JIS製図の幾何公差について一から解説。幾何公差のうち、姿勢公差に含まれる「傾斜度」について取り上げる。
傾き具合のずれを管理する(1):機械製図道場(中級編9)
2025.08.18
今回の記事は…
(執筆:土橋美博/スワニーCIO、3D CAD推進者)
前回は、「平面形体のデータム平面に対する直角度」について解説しました。今回から姿勢公差の「傾斜度」についての解説に入ります。
姿勢公差「傾斜度」の基礎
傾斜度は、ある面や線が基準(データム)に対して、指定された角度で傾いているべきときに、その傾き具合のズレの範囲(ばらつき)を管理するための公差です。
姿勢公差に分類される幾何特性において、
「平行度」は0度(あるいは180度)
「直角度」は90度(あるいは270度)
を規定しますが、傾斜度はそれ以外の任意の角度を規定するものです。
傾斜度について、「JIS B 0621:1984 幾何偏差の定義及び表示」(以下、JIS)によると、以下のように定義されています。
【公差域の定義】(JIS原文、以下同様)
データム直線またはデータム平面に対して理論的に正確な角度をもつ幾何学的直線または幾何学平面からの理論的に正確な角度を持つべき直線形体または平面形体の狂いの大きさをいう。
【口語訳】(筆者解釈)
ある面や線が、基準となる面や線に対して、「設計通りの角度」で傾いているべきところ、実際にはどれだけズレてしまっているか―――そのズレの大きさを表すのが「傾斜度」です。
つまり、「ちゃんとこの角度で傾けてね」という指定に対して、
どれくらい傾き方が狂っているかを測るものです。
直角度の際も説明しましたが、傾斜度もまたその許容値を示す数値の単位は[mm]であり、[度]ではありません。傾斜度の表示方法は3種類あります。それぞれ順番に見ていきます。
1. 直線形体のデータム直線に対する傾斜度
(1)同一平面にある場合の傾斜度
【公差域の定義】
同一平面上にあるべき直線形体のデータム直線に対する傾斜度は、直線形体(L)のいずれか一端とデータム直線(LD)とを含む幾何学的平面(PA)に垂直で、データム直線(LD)に対して理論的に正確な角度(a)をなす幾何学的平行2平面で直線形体(L)を挟んだときの、2平面の間隔(f)で表す。

図1 直線形体のデータム直線に対する傾斜度(同一平面にある場合)
「同じ平面上にあるべき直線」の「直線(データム)」
に対しての傾斜度というのは、
この基準に対して角度を指示した直線の傾きがどれくらいのズレを許されるのかを決める方法です。
具体的には、その直線の一端とデータム直線を通る仮想の平面を考え、その平面に垂直で、しかも理論上ぴったりの角度になるような2枚の平行な面で、対象の直線を挟みます。その2枚の間の距離(すき間)が、傾斜度としてのズレの量を示します。
(2)同一平面にない場合の傾斜度
【公差域の定義】
同一平面上にない直線形体のデータム直線に対する傾斜度は、直線形体(L)の両端を結ぶ幾何学的直線(LA)に平行で、データム直線(LD)を含む幾何学的平面(PA)に垂直で、データム直線(LD)に理論的に正確な角度(a)をなす幾何学的平行2平面でその直線形体(L)を挟んだときの2平面の間隔(f)で表す。

許容値を想定したい直線形体が同じ平面上にない場合の傾斜度は、
その直線の両端をつないだ仮想のまっすぐな線をもとに、一定の角度で基準直線と傾いている2枚の平行な面をイメージします。これらの面で対象の直線を挟み込んだとき、その2枚の面の間隔が「傾きのズレの大きさ(傾斜度)」として表されます。
ここで「直線形体」・「直線データム形体」という用語がありますが、筆者は少々理解が難しいと感じます。
「直線形体での傾斜度」をもう一度確認しましょう。

図2 直線形体のデータム直線に対する傾斜度 対象モデルイメージ
- 線形体:部品の中の「まっすぐなエッジやライン」(板の側面のエッジ・直線的な切削面の稜線など)
- 基準直線(データム):傾きの比較対象になる基準としての直線形体
- 傾斜度の意味:その直線が、基準からどれだけ理想の角度から外れているか(角度そのものではなく、ズレの幅で評価)
次回も傾斜度について説明します。
土橋 美博(どばし・よしひろ)
3D CAD推進者。1964年生まれ。25年間、半導体組み立て関連装置企業でメカ設計・営業・3D CAD推進に従事。2014年にフラットパネルディスプレイ製造装置を主に開発設計製造を行う企業に入社。これまでの3次元CADの経験を活かした現場発信のデジタルプロセスエンジニアリング推進活動を行いながら、CAEも担当。長野県南信工科短期大学校で非常勤講師として機械設計製図の教育も行っている。

