プラスチック製品の割れトラブルが発生した際の、原因究明の調査方法について説明する。
割れトラブル原因究明の事前調査:プラスチックの強度 (38)
2025.01.15
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(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
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割れトラブルが発生したときには、原因究明に先立って発生現場や割れ状況を事前に調べる必要がある。割れたときの使用状態や割れ品を調べることで原因究明の手がかりが得られる。調査項目とポイントを表に示す。

表 割れトラブルの事前調査ポイント
① 割れが見つかった時点
クラックが応力集中源になって割れトラブルになることが多い。ストレスクラックは数日から数週間経過してから発生することが多い。一方、ケミカルクラックは数分から数時間で発生することが多い。
② 割れたときの使用条件
プラスチックの強度は力または荷重の加え方や使用する環境条件によって変化する。
③ 割れ品の破面
延性破壊であれば、異状な力または荷重によって破壊した可能性がある。脆性破壊であればクラックによる応力集中破壊、クリープ破壊、疲労破壊など、または成形時の分子量低下が大きかったため割れた可能性がある。ただし、もともと もろい材料を用いた成形品ではこのような判定はできないこともある。
編集部注:延性(えんせい)破壊:変形が増加後に破壊する現象のこと。
脆性(ぜいせい)破壊:急激に耐力を失って破壊する現象のこと。
④ 割れ個所の特異性
ゲート仕上げ跡、ウェルドライン、鋭角コーナ、突き出しピン跡の段差、表面傷、異物などが応力集中源になって割れトラブルになることが多い。
⑤ 割れ品の質量、寸法
シリンダ内で熱分解すると溶融粘度が低下するので、同一成形条件では良品に比較して成形品質量は重くなり、成形収縮率は小さくなる(寸法は大きくなる)。
⑥ 割れ品の外観
割れ品に変色、銀条、気泡、ばりなどが発生していると、成形時に分解(加水分解、熱分解)した可能性がある。また、熱劣化、紫外線劣化した場合には黄変または色相変化が起きる。
⑦ 割れ品の付着物有無
非晶性プラスチックでは応力発生箇所に溶剤類、油類、接着剤、塗料、洗剤、化学薬品などが付着するとケミカルクラックが発生することが多い。割れ発生個所にこれらの物質が付着しているとケミカルクラックが発生した可能性がある。
⑧ 2次加工の有無
接着部や溶着部の鋭角コーナで応力集中によって割れることがある。また、機械加工の加工面には微細な凹凸があるので応力集中によって割れることがある。
⑨ 割れ品の製造番号
割れ品の製造番号から、成形時の成形条件記録を調べることができる。さらに使用した成形材料の品種名、色相番号、ロット番号から材料の製造記録を調査できる。
(次回につづく)
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数
