プラスチック製品のケミカルクラックについて解説する。
プラスチック製品の割れトラブル(2)――ケミカルクラックによる割れトラブル:プラスチックの強度(34)
2024.09.18
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(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
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ケミカルクラックが原因で割れトラブルになるケースは多い。ケミカルクラックは大きなクラックが発生するので、割れトラブルに直結しやすい。
ケミカルクラックは応力と薬液の共同作用で発生するクラックである。表にケミカルクラックによる割れトラブル例を示す。

表 ケミカルクラックによる割れトラブルの例
ケミカルクラックによる割れトラブルは、メタクリル樹脂(PMMA)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)、ポリカーボネート(PC)などの非晶性プラスチックで起こりやすいことが分かる。
結晶性プラスチックは限られた薬液のみでケミカルクラックが発生するので、設計開発段階で防止対策を立てやすい。一方、非晶性プラスチックはいろいろな薬液で発生するので予測ができず使用段階で思わぬ割れトラブルに遭遇することが多い。薬液の化学成分が明確な時は過去の試験データから予測できるが、次のケースでは予測が困難である。
① 接触する相手材の中に含まれる化学成分がプラスチック製品側に移行してケミカルクラックを発生させる(表中のポリ塩化ビニルに含まれる可塑剤の例)。
② 薬液に含まれる化学成分の1つがケミカルクラックを発生させる(表中の切削油や防錆油の例)。
設計開発段階でケミカルクラックの発生が懸念される時には,それぞれの薬液についてケミカルクラック試験を行う必要がある。ケミカルクラック試験法の例を図に示す。

図 1/4楕円(だえん)法によるケミカルクラック試験法
同法は1つの試験片でひずみを変えて試験できるという利点がある。1.0mm厚シート状試験片を1/4楕円(だえん)治具に取り付けて引張ひずみを発生させる。薬液に浸漬または塗布してクラックの発生位置(X1)を測定する。上図に示すようにクラックの発生位置(X1)から引張ひずみεを求める。
次式に示すように、εから引張応力σを推定できる。
σ=E×ε
σ:引張応力(MPa) E:ヤング率(MPa) ε:引張ひずみ(単位なし)
試験結果から、ケミカルクラックが発生する可能性が高い時には次の対策を行う。
① ケミカルクラックが発生しにくい薬液に変更する。
② 成形条件を見直して残留応力を低減する。
③ ②の対策で低減できない時にはアニール処理をする。
④ ケミカルクラックが発生しにくいプラスチックに材料変更する(例えば、結晶性プラスチック、ガラス繊維強化プラスチックなど)。
(次回につづく)
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数
