プラスチックの材料選定の際に参考になる物性表の見方について解説します。
材料選定(1)―物性表の見方―:プラスチック材料の基礎知識(35)
2025.06.30
この記事は…
(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
材料カタログの物性表をもとに材料選定するときには、次の点に留意すべきである。
① 材料カタログの物性値は材料の選定に利用する。
材料カタログの物性表に記載されたデータは、JIS K7139に規定されたダンベル試験片を用いて測定する(図)。

図 多目的試験片形状(JIS K7139)
同試験片は引張試験に用いる以外に、平行部から切り出した試験片を用いて、曲げ、衝撃、その他の試験に用いるので多目的試験片とも呼ばれる。長手方向の一端にサイドゲートが設けられており、厚みは4.0mmの均一肉厚である。
試験片と製品(成形品)ではゲート方式および位置、コーナーR(アール)、肉厚などが異なるので、材料物性と製品物性に差が生じることは避けられない。また、成形時の高次構造によっても物性に差が生じる。表1に高次構造(注1)と物性への影響を示す。

表1:高次構造と物性への影響
製品設計や成形条件によって高次構造は変化するので、材料物性値と差が生じることに注意しなければならない。
② 同じ測定条件の物性値をもとに比較する。
同一物性項目でも、測定条件が異なることがあるので注意しなければならない。
表2にいくつかの例を示す。同一条件で測定された物性値を比較する必要がある。

表2:測定条件の留意点
③ 配合剤の処方によって物性は変化する。
一般的に材料物性表には標準材料の測定値が記載されている。配合剤(添加剤、着色剤など)の種類や添加率によっては標準材料の物性とは差が生じることがある。
④ 使用材料の短所を調べる
材料カタログには短所については記載されていないことが多い。製品の品質トラブルは使用材料の短所がもとで発生することが多いので、材料を選ぶときには短所についても事前に調べる必要がある。(次回につづく)
筆者注
(注1)成形時に形成される分子配向、繊維配向、結晶化などの微細構造を高次構造または2次構造という
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数
