PlaBase

アニール処理の方法:プラスチックの強度 (37)

2024.12.18

Image

この記事は...

プラスチックのアニール処理の方法について説明する。

(執筆:本間精一/本間技術士事務所)

>>前回の記事

アニール処理には次の方法がある。

[熱風加熱炉による方法]

最も多く利用されている方法であるが、次のことを注意しなければならない。


①アニール時間が長過ぎると熱酸化して変色しやすい。変色の程度は樹脂の熱酸化特性によって異なる。
⁠②アニール炉への成形品の入れ方や個数によって、炉内の温度や温度分布に差が生じやすい。
⁠③熱風エア中の塵埃(編集部注:じんあい。ちりやほこりのこと)が付着しやすい。

[油またはソルトバスによる方法]

高温の油(鉱物油)やソルトバス(塩化ナトリウム、塩化バリウムなど融点の異なる塩類を混合した熱処理槽)に成形品を浸漬してアニール処理する方法である。熱媒中では空気と直接接触しないため熱酸化変色が起こりにくいこと、熱媒と直接接触するため加熱効率が良いなどの利点がある。アニール処理に長い時間を要する厚肉製品に適している。図はポリアセタール(POM)の押出成形大口径丸棒の直径とアニール時間の関係である(参考文献1)。

Image

図 POM大口径丸棒のアニール処理時間

アニール温度はPOMの結晶化温度150℃で行っている。丸棒径が太くなるとアニールに長い時間を要するが、空気浴(熱風加熱炉)に比較して油浴の方がアニール時間は短いことが分かる。ただし、熱媒中でアニール処理する方法は処理後に成形品の洗浄が必要であること、一度に多くの成形品をアニール処理することが困難であることなどの課題もある。

[高温水による方法]

ポリアミド6(PA6)やPA66は高温水中でアニール処理する方法が採られている。PAは吸水しやすいので、高温水に浸漬すると成形品内部に水分が浸透することで分子間力(水素結合力)が低下して分子が動き易くなるので、結晶化や応力緩和を促進できる。また、吸水させることで衝撃強度も大幅に向上する。

一般的には成形直後に80~90℃の高温水に短時間浸漬する方法が取られている。高温・高湿雰囲気中でアニール処理する方法もある。この方法はアニール処理後に水切りの必要がなく、水汚れも少ない利点がある。

[遠赤外線アニール装置による方法]

有機物は遠赤外線を吸収すると分子振動によって自己発熱する。この特性を利用してアニール処理する方法である。一般的に、遠赤外線による自己発熱と熱風加熱を併用している。

本法は成形品の自己発熱を利用してアニール温度に達するまでの昇温時間を短くできるのでアニール時間を短縮できる。

表は㈱ノリタケエンジニアリングの遠赤外線アニール装置によるアニール処理例である(参考文献2。通常の熱風加熱炉による方法に比較してアニール時間を大幅に短縮できることが分かる。

Image

表 (株)ノリタケエンジニアリングの遠赤外線アニール事例

アニール処理は残留応力の低減効果は大きいが、処理コストがかかる。できれば製品設計や成形条件によって低減する方が望ましい。(次回につづく)


Image

>>>>連載「プラスチックの強度」一覧 

参考文献

1)高野菊雄編、ポリアセタール樹脂ハンドブック、p.419、日刊工業新聞社(1992)
⁠2)中村賢治、H18年7月27日 プラスチック工業技術研究会セミナー「樹脂成形品用アニール装置の特徴・機能」4-1~4-19

本間 精一(ほんま・せいいち)

三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数