割れ品の破断面の解析(破面解析)について解説する。
割れトラブルの原因究明法(6)――破面解析:プラスチックの強度(44)
2025.09.01
この記事では…
(執筆:本間精一/本間技術士事務所)
割れ品の破断面には破壊原因を示す特有の痕跡が残されている。破面解析(フラクトグラフィ)は破面を拡大観察して割れ原因を調べる方法である。拡大鏡、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡などが用いられる。走査型電子顕微鏡(SEM)はミクロフラクトグラフィと呼ばれ、焦点深度が深く高倍率に拡大して観察できるので破面解析に広く用いられている。
破面観察は次の手順で進める。
①意図的に破壊要因(応力の種類、応力集中源など)を与えた試験片破面のSEM写真を作製する。
②割れ品の破面をSEM撮影する。
③①の試験片破面写真と照合して割れ品の原因を特定する。
実際に破面観察することで、破壊起点、破壊の進行方向、負荷応力の種類(静的応力、衝撃、クリープ、疲労など)などの情報が得られる。これらの情報をもとに割れ原因を特定する。
破壊要因を変えたときの試験片破面例を次に示す。
図1はポリカーボネート(PC)のアイゾット衝撃破面である(注1)。延性破面では破壊の進行方向に筋状パターンが観察される。脆性破面ではカラボラ状に衝撃波が伝わり、その後は滑らかに進行した破断面が観察される。

図1 延性破面と脆性破面(注1)
(PCのアイゾット衝撃破壊)
図2はポリアセタール(POM)のクリープ破壊破面である(注2)。破面には引きちぎられたような痕跡が観察される。これは非晶相が破壊した痕跡と推定される。

図2 POMのクリープ破壊破面(注2)
図3はPOMの疲労破面である(注3)。破壊の進行方向に疲労破壊特有のストリエーション(編集部注:striation ストライエーションとも。応力の繰り返しに応じて破壊進行の垂直方向に発生する波模様)の痕跡が観察される。

図3 POM疲労破面のストリエーション(注3)
プラスチック製品の破面解析では次の点に注意する。
①割れを発生させた応力が同じでも、プラスチックの種類や品種によって破面が異なる。
②割れたときの環境温度やひずみ速度(変形速度)によって破面が変化する。
③倍率を拡大し過ぎるとかえって判別しにくくなることがあるので、適切な倍率に拡大して観察する。
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本連載は、今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。本間精一氏の新連載を準備中ですので、ご期待ください。
引用文献
1)三菱ガス化学、ユーピロン技術詳報PCR203
成形品の破断写真
2)三菱ガス化学、ユピタール技術詳報ITR001
ユピタール成形品の破面解析
3)尾関康宏、成形加工、16(5),298~302(1992)
本間 精一(ほんま・せいいち)
三菱ガス化学、三菱エンジニアリングプラスチックスにおいてPC,POM,変性PPEなどの研究開発に従事。退社後は技術士事務所を開設。プラスチック全般の技術コンサルティングや執筆活動を行っている。著書には「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社)、「プラスチック材料大全」(日刊工業新聞社)、「設計者のためのプラスチックの強度特性」(丸善出版)他多数
