3Dデータによるポストプロセッサーの登場とCAEについてお話しします。
3Dデータを用いた技術計算システム「CAE」の成り立ち:CAEと有限要素法(6)
2025.05.28この記事では…
(執筆:武藤一夫/株式会社武藤技術研究所 代表取締役 博士(工学))
今日のCAEの基となるプログラムは、構造解析をマトリックス変位法などといわれています。本連載の第2回では、マトリックス変位法の基本的な原理について、つまり複雑な微分方程式を離散的に展開して、1次式のマトリックスに分解して解を得ることを確認しています。
このマトリックス変位法はコンピュータの出現によって演算処理され,実用化されました。数値解析の欠点の1つは、その出力が数値の羅列であることでした。それ故に数値の羅列の解析結果は何を意味しているのか、工学的な意味や判断が難しいというところにありました。
この欠点は、計算機のグラフィック機能を有するポストプロセッサー(グラフィックによる計算結果表示)の出現とその充実によって解消されつつあります。形状や変形だけでなく、3次元(3D)の応力分布なとも含めて、さまざまな角度から出力結果を考察することができるようになりました。

3Dデータを使用した結果出力への対応
1970年代から1980年代にかけて、商用の技術計算ソフトウェアが増え、NASAのような研究組織に限らず民間企業へ広がっていきます。Nastran は、1970年代にソフトウェア・ベンダー MacNeal-Schwendler Corporation(後のMSC Software。現在はHexagon傘下)によって商用化されています。
その後、SASI(Swanson Analysis Systems:今のANSYS)が設立され、1983年に同社は電磁場解析のソフトウェアを商用化していきました。
1970~80年代のNASTRANや、SASIなどには現在のような3Dデータによる結果表示する機能はありませんでした。当時の結果確認は、テキスト出力やプロッタによる線画出力が使われていました。
第3回で述べましたが、元来CAEという概念は、3D CADを開発していた米国のSDRC (Structural Dynamics Research Corporation)社のジャック・レモン(Jack Lemmon)氏が1980年に最初に提唱しました。設計開発の初期段階で数学的なモデルを作り、出来上がる製品の性能をコンピュータで予測して設計の最適化を行うことを目的としたものでした。
1980年代から、コンピュータにインストールしたソフトと、3Dデータを使用して製品の性能予測をする、すなわち今、普及しているCAEソフトの仕組みができてきました。3D CADによる設計を採用し出した大手の航空機メーカーや自動車メーカーを中心に、こうしたCAEソフトが広まることになりました。
CAEは、「人が行っていた、物理現象に関する技術計算をコンピュータが代替することで、設計開発の効率を高めながら品質も高めること」が基本的な考え方です。世の中のコンピュータやソフトウェアの進化に伴って、その範囲や次元が進化してきているのです。
参考・引用文献
- 「エンジニア必携トヨタに学ぶデジタル生産・事例・用語集」(産業図書:2021年12月)武藤一夫・著
- 「図解CAD/CAM入門」(大河出版:2012年8月)武藤一夫・著
- 「進化しつづけるトヨタのデジタル生産システムのデジタルのすべて」(技術評論社:2007年12月)武藤一夫・著
- 「実践メカトロニクス入門」(オーム社:2006年6月)武藤一夫・著
- 「はじめてのCAD/CAM」(工業調査会:2000年2月)武藤一夫・著
- 「実用CAD/CAM用語辞典」(日刊工業新聞社:1998年6月)武藤一夫・著
- ウィキペディア
武藤 一夫(むとう・かずお)
株式会社武藤技術研究所 代表取締役、博士(工学)。
1982年以来、職業能力開発総合大(旧訓練大学校)に約29年、静岡理工科大学に4年、豊橋技術科学大学に2年、八戸工業大学大学に8年、合計43年間大学教員。7年前に起業して、現在、株式会社武藤技術研究所代表取締役社長。AEセンシングとそのセンサー開発、特にデジタル式音響コム型AEセンサーの開発・販売、また企業の技術支援・技能伝承を含むコンサルティングをしています。これまで、トヨタ自動車をはじめ世界のフォード、クライスラ、GM、ダイムラーベンツ、BMW、アウディ、ヒュンダイなどを訪問をしました。多くの企業での招待講演、R&D支援センターをはじめとしたセミナー講演、マツダ系のテアワンなど多くの企業でコンサル・顧問などを従事。著書は機械加工、計測、メカトロ、金型設計・加工、CAD・CAE・CAM・CAT・Network、デジタルマニュファクチャリング、辞書など著書32冊。学術論文58件、計測工学や実装技術などの専門雑誌300件以上。厚生労働省の技能審議会委員・検定委員。自動車技術会編集委員等歴任。自動車技術会フェロー。


