PlaBase

ウェルドラインを消したいです:PlaBase 成形お悩み相談室(2)

2025.05.21

Image

本連載では…

成形作業をする方々が、成形不良の状態を想像できるような基本的な成形不良-原因-対策について“感じる”ことができるように、動画を見ながら学んでいきます。今回は、ウェルドラインについてです。

執筆:水野 渡/合同会社水野商会



⁠本連載では、かつて工業試験場で研究にかかわっていた水野が、射出成形現場で多く見られる成形不良の悩み相談に答えていきます。

⁠>>前回「成形不良発生と特性要因図――動画で感じる成形不良対策、はじまる」

【お悩み】
⁠部分によって肉厚が変わる成形品でウェルドラインができています。このために外観不良でNGになりました。ウェルドラインを消す成形条件を教えて下さい。発注者から預かった金型なので金型の変更はできません。

【答え】
⁠金型、材料、成形機などによって、条件は変わるので、今回は完ぺきな答えを出すのは難しいです。まずはウェルドラインへの対処について基本的な考え方について知っていただきましょう。ウェルドラインは金型内の樹脂の流れが問題となりますから、成形条件を変えた時に樹脂の流れがどのように変わるのかを感じてみてください。それで対処のヒントが得られると思いますよ。



ウェルドラインとは

射出成形で金型内に樹脂を流したときに、肉厚の変化、成形品の穴あき、インサート、多点ゲートなどがあると樹脂の分流と合流が起きます。このときに樹脂の合流部分では冷えて粘度が上昇した樹脂同士がぶつかるため完全に融合せずにV溝状の線が残ります。これがウェルドラインです。ウェルドラインは外観不良の他に、V溝、融合不良、樹脂やガラス繊維などの強化材料の配向が原因となって強度が低下するとされています。

Image

ウェルドラインの状態について

 

Image

実際のウェルドライン:箱の底面に、うっすらとT字のラインが見えます。





⁠対策について

V溝や融合不良の程度を小さくするために、樹脂の流動性を上げることを考えます。また、成形条件が変わるとウェルドラインの発生場所が変わって目立たなくなる場合もあります。以下に成形条件から見た対策と注意点をまとめました。

Image


⁠成形条件の変更で良品にならない場合は、以下のような対策をします。

  1.  高流動性タイプの材料に変更する
  2. 金型のゲート位置を変更する
  3. 金型に樹脂だまりを設ける。
  4. ウエルドレス成形(ヒート&クール成形)


⁠【動画】射出速度の変化がウェルドラインにどう影響するのか


今回の動画では、箱形の成形品では比較的条件を振りやすい射出速度を変えることで、ウェルドラインがどのよう変わるかを紹介しています。なお金型の関係で成形品には擦り傷があります。



ウェルドラインの試料について






射出速度を変えると、ウェルドラインはどれくらい緩和されるのか


今回の動画について

動画の中では、成形時の射出速度を、「50mm/s」「80mm/s」「100mm/s」と3段階で速くしています。

50mm/sの射出速度であった時にはウェルドラインの長さ18mmであったところ、速くするごとに短くなることが確認できます。

Image

50mm/sの時のウェルドライン(下の縦ライン)は18mmでした。

今回の成形品は、短辺の肉厚が厚く、長辺の肉厚が薄くなっています。まず流路が広く流れやすい短辺に樹脂が充填されます。その後、流路が狭い長辺に樹脂が流入します。そのため長辺で樹脂が合流してウェルドラインが発生します。

射出速度を速くすると樹脂の流動抵抗が高くなるため、相対的に肉厚によるウェルドライン差が出にくくなり、短辺と同様に長辺にも樹脂が流入するので樹脂の合流ウェルドラインルドラインも短くなるのです。


⁠【豆知識】CAEの活用
⁠⁠

精密な成形や複雑な形状でウェルドラインの影響が事前に見込まれるときは、手間はかかりますが、CAE(樹脂流動解析ソフト)を使ってウェルドラインの発生位置を予測しましょう。

予測結果に基づいて形状、肉厚を変更することで、ウェルドラインを外観や強度に影響しない位置にずらすことができ、成形不良を減らすことにつながります。


【⁠参考】

Image

>>>>連載「PlaBase 成形お悩み相談室」一覧 

水野 渡(みずの・わたる)

2024年 合同会社水野商会 代表社員、プラスチック成形(射出成形作業)1級技能士。

⁠富山県下新川郡入善町下山(にざやま)出身。1987年に富山大学理学部を卒業後、富山県庁も入庁し、富山県工業技術センター(現:富山県産業技術研究開発センター)で、プラスチック関連技術の研究などに従事。