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現在の製造業の設計業務でのCAEの意義:CAEと有限要素法(1)

2024.10.21

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この記事では…

CAEの意味をはじめ、CAEの概要を見た上、本題の現在の製造業の設計業務でのCAEの意義について説明します。

(執筆:武藤一夫/株式会社武藤技術研究所 代表取締役 博士(工学))


本稿では、現在の製造業の設計業務でのCAEの意義について見ていきますが、その前に、CAEの基本事項を確認します。まず「CAEとは」ということで、CAEの意味をはじめ、CAEの概要を見た上、本題の現在の製造業の設計業務でのCAEの意義について説明します。


⁠CAEとは


CAE(シーエーイ)とは、Computer Aided Engineeringの略で、直訳すると「コンピュータ支援による工学」です。つまり「コンピュータ支援による工学技術における解析および評価システム」のことです。日本工業規格のJIS B3401 (CAD用語)では、「CAD の過程でコンピュータ内部に作成されたモデルを利用して、各種シミュレーション、技術解析など工学的な検討を行うこと」と定義されています。今回は、一般的なモノづくりの流れの例を示しながら、CAEの位置付けについて説明します。


モノづくりの流れ(CAEの位置付け)とCAE工程の流れの概要

図1では、一般的なモノづくりの流れ(工程)の一例を示しています。ここでは、CAD、CAE、CAM、CATという工程がひとつながりになって、図1で示した順番で行われます。

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図1 モノづくりの流れ(工程)におけるCAEの位置づけ


モノづくりの工程の中では、CAEは単独で存在しません。CAD工程の後、CAM による製品製作の前にあります。上記のCAEの定義における「CAD の過程でコンピュータ内部に作成されたモデルを利用して」というのはそういう意味となっています。

CADについては脚注で説明しましたが、図1に示したように、CAD工程では、まず、企画製品の外観をデザインする意匠設計があり、次に機構や細部を作る製品設計となります。今回の例では、デザインをもとに基本設計してデザインモデルを作り、詳細設計を進める流れになっています。詳細設計が終わると、金型設計を行います。主に詳細設計されたCADデータをCAE工程に取り込んで、工作機械の加工プログラムを作るということになります。

⁠CAE工程には、そのCADデータを取り込む作業と、解析用のメッシュデータ(コンピュータが計算をするためにモデルを格子状に分割したデータ)作成を行うプリプロセッサ、そのメッシュモデルを使って解析計算するソルバ、その計算結果を人間が理解できるように計算結果を数値や画像で表示するポストプロセッサがあります。CAEにより、各種シミュレーション、技術解析など工学的検討を行うことができるわけです。

⁠例えば、図2に示すように、CAEによるエンジンのクランクシャフトとピストンとの連結に使われるコンロッドの構造・強度解析の流れについて見てみましょう。

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図2 CAEによるエンジンに使われるコンロッドの構造・強度解析の流れ


⁠ここでの目的は、コンロッドの構造物としてのウィークポイント(弱点)はどこかを突き止めることです。コンロッドには、クランクシャフトとピストンから繰り返しの外力(引張力)がかかります。この時に、その負荷によってコンロッドのどの部分に変形やひずみなどの物理現象が生じるのか、構造的、あるいは強度的な指標に基づいてシミュレーション解析しようとするものです。

まずCAD工程でコンロッドの3D CADモデルを作成します。この3D CADモデルは「ソリッドモデル」です⁠⁠。⁠次に、コンロッドの3D CADモデルをCAEのプリプロセッサに取り込みます。そこでメッシュデータを作成します。そして解析条件(境界条件や材料定義)などをインプットします。そのデータをソルバに送り、コンピュータ上で技術的な演算や計算、シミュレーション、そして解析を行います。

⁠ポストプロセッサでは、コンロッドの構造・強度解析結果の表示をします。図2(一番右の図)では、赤色の部位を強度が弱い、危険が高い(※)ことを示していますので、解析結果からは、両端の円筒部とロッドの端のつながっている接続部分が危険であるということが分かります。⁠

⁠図2では、エンジンに使われるコンロッドに外力をかけた時に、コンロッドのどの部分に変形やひずみなどの物理現象が構造的に、強度的に発生するのか否かについて見ましたが、このほかCAEのソフトウェア(プログラムの集合体)にはいろいろあります。

CAEで解析が行える物理現象はいろいろありますので(記事末の用語集を参照)、解析しようとする物理現象によって適したCAE(計算)プログラムや解析方法を選ぶ必要があります。つまり、CAEのソフトウェアは種々の物理現象ごとにあるということになります。

⁠※これは分かりやすくするための表現で、実際は、ソフトウェア上の設定や計算結果によって色分けが異なるので、危険値かどうかの評価は色そのもので評価するわけではありません。

