成形作業をする方々が、成形不良の状態を想像できるような基本的な成形不良-原因-対策について“感じる”ことができるように、動画を見ながら学んでいきます。今回は、ショートショットについてです。
量産開始したらショートショットが出るようになって、どうしよう……:PlaBase 成形お悩み相談室(3)
2025.07.16
本連載では…
執筆:水野 渡/合同会社水野商会
本連載では、かつて工業試験場で研究にかかわっていた水野が、射出成形現場で多く見られる成形不良の悩み相談に答えていきます。
>>前回のお悩み「部分によって肉厚が変わる成形品でウェルドラインができています」
【お悩み】
事前に準備された条件表を使って新規射出成形品の量産に入ったところ、ショートショット(充填不足)が出るようになりました。射出圧力を上げて成形しようとしたら先輩から「もう一度計量値を確認するように」と言われました。
【答え】
ショートショットの対策として、射出圧力や保圧を高くして完全充填させることは、設定しやすく結果もすぐ分かることから一般的に行われます。しかし、「ギリギリの条件を狙った」成形の場合には、射出圧力や保圧をむやみに高くすると、ショートショットは改善しても、バリやオーバーパック(割れやゆがみの発生)など過充填に起因する不良を引き起こす可能性があります。この質問のように事前に準備された成形条件の場合、装置や成形環境の変化が不良の原因とも考えられるので、成形条件の再確認が必要となります。
今回は、ショートショットをしながら保圧切り替え位置を確認する作業で計量値と樹脂の充填の関係を感じてください。
ショートショットとは
射出成形では、樹脂を加熱溶融して金型内に流し込みます。このとき樹脂がキャビティに完全に充填せず製品の一部が欠けた状態で冷却・固化して取り出される成形不良がショートショットです。さらに、これに近い条件では、ショートショットがなくても成形品の寸法精度や強度の低下が見られるのでショートショットを起こさない条件出しは品質管理の重要な要素です。
ショートショットはさまざまな要因で発生します。樹脂量や射出圧力、速度が不足すると、樹脂がキャビティ内に十分に流れ込まずに途中で止まってしまいます。特に、細かい部分に樹脂を流し込むにはある程度の射出圧力や射出速度が必要です。圧力が弱いと入り組んだ形状の部分や流動の末端部分に樹脂が到達せず、ショートショットが発生します。また、樹脂温度や金型温度が低いと、流動時の樹脂粘度が高くなり流れにくくなります。特に、充填経路が長い場合は、冷却により樹脂が途中で固まりショートショットが起きやすくなるため注意が必要です。保圧が不十分な場合、樹脂が冷却される際の収縮が補填されずに、製品の一部が欠けることがあります。
その他にも、金型の設計が流動性の低い樹脂に合わない場合も未充填が発生しやすくなります。
対策について
成形条件から見ると、樹脂量や射出圧力、樹脂温度を高めに設定することで、樹脂がスムーズに金型内に流れ込むようにします。また、射出速度や金型温度を高くすることで、樹脂の冷却による流動低下を減少させて、充填不足を防ぐことができます。保圧や保圧時間を高めに設定することで、収縮による欠陥を防ぐことができます。さらに、金型設計では、樹脂の流動性に合わせてゲートやランナーのサイズやエアベントを適切にして樹脂の充填がスムーズになるようにします。

表 成形条件から見たショートショット対策(樹脂の量と流れやすさの確保)
【動画】計量値を変えれば、ショートショットが緩和される
【動画1 】さまざまな計測量の成形品の外観を見比べる
【動画2】計測量を変えるとショートショットはどう変わるか
今回は、箱形の成形品で、計量値を変えた場合にショートショットどのようになるか見てみましょう。計量値と充填不足の関係を感じてください。
動画を見ると、計量値を大きくしていくごとに(下記)、充填不足が小さくなっていくことが分かります。
☆今回の計量値(保圧切り替え位置:5mmを含む):30mm、40mm、50mm、60mm、70mm、75mm、80mm、81mm、82mm、82.5mm、82.5mm+保圧
この金型では、箱形の短辺の肉厚が厚いので、流路が広く流れやすい短辺に樹脂が充填され、その後肉厚が薄い長辺に樹脂が流入します。
計量値を82.5mmとするとほぼ充填されますが、ヒケが出ているので外観が悪くなっています。さらに保圧をかけることで、ヒケのない成形品が得られます。
このような関係を計量値と成形品の重量の関係で表したものが以下の図です。

図:計量値と重量の関係
この図からは、計量値を大きくするとショートショットが小さくなり重量も増加しているのが分かります。
保圧切り替え位置(82.5mm)に近くなると充填が進み流動抵抗が大きくなるので重量の増加は小さくなります。そこで保圧を加えると材料の収縮分が押し込まれヒケがなくなり、その分の重量が増加します。
【豆知識】ショートショット対策のコツ
ショートショットの対策は、材料の流れの改善が必要なので製品設計の段階で、ランナーやゲートを大きくすることや、ゲートの数を増やすことを検討します。また、成形時に保圧をしっかりかけるには十分なクッション量(射出と保圧終了時にスクリュの先端に残っている材料。一般的にスクリュー位置で3~10mm)が必要です。
(次回へ続く)
水野 渡(みずの・わたる)
2024年 合同会社水野商会 代表社員、プラスチック成形(射出成形作業)1級技能士。
富山県下新川郡入善町下山(にざやま)出身。1987年に富山大学理学部を卒業後、富山県庁も入庁し、富山県工業技術センター(現:富山県産業技術研究開発センター)で、プラスチック関連技術の研究などに従事。
