JIS製図の幾何公差について一から解説。今回は「平面形体の位置度」について説明する。
平面形体の位置度:機械製図道場(中級編14)
2026.01.19
この記事では…
(執筆:土橋美博/スワニーCIO、3D CAD推進者)
前回は「直線形体の位置度」について説明をしました。今回は、「平面形体の位置度」をはじめに説明を続けます。
2. 平面形体の位置度
【公差域の定義】
平面形体の位置度は、理論的に正確な位置にある幾何学的平面に対して対称な幾何学的平行2平面でその平面形体(P)を挟んだときの、2平面の間隔(f)で表す。
【口語訳】
設計上ここにあるはずの理想の平面を真ん中にして、その両側に同じだけ離した2枚の平行な平面を置き、その2枚の平面の間隔(f)の中に実際にできた平面(P)が全部収まっていればOK、
という考え方です。

図1 平面形体の位置度
筆者はこの「平面形体の位置度」と「輪郭度」また「平面度」は何が違うのだろうかと考えました。
この3つはすべて「面」を対象にしていますが、見ている視点(管理したいこと)がまったく違うのだと考え以下の表のように解釈しています。
項目 | 平面の位置度 | 面の輪郭度 | 平面度 |
管理するもの | 位置 | 形状 | 平たさ |
基準 | データム・PT | 理論的輪郭 | なし(自己完結) |
他の面との関係 | あり | 場合による | なし |
面のうねり | 基本的に不問 | 管理する | 管理する |
面の位置 | 管理する | 場合による | 管理しない |
重要なことは管理するものが「位置」であることだと考えます。
なお、「理論的輪郭」と「理論的に正確な平面」(PT:Tは下付き文字)は、どちらも “設計上の理想”を表しますが、
その役割は同じなのでしょうか。

……というように筆者は解釈します。理論的に正確な平面は場所であって、理論的輪郭は形といえるでしょう。
位置度公差方式
ここまで「位置度公差」について説明しました。
既に例としてこの位置度公差について説明していますが、位置度公差方式とは、寸法のズレではなく、「理論的に正確な位置からのズレ」を直接管理する方法です。
例えば、規則的に配置された穴の場合、サイズ公差方式では公差の累積を考えなければなりません。
一方、位置度公差方式では、この公差の累積問題はなくなります。
その理由は、サイズ公差方式は「前の穴」を基準に次の穴を決めるため、ズレが足し算で累積します。
図3では、累積公差は水平方向に最大±1mmとなります。

図3 サイズ公差例(ZW3D CADにて作成)
位置度公差方式は「理論的に正確な位置」を基準に各穴を直接評価するため、ズレが累積しないということです。

図4では、四角の穴の中心線は水平方向に理想的な寸法として20mmピッチとなり、そのズレは各々0.2mmの幅の中に納まるように管理されています。

図4 位置度公差方式の例(ZW3D CADにて作成)
TED:(Theoretically Exact Dimension)とは
●公差を持たない「理想の寸法」
●幾何公差の基準となる“正解の位置・形”を決めるための寸法
●ズレは幾何公差で評価する
位置度公差方式として「JIS B 0025:1998 製図-幾何公差表示方式-位置度公差方式」によって、次のような適用範囲で、標準化されています。
【定義】
1. 適用範囲 この規格は,規則正しい形状をもつ形体及び不規則な形状をもつ形体の位置を決めるための位置度公差方式の原則について規定する。しかし,理解しやすくするために,この規格では穴,ボルト,植込みボルト又はピン,平行側面をもつ溝,キー及びキー溝などのような規則正しい形状をもつ形体の場合だけについて示す。
位置度公差方式は,点,直線又は平面に適用される。線が直線ではない場合,及び面が平面ではない場合には,輪郭度公差方式を用いる。
ISO 1660 : 1987 (Technical drawings−Dimensioning and tolerancing of profiles) 参照。
【口語訳】
この規格は、形がきれいに決まっているものでも、少し複雑な形をしたものでも、それらの正しい位置をどうやって決めるかという「位置度公差方式」の考え方を定めたものです。
ただし、話を分かりやすくするために、この規格では主に、
●穴
●ボルト
●植込みボルトやピン
●平行な側面をもつ溝
●キーやキー溝
といった、形が規則的でイメージしやすい形体を例にして説明しています。
位置度公差方式は、点・直線・平面といった形体に対して使うものです。
そのため、
●線が直線でない場合
●面が平面でない場合
つまり、曲がった線や曲面の形状については、位置度ではなく、輪郭度公差方式を使います。
次回は、この位置度公差方式を使用する上で、いかにその位置度公差を緩和できるかという方法として最大実体公差方式について説明をします。
土橋 美博(どばし・よしひろ)
3D CAD推進者。1964年生まれ。25年間、半導体組み立て関連装置企業でメカ設計・営業・3D CAD推進に従事。2014年にフラットパネルディスプレイ製造装置を主に開発設計製造を行う企業に入社。これまでの3次元CADの経験を活かした現場発信のデジタルプロセスエンジニアリング推進活動を行いながら、CAEも担当。長野県南信工科短期大学校で非常勤講師として機械設計製図の教育も行っている。
