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プラスチックの寸法安定性:プラスチック材料の基礎知識(28)

2024.10.23

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この記事では…

プラスチックの寸法安定性について解説する。

(執筆:本間精一/本間技術士事務所)

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精密部品にプラスチックを用いる場合、製品性能を維持するには寸法安定性が優れていることが必要である。寸法安定性には次の材料特性が関係する。

⁠①吸水率
成形直後の成形品は水分を含まない絶乾状態(編集部注:絶対乾燥状態の略称)であるが、時間が経過すると大気中の湿気を吸水する。プラスチックは吸水すると寸法が膨張する。逆に、低湿度の環境で使用し乾燥すると寸法は収縮する。プラスチックの吸水率は分子構造によって異なる。表1に示すようにポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などは低いが、ポリアミド6(PA6)は高いことが分かる。吸水率が高いプラスチックほど吸水による寸法変化が大きくなる。

表1 プラスチックの吸水率

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②線膨張係数
プラスチックの線膨張係数は6.0×10-5~20.0×10-5(mm/mm)/℃と大きいので、環境温度が変動すると寸法が変化する。寸法変化は次式で表される。

 ΔL=L×α×ΔT      (1)

  ΔL:寸法変化(mm)L:成形品寸法(mm)  α:線膨張係数((mm/mm)/℃)

  ΔT:温度変動(℃)

また、部分的な温度差があると熱膨張差による変形やそりが発生する。


⁠③弾性率
荷重変形には材料の弾性率が関係する。例えば、片持ちはりの先端に集中荷重を加えたときの曲げたわみは次式で表される。

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式(2)から曲げ弾性率Eが低いと曲げたわみδは大きくなることが分かる。


⁠④後結晶化
結晶性プラスチックは成形時に十分結晶化させないと、成形後に後結晶化(2次結晶化)が起きる。後結晶化すると寸法が収縮する。

後結晶化には成形時の金型温度の影響が大きい。図1はポリアセタール(POM)を用いて、金型温度を変えて成形した試験片を75℃で熱処理したときの加熱収縮率である(引用文献 注1)。金型温度が低いと加熱収縮率は大きくなることが分かる。


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図1 75℃熱処理による加熱収縮率(材料POM)


⁠寸法安定性を要求されるカメラ部品にガラス繊維強化ポリカーボネート(GF強化PC)を使用した例を紹介する。図2にカメラ部品の成形品例を示す。

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図2 カメラ部品の応用例(イメージ)


⁠カメラ部品では寸法安定性が良くないとカメラ性能が低下する。表2に、PCとGF20wt%強化PCの吸水率、線膨張係数、曲げ弾性率の比較を示す。GF20wt%強化PCは吸水率が低い、線膨張係数が小さい、弾性率が高いなど、寸法安定性が優れているのでカメラ部品に採用された。

GF充填率を高くすれば寸法安定性はさらに良くなるが、成形性や製品外観(ガラス繊維の表面浮き)に課題があるためGF20wt%強化PCが使用されている。⁠

表2 PCとGF20wt%強化PCの寸法安定特性比較


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⁠引用文献

1)三菱エンジニアリングプラスチックス、ユピタール技術資料設計編、p.16(1994)


⁠(次回につづく)

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本間 精一(ほんま・せいいち)

三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数