成形作業をする方々が、成形不良の状態を想像できるような基本的な成形不良-原因-対策について“感じる”ことができるように、動画を使いながら学んでいきます。今回は、成形不良発生と特性要因図についてです。
PlaBase 成形お悩み相談室(1):成形不良発生と特性要因図――動画で感じる成形不良対策、はじまる
2025.03.24
本連載では…
(執筆:水野 渡/合同会社水野商会)
1. はじめに――まずは成形不良を“感じる”こと
合同会社水野商会の水野と申します。私は、富山県産業技術研究開発センター(工業試験場)の職員として30年余りプラスチックの成形加工やリサイクルの相談や研究に係わってきました。その中で、企業の皆さんから多かった相談は、成形不良の原因究明とその対策に関するものです。その内容は多岐にわたりますが、本連載では射出成形現場で多く見られる成形不良について取り上げます。
また本連載では、成形作業に携わる方で技能検定の受検を目指す人が成形不良を確認して成形条件を変更することや、成形に直接かかわらない人たちが成形不良の状態を想像できるような基本的な成形不良-原因-対策について“感じる”ことができるように、動画を使いながら皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
また、私がセンターの職員のときに企業の皆さんから教えていただいたたくさんのことも紹介しながら、できるだけ“見て、聞いて、さわって”いるような“感じる”内容にしたいと思います。これからよく見られる成形不良をいくつか取り上げていきます。よろしくお願いいます。
2.射出成形の成形不良は原因と対策が絡み合う
射出成形は、材料(ペレット)を射出成形機内で「溶融(可塑化)」して金型内で「流動(射出)」させ金型内の形状に合わせて「冷却・固化」させることが基本の工程です。「溶融」は成形機のシリンダー内でペレットをヒーターで加熱して流れるくらいに材料を柔らかくしてスクリューの回転で均一に練り混ぜます。「溶融」で柔らかい餅のようになった材料は射出機構を使って高い圧力と速度で金型内に一定量を流し込み「流動」させて金型内の流路(ランナー、ゲート)や製品形状(キャビティー)に樹脂を充填します。
充填された材料は、金型の温度まで「冷却」されて「固化」します。「固化」したものを取り出して、ランナーなど成形時に必要な付属物を処理する(切り離す)と製品になります。
射出成形に関する条件は、ここで上げただけでも、「溶融」では、ペレットの状態、温度(ヒーター温度)、練りの強さ(スクリュー回転数)、溶融した時間などがあります。また、「流動」では、材料温度、圧力(射出力)、速度(射出速度)、ランナーやゲートの形状、キャビティー形状、材料の流動変化、金型温度などがあります。さらに、「冷却・固化」では、金型温度、材料温度、材料圧力、材料の冷却収縮などが考えられます。
このほかにも材料の条件、成形の条件、金型の条件には種々の条件があり、温度や圧力など多くの条件は、「溶融」、「流動」、「冷却・固化」の中で時間や工程と共に大きく変化することがこの成形の特徴です。
このような、成形条件の関係は「特性要因図」として、成形条件などの特性と成形不良の原因(要因)の関係が体系化されています。しかしこの要因図は、あまりにも項目が多く(しかもそのほとんどが技術用語)、矢印の意味(どのような影響があるのか)もよくわかりません。多分、技能士の資格を持つような射出成形をやりこんだ人でないと理解できないのではないでしょうか。ちなみに水野は、この図の意味が最近少し分かるようになりました。30年かかった!)。
繰り返しになりますが、今回は、この特性要因図を理解するきっかけになるような射出成形を2“感じる”ことを目指したいと思います

図1:射出成形不良発生の特性要因図
3.動画から感じてもらうために
さて、いよいよ動画解説の始まりです。今回は、まず射出成形の実際の作業を動画で見ながら、上の特性要因図に書かれている成形条件や成形不良が起こる原因を意識してみましょう。次回以降、実際の成形不良について動画で見ていきます。
今回撮影した動画は、主に富山県産業技術研究開発センター ものづくり研究開発センターの「真空射出成形機」(写真1)や「射出成形用金型」などをお借り(設備利用)して撮影しています。

写真1 今回使用した真空射出成形機
なお動画は、水野個人で撮影したものです。動画撮影の技能が追いついていない上、プロ向けの特別な機材などを使っているわけでもありません。もしかして分かりにくいこともあるかもしれませんが、“感じる”きっかけになればありがたいです。
また動画をご覧になる前、あるいはご覧になりながら、以下の解説を参考にしてください。
3.1 材料
ポリスチレン(PS)、ABS樹脂(ABS)、ポリカーボネート(PC)の、射出成形の技能検定で使用される材料を使っています(写真2)。

写真2:材料の例(ポリカーボネート))
多くの場合、材料のペレットは25kg入りの袋で供給されます。材料の特性は、メーカーのカタログや技術情報などで確認すること、成形不良時の確認のために、袋に記載されている、メーカー名、グレード名、ロット番号、注意事項などは記録して下さい。また、ペレットの納入時期、保管状態、開封の時期なども重要になる場合があります。特性要因図の成形材料の項目を併せて確認してみてください。
3.2 射出成形機・金型
今回使用する真空射出成形機は、技能検定で使用されるインラインスクリュー式(図2)の射出成形機とは異なり、スクリューで可塑化した材料をプランジャーに送り計量して射出するスクリュープリプラ式射出成形機(図3)です。

図2:インラインスクリュー式射出成形機

図3:スクリュープリプラ式射出成形機
金型は、射出成形用金型と射出成形機に付属している成形条件確認用金型(箱形)を使用しています。
今回の動画より

写真3:真空射出成形機の設定画面です。

写真4:材料を投入する様子です。

写真5:成形しています。
水野 渡(みずの・わたる)
2024年 合同会社水野商会 代表社員、プラスチック成形(射出成形作業)1級技能士。
富山県下新川郡入善町下山(にざやま)出身。1987年に富山大学理学部を卒業後、富山県庁も入庁し、富山県工業技術センター(現:富山県産業技術研究開発センター)で、プラスチック関連技術の研究などに従事。
