2024年における石油化学業界の動向を振り返り、足元では何が起こっているか考察する。
【新着続報】石化再編の見通し(1):石油化学市場レポ
2024.12.11
この記事では…
(執筆:柳本 浩希/石油化学コンサルタント)
東アジアにおいて石油化学製品の需要が想定よりも下振れしている状況が続いています。日本も例外ではなく、2023年に引き続いて2024年においても石化製品需要そのものが低位となっています。今年1月に執筆しPlaBaseに掲載したコラム「2023年は苦境だった国内石化業界、 減った需要はどこへ?:石油化学市場レポ」において、次のように述べました。
「2024年は需要の最悪期を脱するとの見方を当然どの石化メーカーもしているわけですが、仮に需要そのものの構造変化が発生しているとすると、言い換えるなら、フードロス削減の流れやプラスチック不使用の風潮などがその根本的な要因とすると、慢性的に需要は低位となる可能性もあります。仮にそうだとすれば、もう一段の生産の合理化は免れないものと想定されます。この点は2024年の動向次第でより明確に浮かび上がってくると思います」
今回は、2024年が間もなく終わるタイミングで、「2024年の動向」をおさえていき、足元で何が起こっているのか把握したいと思います。なお、上の記事を読んでいない方や内容を忘れてしまった方は、こちらのコラムを読み進める前に、まずはそちらの記事からご覧いただくことをお勧めします。
石化業界における国内企業の状況
まず、大手総合化学メーカーのうち昨年上期の石化部門が赤字だった4社について、2024年上期決算を表1に示しました。

表1:2024年度上期石化部門のコア営業利益(億円)
2023年上期は赤字でしたが、2024年の上期については三菱ケミカルと旭化成が黒字に転じています。一方、住友化学と三井化学は赤字となっており、引き続き国内の石化企業の決算は良い状況とは言えません。まちまちの内容となっている決算ですが、各社それぞれセグメント別に包含している事業の構成が異なりますし、石化誘導品のなかでも高付加価値製品を拡販増益した可能性もありますので、これだけを見て汎用石化事業の景況感が幾分改善したとまでは判断が付きません。
次に国内の需要動向について「需要の最悪期」を脱しているのかどうか見ていきます。グラフ1で示したのは、国内の主要石化製品の需要を示したものです。

グラフ1:国内におけるオレフィン誘導品の推定需要
(1~8月、2017年対比%、生産+輸入-輸出で算出)
需要は「生産+輸入-輸出」で算出しています。ご覧いただくと一目瞭然ですが、2024年の国内推定需要量が2023年と比較してさらに減少したことが分かります。これは単に一時的な需要の減退というよりは、2023年に見られたフードロス削減やプラスチック不使用の風潮が、2024年も継続したことや、この統計データから漏れているより川下の最終製品において輸入材料が増加したことなどに要因があると言えます。つまり、グラフ1から言えることは石化製品の内需後退について、社会の構造的な変化が要因となっていることから、大幅に反転するような期待を持つことが困難であり、事業の再構築が待ったなしということになります。それにしてもこの5~7年の間で-20%から-25%と大幅に内需が減少してしまっているのは驚きの事実です。
このように、石化製品は内需の減少に伴い厳しい事業運営を迫られています。ナフサクラッカーの稼働率は昨年から引き続き80%前後と、通常95%前後で稼働するところから大きく低位にあります。装置産業は装置そのものの固定費が高額であることから、採算を確保するためには、稼働率を高めに維持する必要があります。ほぼフル操業と言える90%を基本的な稼働前提としていることが一般的で、そこからするとかなり低位となっていることが分かります。
加えて、ナフサクラッカーの稼働を維持するために、エチレンやプロピレンは引き続き赤字で輸出されているバランスとなっています。グラフ2に示した通り、2024年の1~9月は2023年に比べて輸出量が減少はしましたが、それぞれ40万トン輸出されていることが分かります。エチレン、プロピレン共に相場が低位となっていますので、ナフサクラッカーの稼働率を維持させるために、無理やり輸出しているかたちです。

グラフ2:日本のオレフィン輸出量
このように、国内の石化産業は内需の減少を現実視した上で、生産体制の最適化が求められている状況です。このような背景のなかで、現在国内でナフサクラッカーを運営する事業者は、競合他社との連携も含めて今後の供給体制の再構築と、生き残りに向けた施策を検討しています。
今回は国内石化事業の概況を見ましたが、次回は国内石化会社の今後の具体的な動きをプレスリリースから予測していきたいと思います。(次回へ続く)
1985年生まれ。大学卒業後、総合化学メーカーに就職し、石化コンビナートの現場、ナフサの調達、合成樹脂の営業を経験。その後、ナフサ取引の仲介や情報誌の編集責任を務め、2026年5月に炭化水素リサーチ株式会社を創業(https://hc-r.co.jp/)。ナフサと石油化学業界必携のNaphtha Portalを立ち上げる。
