に積み上げるので、この配慮はいらないということになります。



【切削加工】
切削加工は、機械にセットされた刃物が材料を削って部品を作る工法です。人が彫刻刀で削り出すような作業を機械がやってくれます。上では、金型を作るための手段として少し出しましたが、プラスチックを直接削って部品を作る場合もあります。「それなら、金型ではなく、直接削ればいいのでは」となりそうですが、切削加工は射出成形ほどたくさんの量を一度に作れず、製作の手間もかかります。また、機械で削るときは摩擦熱が発生するので、加熱されると溶けたり変形したりしやすいプラスチックを削るには工夫が要ります。要するに製作費用が高くなります。そのリスクを取って製作するときは、射出成形だとほしい精度がどうしても出せない場合などがあります。

⁠また、切削加工は刃物を回転させ(方式によっては、刃物を傾けながら)、材料の上部から削るため、刃物の通り道や、刃先の形状などにより、作れる形状に制限があります。



⁠当然ながら、プラスチックの部品を作る手段は、それだけではありません。加工法の解説は次回以降も続きます。

Image

>>>>連載「ゼロから始めるプラスチック部品の試作・製作」一覧 


執筆者プロフィール

Image


⁠小林 由美
(こばやし・ゆみ)
⁠ライター、編集者。町工場でのトレースや設計補助、メーカーでの設計製造現場での実務を経験。後、大手メディアの編集記者として約12年間、技術解説記事の企画や執筆の他、広告企画および制作、イベント企画など、幅広く携わる。2020年5月に個人事業 facetとして独立。

監修者プロフィール

Image


⁠泉 規靖
(いずみ・のりやす)
⁠PlaQuick事業部/金森産業株式会社 東京営業所
⁠1993年金森産業株式会社入社。30年間、試作の業界に携わりながらm3Dデータを活用したモノづくりサービス『PlaQuick』のブランディングに従事する。趣味のサッカー、スノーボードともに指導者の資格を所得して高校/大学サッカー、Jクラブ、海外クラブとの関係づくりも構築。富山県出身。

PlaQuickについて(金森産業)

試作から量産までプラスチック・樹脂の成形の課題をトータルサポート。簡易見積もりは入力後約30秒。図面はなくても大丈夫! 納期は最短5営業日とQuickなものづくりサービス。
⁠⁠URL:https://www.plaquick.com/

⁠泉 規靖(いずみ・のりやす)

PlaQuick事業部/金森産業株式会社 東京営業所

⁠1993年金森産業株式会社入社。30年間、試作の業界に携わりながらm3Dデータを活用したモノづくりサービス『PlaQuick』のブランディングに従事する。趣味のサッカー、スノーボードともに指導者の資格を所得して高校/大学サッカー、Jクラブ、海外クラブとの関係づくりも構築。富山県出身。