割れトラブルの原因究明のために行うプラスチックの分子量測定法について解説する。
割れトラブルの原因究明法(1)分子量測定:プラスチックの強度(39)
2025.03.26
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(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
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分子構造が同じプラスチックについては、分子量が低いほど分子の長さは短いことを表す。分子の長さが短いほど、単位体積中に占める破壊起点となる分子末端数が多くなり、分子間の絡み合い数は少なくなるので強度は低くなる。強度低下の傾向は分子量が低くなるにつれて徐々に低下し、ある分子量(限界分子量または臨界分子量)より低くなると急激に低下する性質がある。
成形過程の熱分解や使用過程における劣化によって、分子量は低下する。そのため、割れトラブル原因究明のため分子量を測定する。
プラスチックの分子量は小さいものから大きいものまで分布しているので、平均分子量で表す。平均分子量の測定法にはゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)法や粘度法がある。
着色剤や充填剤を含有している成形品は、測定に先立って溶剤に溶解した後、遠心分離法またはろ過法によりこれらの配合剤を分離した後に測定しなければならない。ここではGPCによる分子量測定法を説明する。
GPC 法は、ポリスチレンゲルなどを充填したカラムにポリマー溶液を流すと、分子サイズの大きい順に分離される性質を利用して分子量を測定する方法である。GPC 法では数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布などを測定できる。
分子量MiのものがNi個ある場合、数平均分子量および重量平均分子量(質量平均分子量ともいう)は次式で示される。

式(1)と式(2)について、分子量が低下すると数平均分子量は低くなるが、重量平均分子量は低くならない特性がある。例えば、分子量10,000の分子10個と分子量100,000の分子が10個混ざっていると仮定すると、数平均分子量は次の通りである。

この試算結果から分かるように、数平均分子量は低分子量分の影響を受けて低い値になるが、重量平均分子量は低分子量分の影響をあまり受けないので高い値になっている。強度は低分子量分の影響を強く受けるので、分子量測定結果を評価するときには数平均分子量に注目するほうが良いことになる。
また、MnとMwの比(Mw/Mn)は分子量分布の広がりを示す。(Mw/Mn)の値が大きいほど分子量分布は広いことを表す。図は、ポリカーボネート(PC)について予備乾燥の有無と分子量分布の関係をGPC法で測定した結果である(※引用文献1)。「予備乾燥なし」では低分子量分が増加していることが分かる。また、「予備乾燥あり」はMw/Mn=2.76であるが、「予備乾燥なし」は分子量低下が大きいためMw/Mn=3.60であり、分子量分布は広くなることが分かる。

図 PCの予備乾燥の有無と分子量分布の変化概念図
分子量測定結果をもとに割れトラブルの原因であるか判断するときには次の点に留意する。
①良品に比較して、数平均分子量が低いときには分解・劣化していると推定される。
②数平均分子量が限界分子量より低くなっていれば分子量低下が割れトラブルの直接原因と判断できる。
③良品と比較して分子量低下は認められるが限界分子量以上であるときは、間接的原因と考えて他の試験結果と合わせ総合的に判断する。
引用文献
1)F.C.Chang and H.C.Hsh,J.Appl.Polym.143,p.1025~1036(1991)
(次回につづく)
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数
