JIS製図の幾何公差について一から解説。幾何公差のうち、姿勢公差に含まれる「直角度」について取り上げる。
どれくらい正確な直角なのか(3):機械製図道場(中級編8)
2025.07.09
今回の記事は…
(執筆:土橋美博/スワニーCIO、3D CAD推進者)
前回は、「直線形体のデータム平面に対する直角度」について解説しました。今回は筆者が最も使用している「平面形体のデータム平面に対する直角度」について解説します。
3.平面形体のデータム平面に対する直角度
【公差域の定義】(JIS原文、以下同様)
データム平面(PD)に垂直な幾何学的平行2平面でその平面形体(P)を挟んだとき、平行2平面の間隔が最小となる場合の、2平面の間隔(f)で表す。

図1 平面形体のデータム平面に対する直角度
上記のJIS原文を口語訳してみました。(筆者解釈)
【口語訳】
データム平面(基準となる面)に対してまっすぐな方向から見て、ある面(評価する面)を、できるだけ近づけた2枚の平らな板で挟んだとき、その2枚の板のすき間がいちばん狭くなるように調整します。このときの板と板の間のすき間の幅が、その面の“直角度”の値になります。
平面形体のデータム平面に対する直角度の具体例として図面を描いてみました(図2)。

図2 平面形体のデータム平面に対する直角度(ZW3Dで設計)
図面の解説
青い平らな面が、緑の基準となる面(データム平面)に対して、ちゃんと垂直になっているかを定めています。具体的には、垂直方向に0.1mmの幅の平行2平面の間にその青い面全体が収まっていればOKという設計意図を示しています。筆者は設計初心者だった頃、この0.1という公差値を角度だと勘違いしていました。平行2平面の距離を示していることに注意しましょう。
この「平面形体のデータム平面に対する直角度の公差」は、設計や製造の現場でよく使われます。図面上で指定しなくても、JIS(日本産業規格)で定められた基準に従って管理されることもあります。どの公差等級を使用するのかは、図面で指示しますが、会社ごとに独自のルールを設けて使っている場合もあります。
JISの中では、「JIS B 0419:1991 普通公差-第2部:個別に公差の指示がない形状に対する幾何公差」という規格で、こうした標準的な公差の値が決められています。

表1 真直度の普通公差(単独形体)JIS B0419-1991を参考に筆者作成
表に示されているように、直角度の公差等級には「H:精級」 「K:中級」 「L:粗級」という区分があります。筆者の経験では、装置や機械を作る業界では、“一般的な”構造部品には「中級(K)」を使うことがほとんどでした。そして、“より高い精度”が求められる場合は「精級(H)」を使うこともあります。注意しなければならないのは、等級が上がれば加工に手間がかかるのでコストも高くなるということです。
もちろん一般的な直角度よりも厳しい公差値を設定することもありますが、“適材適所”が必要です。
この直角度の普通公差についてJISは、「直角を形成する2辺のうち長い方の辺をデータムとする。2つの辺が等しい呼び長さの場合には、いずれの辺をデータムとしてもよい」と規定しています。
測定方法について
直角度を「正確に測る」ためには、いくつかの方法があります。
① 一番正確に測る方法:3次元測定機を使う
工場などでよく使われている「3次元測定機(3次元測定器、CMMとも言います)」を使えば、コンピューターで精密に直角度を測定できます。これが最も信頼性の高い方法です。
② 手軽に測る方法:スコヤと隙間ゲージを使う
もっと簡単に測りたい場合は、「スコヤ(直角定規)」と「隙間ゲージ」を使って手作業で確認できます。
- スコヤ:直角かどうかを目で見て確かめるための金属の定規です。
- 隙間ゲージ:スコヤと部品のすき間がどのくらいあるかを測る、薄い金属板のセットです。
これらはJISで規格が決められています。
- スコヤの規格 「JIS B 7526:1995」
- 隙間ゲージの規格 「JIS B 7524:2008」
次回も様々な幾何公差について説明をします。
土橋 美博(どばし・よしひろ)
3D CAD推進者。1964年生まれ。25年間、半導体組み立て関連装置企業でメカ設計・営業・3D CAD推進に従事。2014年にフラットパネルディスプレイ製造装置を主に開発設計製造を行う企業に入社。これまでの3次元CADの経験を活かした現場発信のデジタルプロセスエンジニアリング推進活動を行いながら、CAEも担当。長野県南信工科短期大学校で非常勤講師として機械設計製図の教育も行っている。

