プラスチック物性表の見方について説明する。
材料選定(3)物性値の見方:プラスチック材料の基礎知識(37)
2025.08.06
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(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
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「プラスチック材料の基礎知識」の最終回として、材料物性表の見方と注意点について解説する。
[強度]
静的強度(引張、曲げ、圧縮)、クリープ破壊強度、疲労強度は破壊する応力であるので、材料比較データとして活用する。強度設計データとして利用するときには安全率(注1)を考慮しなければならない。衝撃強度(衝撃値)は試験片固有の値であるので材料比較データとして利用できるが、強度設計データとしては利用できない。
[耐熱性]
使用条件に対応する耐熱物性を表1に示す。使用条件に対応した物性データを利用する。

表1 使用条件と耐熱物性
[表面硬さ]
プラスチック(熱可塑性)の表面硬さで実用上問題になるのは擦り傷の付きやすさである。押し込み硬さ(ロックウェル硬さ、ショア硬さ)では耐擦傷性を評価できない。実用条件に合わせてテーバ摩耗、落砂試験、スチールウール摩擦、鉛筆硬度などの方法で評価しなければならない。表2に傷付き原因と評価法の関係を示す。

表2 傷付き原因と試験法
[寸法安定性]
物性値には寸法安定性という項目はない。表に示す寸法変動要因に該当する物性に注目して材料選定する。

表3 寸法変動要因と関係する特性
[耐摩擦摩耗性]
静摩擦係数、動摩擦係数、限界PV値は使用条件に注目して材料選定する。
- 静摩擦係数:ねじ締め付け計算における座面やねじ山の静摩擦係数に利用
- 動摩擦係数:歯車、カムなどの摺動部品に使用するときのデータとして利用
- 限界PV値:動摩擦面の発熱について[荷重(P)×滑り速度(V)]の限界値として利用
[耐候性]
耐候性データについては次の点を留意する。
①厚みが薄くなるほど強度低下しやすい。
②照射面側の強度低下は大きいが非照射面はほとんど低下しない。
③温度や湿度の影響が大きい。
④屋外では太陽光の当たり方や、夏場と冬場で劣化の程度は異なる。
[燃焼性]
①電機・電子製品、建材、車両などによって燃焼試験規格は異なるので、使用条件に基づいた燃焼試験結果を基に材料選定する。
②厚みが薄いほど燃えやすい。材料の燃焼試験データは燃焼片の厚みに注意する。
[耐薬品性]
全ての薬品に万能なプラスチックはない。各材料の耐薬品試験データをもとに耐性のある材料を選定する。その場合、使用温度や負荷応力によって耐薬品性が異なることに留意する。
「プラスチック材料の基礎知識」は今回で最終回です。ありがとうございました。
執筆者注
1)強度設計の許容応力は安全率から求める。許容応力=破壊応力÷安全率
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数
