割れトラブルが発生した製品のプラスチック名の材質判定方法について解説する。
割れトラブルの原因究明法(3)プラスチックの材質判定:プラスチックの強度(41)
2025.05.26
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(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
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割れトラブル品のプラスチック名が不明なときには、原因究明に先立って材質を判定する必要がある。次の判定法がある。
[赤外分光分析による判定法]
ポリマー分子鎖はそれぞれ固有の振動をしている。ポリマーに赤外線波長を連続的に変化させて照射すると、分子鎖の固有振動に相当する波数(波長-1の逆数)のところで赤外線が吸収され分子構造に応じた赤外線吸収スペクトルが得られる。未知試料について赤外分光分析する。すでに取得されている各プラスチックの赤外線吸収スペクトルと照合することでプラスチック名を判定できる。
図はポリカーボネート(PC)の赤外線吸収スペクトルである。

図 PCの赤外線吸収スペクトル
[ガラス転移温度、結晶融点測定による判別法]
低温側から昇温するとポリマーの熱運動に関連して分子構造に固有の転移温度(または転移点)が表れる。主な転移温度にはガラス転移点(Tg)と結晶融点(Tm)がある。Tgはポリマーの幹分子鎖(主鎖)の熱運動が急に活発化する温度である。Tmは結晶部(結晶相)が融解する温度である。
表にいくつかのプラスチックについてTgとTmを示す。非晶性プラスチックはTgのみで、結晶性プラスチックはTgとTmがある。

表 プラスチックのガラス転移温度、結晶融点(例)
未知材料のTgやTmを測定することで、プラスチック名を判定できる。TgやTmの測定法には示差熱分析法(注1)、示差走査熱量法(注2)、動的粘弾性法(注3)などがある。例えば、未知試料についてTgが50℃で、Tmは225℃であれば、表からポリアミド6と判定できる。
(次回につづく)
筆者注
- 注1:定速昇温過程で試料と基準物質との熱挙動の差によって生じる温度差を時間または温度に対して記録する方法。温度特性曲線の吸熱ピーク温度からガラス転移温度、結晶融解温度を求める。
- 注2:試料および基準物質を加熱または冷却する過程で等しい条件に置き、この2つの温度差をゼロに保つために必要なエネルギーを、時間または温度に対して記録する方法。温度特性曲線の吸熱ピーク温度からガラス転移温度、結晶融解温度を求める。
- 注3:粘弾性を示す物体に周期的刺激(応力、ひずみ)を加えて粘弾性応答を測定する方法。動的弾性率E’,損失弾性率E’’の温度特性を測定し、E’’/E’から損失係数(tanδ)温度特性曲線を求める。そのピーク温度からガラス転移温度、結晶融解温度を求める。
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数
