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CAE小史――CAEを提唱したSDRC:CAEと有限要素法(3)

2024.12.09

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この記事では…

CAEを提唱したSDRCの歴史についてお話しします。

(執筆:武藤一夫/株式会社武藤技術研究所 代表取締役 博士(工学))

⁠⁠⁠「CAE(Computer Aided Engineering)」という概念は、3D CAD を開発していた米SDRCの創設者であるジャック・レモン(Jack Lemmon)氏により1970年後半から1980年にかけて提唱されたのが最初とされています。

SDRCが提唱したCAEの概念は、「コンピュータにインストールしたCAEソフトを使用してエンジニアリング」を行うということです。その概念で重要なのは、エンジニアリングにおける計算プログラムそのものではなく、「製品の性能予測をする」ということを示す点です。

この頃には、3D CADを用いたコンピュータ技術による設計が大手の航空機メーカーや自動車メーカーを中心に行われるようになり、その中でCAEも徐々に広まっていきました。

CAEの起源

SDRC(Structural Dynamics Research Corporation、読み方は「エスディアルシー」)はかつて米国オハイオ州ミルフォードに本社がありました。SDRCは1967年に、当時シンシナティ大学の博士であったレモン氏が率いるエンジニアによって、構造力学や機械部品の振動解析を専門とするコンサルティング会社として設立されています。

同社の提唱していたCAEは、設計開発の初期段階で数学的なモデルを作り、出来上がる製品の性能をコンピュータで予測して設計の最適化を行うことを目的としたものでした。

同社が1970年代に発表した「MCAE」(Mechanical Computer Aided Engineering)という概念がCAEの起源です。その後の同社は、「NURBS(Non-Uniform Rational B-Spline:非一様有理Bスプライン)」や自動3次元メッシュなどを独自開発しています。

SDRCは1982年にComputer Aided Design(コンピュータ支援設計)、つまりCADの ソフトウェアパッケージ「I-DEAS(Integrated Design Engineering Analysis Software)」を発表しました。これらは主に自動車業界、特にFord Motor CompanyおよびGeneral Motorsで使われていました。

1997年に廉価版 I-DEAS である「Artisan Series」が出荷されています。基本モジュールとして3次元ソリッドモデリング機能、干渉チェック機能、公差・機構解析機能,製図機能、プロッタ出力、データ変換機能など今日の3D CADにも含まれる機能が実装されました。

2001年にSDRCにとっての競合他社であったEDS(Electronic Data Systems)に買収されました。さらにEDSはUGS を買収し、2社の製品を3D CADの「NX」に統合しています。さらに2007年には、UGSはSiemensに買収され、Siemens PLM Softwareとなりました。CAEはNXのソフトウェアの1つとして提供されています。

このようなSDRCがたどった歴史のように、CADやCAEを開発するソフトウェア開発企業は1970年代から今日にかけて買収や統廃合がなされながら、市場が寡占化していきました。

たとえ開発した企業の名前がなくなっても、彼らが提唱した概念や開発したプログラム自身は今日流通するソフトウェアの血となり骨となり生き続けているのです。

(次回へ続く)

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>>連載「CAEと有限要素法」一覧

参考・引用文献

  1. 「エンジニア必携トヨタに学ぶデジタル生産・事例・用語集」(産業図書:2021年12月)武藤一夫・著
  2. 「図解CAD/CAM入門」(大河出版:2012年8月)武藤一夫・著
  3. 「進化しつづけるトヨタのデジタル生産システムのデジタルのすべて」(技術評論社:2007年12月)武藤一夫・著
  4. 「実践メカトロニクス入門」(オーム社:2006年6月)武藤一夫・著
  5. 「はじめてのCAD/CAM」(工業調査会:2000年2月)武藤一夫・著
  6. 「実用CAD/CAM用語辞典」(日刊工業新聞社:1998年6月)武藤一夫・著
  7. ウィキペディア

武藤 一夫(むとう・かずお)

株式会社武藤技術研究所 代表取締役、博士(工学)。

⁠1982年以来、職業能力開発総合大(旧訓練大学校)に約29年、静岡理工科大学に4年、豊橋技術科学大学に2年、八戸工業大学大学に8年、合計43年間大学教員。7年前に起業して、現在、株式会社武藤技術研究所代表取締役社長。AEセンシングとそのセンサー開発、特にデジタル式音響コム型AEセンサーの開発・販売、また企業の技術支援・技能伝承を含むコンサルティングをしています。これまで、トヨタ自動車をはじめ世界のフォード、クライスラ、GM、ダイムラーベンツ、BMW、アウディ、ヒュンダイなどを訪問をしました。多くの企業での招待講演、R&D支援センターをはじめとしたセミナー講演、マツダ系のテアワンなど多くの企業でコンサル・顧問などを従事。著書は機械加工、計測、メカトロ、金型設計・加工、CAD・CAE・CAM・CAT・Network、デジタルマニュファクチャリング、辞書など著書32冊。学術論文58件、計測工学や実装技術などの専門雑誌300件以上。厚生労働省の技能審議会委員・検定委員。自動車技術会編集委員等歴任。自動車技術会フェロー。⁠