PlaBaseの運営元の金森産業の金森社長、高瀬常務、そして松本編集長が、プラスチック業界の2024年を振り返りました。(その2)
【PlaBase新年展望2025】どうだった? 2024年のプラスチック業界(その2)
2025.02.27
この記事では...
(執筆:一之瀬 隼/ 製造業ライター)
毎年恒例となった「PlaBase 新年展望」。2025年も、PlaBaseの運営元である化学品専門商社・金森産業の代表取締役社長の金森洋平氏、同社常務の高瀬正明氏、そして、同社事業開発室室長で、PlaBaseの編集長を務める松本祐介氏(松本編集長)が鼎談しました。
引き続き、いつもの3人で2024年の製造業やPlaBase周りの動きを振り返っていきます。(前回)
――国内の金型や射出成形は、あまり元気がないように感じます。海外の金型や射出成形に関わる方の景況感、元気の良さは国内と違いがありましたか?

松本編集長
松本編集長:海外の方が、より専門性を問われる業界であり福利厚生や社会的な地位も高いのかなと思います。昨年5月のNPEに、 UMass Lowell(マサチューセッツ大学ローウェル校)を取材しました。プラスチック関連の学位や修士、博士が取れる大学が出展していました。そこには、仕事をしている人がキャリアアップのために入学したり、一般の学生がプラスチック業界で活躍することを目標に入学したりするそうです。その話を聞いて、夢があるなと感じました。
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金森社長:トルコに出張して感じたのは物価の差です。初めてトルコに行った2010年頃は円が強い時代でしたが、今回の出張ではいろいろな物価を見るたびに日本の弱さを感じました。
松本編集長:展示会に関連して感じたことですが、トルコの展示会では化学品のポートフォリオを持った企業ではなく、ディストリビューターが幅を利かせていました。日本は品質や環境、サーキュラーエコノミーなどを配慮した製品を開発していますが、トルコの展示会ではエコや環境などをアピールしている展示は目立ちませんでした。
アメリカのNPEでは、展示会場のデモンストレーションで出た成形品の再利用を分かりやすく行っていました。一方で、トルコは価格や融通が利くことの優先順位が高いので、環境やサステナビリティっていうのは、感じにくかったと思います。

金森社長
金森社長:環境対応などで将来のことを考えるよりも、目先の利益を優先せざるを得ないのかなと思います。
松本編集長:ヨーロッパに進出して何年も展示会に参加している日系企業さんも、トルコの展示会は最先端の展示をする場ではないと言っていたので、今回の参加でその傾向が垣間見られたのではないかなと感じます。
金森社長:最先端ではないというよりかは、未来は展示していなかったという印象ですかね。
松本編集長:毎年1月にラスベガスで開催されるCESは、電化製品を中心に将来を見据えた新製品展示の場ですよね。そのプラスチック業界版がKショーだと思います。一方で、世界中で行われているすべての展示会が、同じコンセプトではないよねというのを肌で感じ取れました。日本の会社が海外戦略を考え、海外で戦っていく上でのやり方はいろいろあります。その中で、海外で誰と組むかということはとても大事だなと思います。日本のお家芸を活かして創意工夫していかないと、大げさにいえば日本の未来はないのかなと感じました。
金森社長:新興国は未来に関する情報が不足しているので、日本企業が情報発信をして興味を持ってくれた人たちと組むというのも、一つの攻め方かもしれませんね。国が、日本の発展のためにサポートしてもいいのではないかなと思います。
――次は、国内の話を振り返って頂きたいと思います。高瀬常務にお伺いしますが、2024年を振り返ってみて、製造業のお客様の状況などはいかがでしょうか?

高瀬常務
高瀬常務:改めて日本というのは資源の少ない国であることを痛感しました。原材料価格がどんどん上昇し、トランプ大統領の就任で関税・貿易関連の不透明感が高まっています。原材料の入手リスクを低減するために、大手エンプラメーカーなども地産地消のような形で原材料を作っています。国内で労働力不足解消のために待遇を良くしたとしても、技術レベルが上がった中国などから購入した方が安価な調達が可能です。
こういった状況が広がっており、日本は今後八方ふさがりという状況に陥ってしまうのではないかと心配しています。国内企業の状況としては、国内で活況だったスマホ関連の生産が中国国内で完結するようになり、従来のガソリン車やハイブリッド車から電気自動車に移り変わるにつれて車載関係も厳しくなってきています。
――お客様が一番お困りだったことは何でしたか?
高瀬常務:2011年頃からサプライチェーンの変化によって国内の原材料が不足し、徐々に海外材を採用する動きが進んでいました。それが、2020年以降さらに本格化し、国内材の生産が復活しても海外材との競争が厳しい状況です。海外材はファーストルックがよく、低コストなのが強みです。ロット管理の精度が不十分な場合もありますが、ユーザー側はコストを優先したい場合、積極的に海外材を活用している印象です。国内材は高品質な製品に活路を見出していきたいところですが、海外材メーカーもきちんと勉強しているので、スーパーエンプラなど品質が重視される材料で、今後どのような状況になってくるかが気になります。
金森社長:もう1つ困りごととして、今年は材料メーカーの生産終了、終売により材料や添加剤の変更をしなければならないということが相次いだ1年だったと思います。このトレンドは2025年も変わらないと思います。
高瀬常務:そのようなことは、各所で行われていますね。
金森社長:この問題を解決しても、金森産業としての売上や利益が増えるわけではなく、お客様にとっても同様です。こうした後ろ向きの変化に対応しないといけないというのは、多くのお客様がお困りだったと思います。
松本編集長:少し話は変わるのですけれども、当社の樹脂試作サービスPlaQuickについてです。2024年まで見て、PlaQuickがきっかけでエンドユーザーとの取引が右肩上がりになっています。今までは取引があまりなかった分野が開拓できたとか、取引はある業界だったけれども数が増えたとか、成果につながっていますよね。
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高瀬常務:最近だとヘルスケア関係は何社か出てきていますし、車載系のTier1やTier2も増えてきています。ロボット関連も出てきていますし、お客様の業界が多岐に広がっている感じがしますね。
金森社長:私が驚いたのは、製造業のお客様だけではなく従来はソフトウェア中心で事業を行っていた会社の新規事業で試作の相談が来たことです。これは大きな変化だなと感じます。
■自動車業界の現役設計者・一之瀬が振り返る、今回の鼎談(2024年振り返り)
今回は、2024年の振り返りについて取り上げました。特に印象に残ったのはアメリカやドイツとトルコの違い、特にトルコのニーズに関する部分です。私も最近は海外のお客様と仕事をする機会が増えており、そこで感じているのは「日系企業のこだわりは求められていない」「スピード感・柔軟性がないと戦っていけない」という点です。一人の担当者としては、自社のこだわりを残しつつ、顧客のニーズに沿った対応をするために、どうすればいいのか悩み続けた1年でした。プラスチック業界でも新規開拓をする際には、同様のことが課題になるのだなと、感じました。
――さて次回は、2025年の展望について語ります。
自動車部品メーカーの現役エンジニアとして、先行開発から量産展開まで幅広い業務を経験。2022年より新規事業開発に着手。企業としての活動に加えて、コロナ禍で誕生した子供に背中を見せられるように、個人として製造業にどう貢献できるかを模索しながら活動をしている。

