プラスチックのアニール処理について説明する。
アニール処理の原理とアニール条件:プラスチックの強度(36)
2024.12.02
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(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
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アニール(anneal)処理またはアニーリング(annealing)の日本語は「焼きなまし」である。「焼きなまし」は金属加工品を高温で熱処理したのち、徐冷して内部応力を除去する方法である。プラスチックにおいても類似の方法で残留応力を低減するのでアニール処理またはアニーリングと称している。
大きな残留応力が残っているとクラック、寸法変化、そりなどの不具合が生じる。製品設計や成形条件の調整で残留応力を低減できないときには、成形後にアニール処理する方法が取られる。
成形直後の残留応力は時間経過につれて小さくなる特性がある。この特性を応力緩和と称している。図1に応力緩和の概念図を示す。

図1 残留応力の緩和概念図
プラスチックは温度が高くなるほど応力緩和しやすくなり、残留応力は小さくなる。ただ、実用温度範囲においては温度を高くしても残留応力は0になるわけではない。すなわち、不具合が生じないレベルに残留応力を低減することがアニール処理の目的である。
また、アニール温度は高いほど残留応力の応力緩和効果は大きいが、高くし過ぎると成形品が熱変形するので、変形しない上限温度でアニール処理をしなければならない。
非晶性プラスチックと結晶性プラスチックでは、アニール温度の設定に違いがある。非晶性プラスチックではガラス転移温度より20℃~30℃低い温度、または荷重たわみ温度(1.80MPa)より5℃~10℃低い温度で処理するのが一般的である。この温度はアニール処理するときに成形品が変形しない上限温度を目安にしている。
結晶性プラスチックは残留応力によるクラックは発生しにくいが、成形時に十分結晶化していないと後結晶化による寸法変化やそりなどが発生しやすい。寸法を安定させるためにアニール処理することが多い。
その場合には、製品の使用温度の上限より10℃~20℃高い温度でアニール処理するのが一般的である。厚肉成形品で大きな残留応力が残っている場合には、結晶化温度でアニール処理する。
図2に示すように、アニール時間はアニール温度までの昇温時間と応力緩和時間の和である。

図2 アニール時間の概念図
成形品の厚みが厚いと昇温時間t1は長くなる。一方、応力緩和時間t2は厚みによらず比較的短時間で緩和する。一般的には厚み2mm~3mm以下の成形品ではアニール時間t(=t1+t2)の目安は2時間~3時間である。
厚みが厚くなるほど昇温時間t1が長くなるので、アニール時間tを長くしなければならない。ただ、結晶性プラスチックについては、それぞれのプラスチックの結晶化速度や成形後の結晶化度に左右される。結晶化速度が遅いプラスチックや結晶化度が低い場合には、アニール温度を高めにして結晶化を促進する、またはアニール時間を長めにしなければならない。
(次回につづく)
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数