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>>連載「CAEと有限要素法」一覧

用語集

CAD(キャド):
Computer Aided Designの略で、「コンピュータ支援による設計」という意味です、日本工業規格のJIS B3401 CAD用語では、「コンピュータの内部に表現されたモデルに基づいて,生産に必要な各種情報を生成すること.及びそれに基づいて進める生産の形式」と定義されています。

モデル(model):
日本工業規格のJIS B3401 CAD用語では、「ある対象から、当面する問題に必要なデータを抽出し,その対象を表現したもの」と定義されています。しかし情報技術におけるモデルとは、3Dコンピュータグラフィックス上の3D空間内にある物体のコンピュータ上における表現です。また、データモデル、すなわちデータやデータベースの構成方法を表現するものです。ものづくりでのCAEではソリッドモデルを読み込むことが多いです。
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CAM(キャム):
CAMは、Computer Aided Manufacturingの略で、コンピュータ支援による加工・組立などの製造・生産という意味。日本工業規格のJIS B3401 CAD用語では,「コンピュータの内部に表現されたモデルに基づいて、生産に必要な各種情報を生成すること、及びそれに基づいて進める生産の形式」と定義されています。[1]製品設計(product design)とは、期待する製品の性能を発揮させるために、構成部品の機能・形状とそれらの関連を決める活動。一般に構成部品リスト、部品図、組立図によって示す。(JIS Z8141生産管理用語)

シミュレーション(simulation):
現実の状況や現象で働いている法則を推定・抽出し、それを真似るようにして組み込んだモデル、模型、コンピュータプログラムなどをコンピュータ上で再現し、その挙動を観察・分析する手法です。現実の状況や現象を確かめることが困難、不可能、または危険である場合にシミュレーションが用いられまする。具体的な事象やシステムの振る舞いを分析・解析して,数値やグラフで表現し、未来の予測や問題解決に役立てます。シミュレーションは、物理学や化学、経済学、社会学など、多岐にわたる分野で利用されています。シミュレーションには、天候の予報、建築物の耐震性評価、経済の動向予測など、現実の問題を解決するための具体的な例があます。また、ビデオゲームやVR(仮想現実)などのエンターテイメント分野でも、現実世界を再現するためにシミュレーションが用いられます。シミュレーションのための装置やプログラムをシミュレータ (simulator) といいます。
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ソフトウェア(Software):
本来、柔らかいものという意味です。人間で例えると頭脳の中の脳みそに相当するもので、あるシステムを稼働させるプログラムおよびその技術を指します。ここではコンピュータを動かす命令語の集合のプログラムを指します。「ソフト」と略されます。これの反語は,ハードウェア(Hardware)です。


⁠(次回へ続く)


参考・引用文献

  1. 「エンジニア必携トヨタに学ぶデジタル生産・事例・用語集」(産業図書:2021年12月)武藤一夫・著
  2. 「図解CAD/CAM入門」(大河出版:2012年8月)武藤一夫・著
  3. 「進化しつづけるトヨタのデジタル生産システムのデジタルのすべて」(技術評論社:2007年12月)武藤一夫・著
  4. 「実践メカトロニクス入門」(オーム社:2006年6月)武藤一夫・著
  5. 「はじめてのCAD/CAM」(工業調査会:2000年2月)武藤一夫・著
  6. 「実用CAD/CAM用語辞典」(日刊工業新聞社:1998年6月)武藤一夫・著
  7. ウィキペディア

武藤 一夫(むとう・かずお)

株式会社武藤技術研究所 代表取締役、博士(工学)。

⁠1982年以来、職業能力開発総合大(旧訓練大学校)に約29年、静岡理工科大学に4年、豊橋技術科学大学に2年、八戸工業大学大学に8年、合計43年間大学教員。7年前に起業して、現在、株式会社武藤技術研究所代表取締役社長。AEセンシングとそのセンサー開発、特にデジタル式音響コム型AEセンサーの開発・販売、また企業の技術支援・技能伝承を含むコンサルティングをしています。これまで、トヨタ自動車をはじめ世界のフォード、クライスラ、GM、ダイムラーベンツ、BMW、アウディ、ヒュンダイなどを訪問をしました。多くの企業での招待講演、R&D支援センターをはじめとしたセミナー講演、マツダ系のテアワンなど多くの企業でコンサル・顧問などを従事。著書は機械加工、計測、メカトロ、金型設計・加工、CAD・CAE・CAM・CAT・Network、デジタルマニュファクチャリング、辞書など著書32冊。学術論文58件、計測工学や実装技術などの専門雑誌300件以上。厚生労働省の技能審議会委員・検定委員。自動車技術会編集委員等歴任。自動車技術会フェロー。⁠