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プラスチックのガス透過性:プラスチック材料の基礎知識(32)

2025.02.10

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⁠この記事は...

プラスチックのガス透過性について説明する。

(執筆:本間精一/本間技術士事務所)

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プラスチックを構成する分子(ポリマー)の間には空隙(※)があるのでガスが透過しやすい。食品包装フィルムなどではガスが透過しにくいことが求められるので、ガスバリヤ性という用語が用いられる。プラスチックのガス透過性には次の基本特性が関係する。

編集部注※:クウゲキ。物体と物体のすきまのこと

①結晶性プラスチックの結晶化している部分(結晶相)は空隙が狭いためガスを透過しにくい。

②延伸して分子や結晶が延伸方向に整列するとガスは透過しにくくなる。例えば、押出成形などで2軸延伸するとガスは透過しにくくなる。

また、ガスとプラスチックの極性(注1)の関係も影響する。ポリアミド(PA)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)などは極性分子鎖を有する極性プラスチックである。一方、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)などは無極性分子鎖からなる無極性プラスチックである。極性プラスチックは分子間で水素結合(注2)するためガスが透過しにくい。また、酸素のような無極性分子を透過しにくい。一方、無極性プラスチックは水分のような極性分子を透過しにくい。

ガス透過性を表す特性値にはガス透過度(GTR:Gas
Transmission Rate)とガス透過係数(P:Gas Permeability
Coefficient)がある。測定法はJISK7126に規定されている。ガス透過度(GTR)は試験片を透過する試験ガスの単位面積、単位時間、および試験片両面間の単位分圧当たりの透過量である。単位はISO ではmol/(m2・s・Pa)であり、旧CGS単位ではcm3/(m2・24h・atm)である。

図1はPA、PE、PPの厚みと水分透過度(透湿度)の関係である(引用文献1)。

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図1 各種フィルムの肉厚と透湿度概念図



極性プラスチックであるPAの透湿度が高いが、無極性プラスチックであるPEやPPは透湿度が低いことが分かる。また、PPについては無延伸フィルムと比較して、延伸フィルムは透湿度が低いことが分かる。

ガス透過係数は、試料を透過する試験ガスの単位厚さ(d)、単位面積、単位時間および試料両面間の単位分圧当たりの透過量で、SI単位系ではmol・m/(m2・s・Pa)、旧CGS単位ではcm3・cm/(m2・24h・atm)である。ガス透過係数(P)はGTRから次式で計算する。

   P=GTR×d

 d:試料厚み(cmまたはm)

Pは試料厚みの影響をキャンセルした値であり、ガス透過性の比較データとして用いられる。図2は酸素透過係数Pの湿度依存性である(引用文献2)。

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図2 各種フィルムの酸素透過係数の湿度依存性概念図

無極性プラスチックであるPPと比較して、極性プラスチックであるEVOHとPAMXD6(アジピン酸とメタキシリレンジアミンを重合したポリアミド)の酸素透過係数は小さいことが分かる。ただし、湿度が高くなると透過係数が大きくなる傾向がある。

注記

(注1)窒素(N)や酸素(O)は電子を引き寄せる性質があるので、これらの元素が存在すると電荷に偏りが生じる。電荷の偏りがあることを極性という。PAはアミド基(-CONH-)、EVOHは水酸基(-OH)があるので極性プラスチックである。これらの元素を含まないPE、PP、PSなどは無極性プラスチックである。

(注2)極性の大きい分子鎖が水素元素(H)を介して結合すること

引用文献

1)伊保内賢著、ポリフィルムの機能性膜、p.31、技報堂出版(1991)
⁠2)三菱ガス化学、Packpia,p.24(1988)

(次回につづく)

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本間 精一(ほんま・せいいち)

三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数