CAEソフトウェアのプログラムの1つである有限要素法について解説します。
有限要素法のプログラム:CAEと有限要素法(2)
2024.11.20この記事では…
(執筆:武藤一夫/株式会社武藤技術研究所 代表取締役 博士(工学))
前回は、「現在の製造業の設計業務でのCAEの意義について」の前に,CAEの基本事項として、まず、CAEとは何か、モノづくりの流れ(CAEの位置付け)、CAE工程の流れの概要について述べました。今回は、CAEソフトウェアのプログラムの1つである有限要素法について解説します。
今日のCAEソフトウェア(以下、ソフトと略す)であるプログラムの種類には、大きく分類すると、「差分法」「有限要素法」「境界要素法」があります。現在、CAEプログラムの主流は有限要素法です。よって、本連載においても、CAEのプログラム手法として有限要素法を中心に取り扱います。
プログラム(Program):
通常はコンピュータに行わせる処理を直接操作できるようにした言語およびフォーマットで順序付けられた命令群のこと。JIS情報処理用語−基本用語X 0001-1994では、「アルゴリズムの記述に適した人工言語の規則に従った構文上の単位であって、ある機能若しくは仕事の遂行又は問題の解決のために必要な宣言と文若しくは命令とから構成されるもの」と定義。アルゴリズム(Algorithm)とは、算法と訳され、問題を解くためのものであって、明確に定義され、順序付けられた有限個の規則からなる集合。
有限要素法のプログラム
有限要素法の基となるプログラムは、建築や機械の設計分野で使われる梁や軸などの構造物を解析する「マトリックス変位法」です。
マトリクス変位法(matrix displacement method):
マトリクス(行列)演算を基本として、構造物の応力、変形の解析を行う方法。任意形状の構造物を機械的に解析することが可能であり、コンピュータの能力を十分に活用することができる。
このマトリックス変位法の基本的な原理は、複雑な微分方程式を離散的に展開、つまり連立1次式のマトリックスに分解して解を得る数学的手法です。
例えば,数値計算で連立方程式を解く方法として、「ガウス=ジョルダン法」(Gauss Jordan Method)では、大体次のようになります。
a, bを係数,xを変数とした1次方程式の個数がともにnであるような連立1次方程式は次式(1)に示すように表されます。

式1を1つの級数で表しますと、下記(式2)になります。

さらに式2をマトリックス(行列)で表しますと、式3のようになります。

式3左辺の最初の項を「係数行列」といい、係数行列が単位行列(対角要素,ピボット(pivot))が1になるように計算を繰り返して演算して、最終の行列のn列の各値が解となります。
なお、この数学的手法は1700年代に活躍した物理学者や数学者たちが発表した論文や著作にさかのぼることができます。
次回は、有限要素法を中心としたCAE小史について取り上げます。
(次回へ続く)
参考・引用文献
- 「エンジニア必携トヨタに学ぶデジタル生産・事例・用語集」(産業図書:2021年12月)武藤一夫・著
- 「図解CAD/CAM入門」(大河出版:2012年8月)武藤一夫・著
- 「進化しつづけるトヨタのデジタル生産システムのデジタルのすべて」(技術評論社:2007年12月)武藤一夫・著
- 「実践メカトロニクス入門」(オーム社:2006年6月)武藤一夫・著
- 「はじめてのCAD/CAM」(工業調査会:2000年2月)武藤一夫・著
- 「実用CAD/CAM用語辞典」(日刊工業新聞社:1998年6月)武藤一夫・著
- ウィキペディア
武藤 一夫(むとう・かずお)
株式会社武藤技術研究所 代表取締役、博士(工学)。
1982年以来、職業能力開発総合大(旧訓練大学校)に約29年、静岡理工科大学に4年、豊橋技術科学大学に2年、八戸工業大学大学に8年、合計43年間大学教員。7年前に起業して、現在、株式会社武藤技術研究所代表取締役社長。AEセンシングとそのセンサー開発、特にデジタル式音響コム型AEセンサーの開発・販売、また企業の技術支援・技能伝承を含むコンサルティングをしています。これまで、トヨタ自動車をはじめ世界のフォード、クライスラ、GM、ダイムラーベンツ、BMW、アウディ、ヒュンダイなどを訪問をしました。多くの企業での招待講演、R&D支援センターをはじめとしたセミナー講演、マツダ系のテアワンなど多くの企業でコンサル・顧問などを従事。著書は機械加工、計測、メカトロ、金型設計・加工、CAD・CAE・CAM・CAT・Network、デジタルマニュファクチャリング、辞書など著書32冊。学術論文58件、計測工学や実装技術などの専門雑誌300件以上。厚生労働省の技能審議会委員・検定委員。自動車技術会編集委員等歴任。自動車技術会フェロー。


