機械製図の実務を行う上で基本となることを解説。今回は、円弧や穴の寸法補助記号について解説。
穴や円弧の寸法の表し方(パート2) :機械製図道場(入門編14)
2024.10.16
今回の記事は…
(執筆:土橋美博/スワニーCIO、3D CAD推進者)
>>前回
円弧の描き方
円弧を構成する角度が大きい場合、連続して円弧の寸法を記入するには、円弧の中心から放射状に引いた寸法補助線に寸法線を当てても良いとなっています。
このとき、2つ以上の同心の円弧のうち、1つの円弧の長さを明示する必要がある場合には、次のいずれかの方法により記入します。
方法その1
円弧の寸法数値に対し、引出線を引き、引き出された円弧の側に「矢印」を付けます(図1)。

図1 「ZW3D」による3D図面と円弧の長さを図示した2D図面の例
方法その2
円弧の長さを表す寸法数値の後に、円弧の半径を「括弧(かっこ)」に入れて示します。
この場合、円弧の長さに記号を付けてはいけません(図2)。

図2 「ZW3D」による3D図面と円弧の長さを図示した2D図面の例
穴の寸法の表し方いろいろ
次は、穴寸法です。詳しくは「JIS B0001:11.7 穴の寸法の表し方」に規定されていますが、項目が多いのでポイントだけ紹介しましょう。
穴の加工方法による区別
工具の呼び寸法または基準寸法、加工方法の区別を加工方法の用語あるいは加工記号により記入します。なお、加工方法記号は「JIS B 0122:1978 加工方法記号:Symbols of metal working processes」よって規定されています。

表1 穴加工方法の簡略表示
よく使用される「キリ」と「Φ(ファイ)」ですが、Φの使い方はJISに規定されています。
直径Φの使い方
●円形の直径の寸法を記入する際、寸法線の両端に端末記号が付く場合は直径記号「Φ」を使用しなくてもよいと、JISに規定されています。また、円形の一部を欠いた図形で寸法線の端末記号が片側の場合は、半径寸法と誤解しないように直径記号Φを記入します。
●引出線を用いて記入する場合には直径記号を記入しますが、明らかに円形になる加工方法が併記されている場合は直径記号を記入しません。
キリは指定したサイズのドリルを使用して穴加工をします。
例えば、「10キリ」であれば「Φ10mmのドリルを使用して穴開けをする」という指示になります。このΦ10mmのドリルで穴を開けるということは、Φ10mmの穴が保証されているわけではありません。一方、Φは加工後の穴の直径を指示しているので、意味合いが異なります。
1つのピッチ線、ピッチ円上に配置される一群の同一寸法
穴から引出線を引き出して、参照線の上側にその総数を示す数字の次に「×」を挟んで穴の寸法を指示します。(図3)

図3 一群の同一寸法の図示例( 「ZW3D」による3D図面と2D図面の例)
穴の深さ
穴の直径を示す寸法の次に、穴の深さを示す記号に続けて深さの数値を記入します(図4)。貫通穴の場合、穴の深さを記入しません。また、深さの定義については、ドリルの先端の円すい部分、リーマの先端の面取り部分を含まない円筒部の深さとなります。

図4 穴の深さ(ZW3D」による3D図面と2D図面)
ざぐり
ざぐりを付ける穴の直径を示す寸法の前に、ざぐりを示す記号「☆(注2)」に続けてざぐりの数値を記入します。なお、2010年のJIS改正により「穴とざぐりの表記は直列または並列に表記してもよい」となりました(図5)。

図5 ざぐり穴の指示方法(ZW3D」による3D図面と2D図面)
穴寸法の記入方法は、企業ごとのルールや、使用しているCADにより、表示内容が異なる場合があります。これらもJIS規格を確認することで、標準を理解することが可能となり、またその解釈や改正内容を再認識することが可能ですので、皆様も折を見てJISに目を通しておくとよいと考えます。
次回は、「機械要素」について解説します。製図道場入門編も、そろそろ終わりが近づいてきました。その後は、いよいよ応用編が始まります。ご期待ください。
(次回へ続く)
土橋 美博(どばし・よしひろ)
3D CAD推進者。1964年生まれ。25年間、半導体組み立て関連装置企業でメカ設計・営業・3D CAD推進に従事。2014年にフラットパネルディスプレイ製造装置を主に開発設計製造を行う企業に入社。これまでの3次元CADの経験を活かした現場発信のデジタルプロセスエンジニアリング推進活動を行いながら、CAEも担当。長野県南信工科短期大学校で非常勤講師として機械設計製図の教育も行っている。

